ピース又吉氏の受賞発表の瞬間、報道陣からどよめき上がる
2枚目の名前が張り出されると、記者会見場がどよめいた。 第153回芥川賞が発表された16日夜。受賞者が会見を行う都内のホテルには、たくさんのメディアが詰めかけ、発表を待っていた。候補に上がった6作の中には、お笑いコンビ「ピース」として活動する又吉直樹氏の作品もノミネート。お笑い芸人として初の「芥川賞作家」の誕生に注目が集まっていた。 午後7時半前。長引いた選考が終わり、スタッフが掲示板に受賞者名を張り出した。受賞したのは羽田圭介氏の「スクラップ・アンド・ビルド」。落選かと思われた次の瞬間、2人目のスタッフがもう1枚の名前を張り出した。 「又吉直樹『火花』」と書かれた紙に、会見場の記者らから「おぉ」とどよめきが上がった。そして、一斉にフラッシュをたく音が鳴り響き、記者が慌ただしく会社に電話をかけ始めた。
会場側も対応に大わらわ。取材記者の殺到を見越し、急きょ会場の席を増やした。選考が行われた築地の料亭で取材していた記者らが、会見場へ続々と入ってくる。「立ち見の記者さんもいらしゃいますので……」とアナウンスが入った。会見が始まる前には、会場の後方や横まで立ち見の記者であふれ、普段の芥川賞取材にはあまりいない芸能・ワイドショー関係のメディアも見られた。
受賞した3氏が会見場に登場した。又吉氏はおびただしいフラッシュと、会場にぎっしり詰まった記者らに少し緊張した面持ち。 冒頭の撮影タイムでは、カメラマンからの「笑顔でお願いします」に笑いが起きた。次々とリクエストが飛び、なかなか撮影が終わらない。「そろそろ会見を……」と司会者が制す場面もあったが、最後に「ピースをお願いします」とのリクエストに応え、撮影は終わった。 本番の会見でも、記者からの質問が相次いだ。会見場は殺到したメディアの物理的な量もあり、とにかく暑い。 「なかなかこんだけ緊張することはない。プロの作家に偏見なく扱ってもらえるのは嬉しい」 最初は少し固さが感じられた又吉氏だったが、落ち着いた語り口の中に、時折ギャグも織り交ぜながら質疑に応じ始めた。