「今に見てろよ」巨人を変える新監督・阿部慎之助が語った盟主復活への思い #昭和98年
人生MAXの体重から20kg減の理由
人間は変われるもの――。 一度決めたら、ちゃんとやる。阿部はちょっとしたことでも実現している。たとえば減量。二軍監督時代の2020年、体重が100kg超えとなったことでダイエットを始めた。朝は必ず納豆を食べ、夜は炭水化物と飲酒を制限するなど食事を見直し、いつしか10kmの早朝ランニングは日課となった。 「コロナ禍によって外に出られなくなり、人生MAXくらいまで体重が増えたんです。健康のこともあるんですけど、これじゃ若い選手に対して説得力がないなということで落とそう、と」 最終的には20kgほど落とし、今もリバウンドはない。 「継続って大事。若い選手にも身につけてもらいたいし、続けていけば変わっていけるんだっていう見本を自分で見せたかった。今はもう習慣になっていて“俺、何のために走ってんだろう”ってときどき思うんですよ(笑)。でも一人の時間になるので、いろんなことを考えることができる。これって大事な時間だなって感じながら走っています」
自分を見つめるとともに外側にも視線を送っている。ファンを意識するというのは“ジャイアンツ人”として染みついてきたもの。見られることで、選手として成長できる。それが阿部の持論でもある。 「東京ドームには4万人のお客さんが入ります。見られているからこそ、変なプレーはできない。自分にプレッシャーをかけていけるから伸びていくことができると思うんです」 就任会見の席で、「変わる」とともに掲げたのが「愛されるチーム」であった。愛されてこそ、強くなる。現役時代に8度のリーグ優勝、3度の日本一を経験してきたなかで、強く実感してきたことだ。失いかけている現状を誰よりも危惧してきた。 「今年もそうです。負けているときに8回くらいになったら、スタンドからお客さんがバーッと帰っていく。現役でキャッチャーをやっていたときもその光景を目にしたら、寂しかった。ジャイアンツが強いときは最終回に逆転したことも結構ありました。だから最後までファンが見届けてくれた。何かやってくれるんじゃないかっていう期待感が選手にも伝わってきた。そうやって愛されるチームになっていくことが僕は大事だと思っていますから」 阿部は一つひとつの言葉を伝わるように、そして噛みしめるようにして言った。