なぜ井岡一翔のドーピング禁止薬物”大麻”検出が約4か月後に問題となったのか…JBCが緊急事情聴取予定も広がる疑念と困惑
JBCのドーピング検査は、主に試合後にJBC職員が立ち合いのもと尿を採取、専門機関に検査を依頼する。その際、尿はA検体とB検体の2つに分けられる。今回の陽性反応は一度目のA検体の簡易検査によって出たため、その後、詳しくA検体の再検査を行い結果が出るまでに時間はかかった。井岡ー田中戦は、「年間最優秀試合」として表彰された名勝負で、しかも日本人初の4階級制覇王者、井岡というビッグネームのドーピング疑惑だっただけに慎重にことを進めたJBCの姿勢は理解できる。だが、井岡サイドへの通達、本人への聞き取り及び、異議申し立てがあった場合のB検体の再検査などという正式な手順を踏む前に、JBCが警察に相談したことで司法の捜査、事情聴取が先に行われた。しかもJBCが警察に相談したのはなぜか3月初めだった。約4か月も経過してから倫理委員会が開かれるという不手際といえる手順と検証作業に井岡サイドが不信感を抱くのも無理はない。 今後、倫理委員会が、ドーピング違反の“シロクロ”をハッキリさせるための再検査に必要なB検体がすでに警察に押収されて消滅しているため、再検査は不可能な状態となっている。 スポーツのドーピング検査と警察の検査では、その手順や検査項目なども違うため、当局の検査結果を再検査にあてはめることは難しい。倫理委員会は、警察によるB検体の検査結果の提示を求める意向だが、そもそも当局は立件もしていない事件の検査資料を提供することはない。事実上、井岡が身の潔白を主張しても、それを証明する機会も失われたことになる。 それについては、服部弁護士は「B検体がないという事実も知らされておりません。マスコミからの取材で言われているだけですので、事実確認ができない以上、この事実を前提とした回答はできかねます」と返答した。 今後、倫理委員会がどういう処分を下すかはわからないが、正式に“シロクロ”をつけることのできない状況で、A検体で禁止薬物が検出されたという“不確定”な事実だけで井岡の選手生命を脅かすような厳罰を下せば、井岡サイドが法的手段に訴える可能性もあるだろう。 すでに服部弁護士は、報道に関しても、「井岡は真実が報道されることについては異議を述べません。しかし、虚偽の事実が報じられた場合には、然るべき法的措置を執ります」との姿勢を明らかにしている。 また、もう一人、今回のドーピング疑惑騒動に困惑しているのが、タイトル戦でTKO負けを喫した田中恒成サイドだ。 元WBC世界スーパーバンタム級王者で田中の所属ジムの畑中清詞会長も、この日、筆者の取材に対し「JBCからも話がなんにもないんです。だから何が起きているかわからんのですよ。週刊新潮からの取材で聞かされ、それが初耳でしたから」と戸惑いを見せた。 「今のところ何もわかっていないからドーピングでアウトだったかどうかもわからない。JBCにルールにのっとって粛々と(検証、処分を)進めてもらえれば。今ウチからはコメントのしようがない」