見解失礼ながら無名の榛名高3年夏は、群馬県大会四回戦で敗れた。上武大で大きく成長し、東芝に入社すると1年目の都市対抗でショートのスタメンに抜擢され、全5試合に安打を放って優勝に貢献。一躍、即戦力のドラフト候補に名乗りを上げた。2011年は東日本大震災の影響で都市対抗が秋の開催となり、ドラフト当日は日本生命との二回戦。惜しくも1対2で敗れた帰りのバスで、マネージャーから「オリックスに1位指名された」と聞かされ、「こんな時に悪い冗談はやめてください」と返したという。名門・東芝でも、野手のドライチは高代延博氏(現・大経大監督)に次ぐ2人目だった。どちらかと言えば打撃が持ち味だが、プロの世界にはスラッガーが数多いる。だからこそ自分自身を生かそうと、春季キャンプからコーチとマンツーマンで守備練習に取り組む姿を何度も見た。才能に恵まれながらも、努力を続けた選手がグラウンドを去る。本当にお疲れ様でした。
コメンテータープロフィール
1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。
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