芥川賞に21歳・宇佐見りんさん、デビュー2作目「胸いっぱい。頭が追いついていない」
第164回芥川賞(日本文学振興会主催)は、宇佐見(うさみ)りんさん(21)の「推し、燃ゆ」が受賞した。20日夜の記者会見で、宇佐見さんは「まだ胸いっぱいですね。まだ頭が追いついていないかな、という感じです。とてもうれしいです」と率直な喜びを口にした。 【全編動画】第164回「芥川賞、直木賞」宇佐見りんさん、西條奈加さん受賞会見
文章の最適解「当てはまったときはうれしい」
宇佐見さんは1999年、静岡県沼津市の生まれ。2019年の「かか」で第56回文藝賞を受賞し、デビュー。同作品で第33回三島由紀夫賞を受賞した。 受賞作には、上野真幸という「推し」のアイドルを持つ主人公・あかりが登場する。あかりは、「推し」を推すことを「背骨」と言っているが、宇佐美さん自身にとっての背骨は小説だ。「決して大げさなことではなく、これがあるからやっていけるんだという感覚っていうのは前からずっとあったので、それからもそれは変わらないんじゃないかなと思います」。 自身の「推し」は、一番尊敬しているという小説家の故中上健次氏だという。「彼の作品は本当にすごくて、3回人生を繰り返しても追いつかないんじゃないかというほどすごい文章を書かれる方」。現在、大学で国文学を学んでおり、卒論は中上健次氏について調べて書きたい、と考えている。 選考では、小説の中で吟味された言葉が使われていることが評価された。それを聞くと「すごくうれしいなと感じました。文章そのものに対して最適解、というか、これだな、という言葉を探すのがすごく苦しいんですが、当てはまったときはうれしい」と顔をほころばせた。 受賞は、家族や普段お世話になっている人々には伝えたが、「私がすごく尊敬している学校の先生にはなかなか。自分自身が目指すものを書けたら報告したい、と思っていた先生がいらっしゃって、まだお伝えできていないんですよね。伝えたい気持ち半分、まだまだ頑張るぞ、という気持ち半分、という感じです」と話す。 デビュー2作目であこがれの芥川賞に初ノミネートされ、受賞となった。「小説を書いている時間と、発表されて感想や評価をいただく時間はだいぶ離れているんですよね。だから書いている時はかなり孤独で。今は3作目を書いている途中なので、すごくうれしいな、と舞い上がる気持ちもあるんですけど、今は3作目に集中すること。悪い意味で振り回れずいきたい」 (取材・文:具志堅浩二)