“大虎事件”起こしたWBC世界王者の寺地拳四朗が再起へ“禊”のゴミ拾い…「新しい自分に生まれ変わる」
そのひとつがスピード感。これまではやみくもにテンポアップをすればいいと考えていたが、そのスピードに肉体がついていけず上体が浮くことに気づいた。 「のっしり、のっしり…遅いテンポでいい。すると体が沈み、しっかりとパンチを打てバックステップもしやすくなった。地面をつかむイメージですね。攻守の切り替えも早くなりフックも強くなった」 新型コロナの感染状況次第だが、再起舞台に予定されているのは、昨年12月19日に大阪で戦う予定だった同級1位の久田との指名試合だ。 「今の僕は、もう勝つしかない。リング上で帰ってきたぞと叫びたい」 拳四朗のコンディションさえ整えれば怖い相手ではないだろう。だが、1年以上のブランクがあり、拳四朗も29歳。不安要素がないわけではない。 さらなる難題もある。 「1年に3試合はやりたい」と望むが、新型コロナ禍で先行きは不透明。大目標に掲げている元WBA世界ライトフライ級王者の具志堅用高氏が持つ13度防衛の日本記録を破るには、久田戦を含めて、まだ7試合が必要とある。年間3試合できたとしても3年はかかる。 41年間破られていない記録の突破は無理ではないか?の声が聞こえてくる。 だが、拳四朗はそんな悲観論を明るく笑い飛ばす。 「1年のブランクは大きいですが、いけるんじゃないですか。だって負けへんかったらええだけですもん」 同じ階級のライバル、WBA世界ライトフライ級スーパー王者、京口紘人(27、ワタナベ)は、大手プロモーションのマッチルームと契約し、3月13日に米国で防衛戦を行う。2019年12月に拳四朗と統一戦を行う予定だったが体調不良で辞退したIBF世界同級王者のフェリックス・アルバラード(ニカラグア)は、WBO王者エルウィン・ソト(メキシコ)との統一戦を4月か5月に行うプランも進んでいるようだ。しかし、拳四朗に取り残されたという気持ちはない。 「ベルトは集めたい。でも京口選手の試合はそんな気にならない。アルバラードが2つ取ってくれたら彼とやりたいですね。一気に3本のベルトになるので。おいしいじゃないですか」 人は変われるーーと言ったのは、どこかの哲学者。 拳四朗は2月末まで社会奉仕活動を続ける予定だ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)