【経口補水液でも足りないことも?】夏はもっと意識して欲しい塩分摂取
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/takuyasurasshuranna/article/00521708/top_1689030366125.jpeg?exp=10800)
読んで頂いてありがとうございます!
たくや/ランナーです。都内で医師&ランニングコーチをしています。
今回は夏のランニングで大事な塩分摂取についてまとめます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はじめに
まだ梅雨明けしていないのにも関わらず、国内も地域によって熱中症指数(WBGT)が30を超えるようになりました。
熱中症予防運動指針として、WBGT31以上のときは運動は禁止としています。ですがそんな暑さの中でも鍛錬のために、暑熱馴化のために、走り続けるランナーは多くいます。
そんなランナーに助言するのが、身体冷却、水分補給ともう一つ、塩分の摂取です。どういうことか見てゆきましょう。
![2014年のロックンロールマドリードマラソン(気温24.4±3.度、湿度27.7±4.度)を完走した157人の、汗中ナトリウム・クロール濃度](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/takuyasurasshuranna/article/00521708/internal_1689075172862.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
汗中の塩分の個人差
暑い中のランニングでは大量の汗をかきますが、その中には大量の塩分が含まれます。
上のグラフは気温24.4度、湿度27.7度の中で行われたマラソンの際の汗中のナトリウム・クロール濃度をみたものです。
これをみると
・汗で喪失する塩分には、かなりの個人差がある
・半数以上はスポーツドリンクでは塩分が不足、2割程度は経口補水液でも不足してしまう
という事が分かります。
とくに高齢の男性で、体重の重い人や汗っかきの人は汗中の塩分が多くなると言われています。そのようなランナーはしっかり塩分を補給しましょう。
![①気温36度・湿度40%・運動強度VO2max30%、②気温40度・湿度40%・VO2max40%、③気温42度・湿度60%・VO2max50%での発汗率と汗中ナトリウム濃度と、暑熱馴化を10日間したのちの同条件での発汗率と汗中ナトリウム濃度](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/takuyasurasshuranna/article/00521708/internal_1689075230459.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
さらに気温が上がると塩分喪失は増加し、暑熱馴化すると減ります
先ほどは気温24.4度のマラソンでの調査を提示しましたが、日本の夏はもっと暑くなります。気温が高くなると、さらに汗中の塩分は増加すると言われています。
上のグラフでは気温36→40→42度の環境下で(湿度や運動量もさらに過酷になっていますが)、汗の量は3倍・汗中のナトリウム濃度は2倍程度上昇しました。発汗での塩分喪失量は6倍程度になることが予想されます。それを考慮すると、夏の暑さの中でのランニングは、経口補水液では全然塩分が足りなくなる可能性があります。
ですが、暑熱馴化をすることで、汗として喪失する塩分量を抑えることができます。上のグラフでは暑熱馴化することで、汗中のナトリウムは70%程度まで低下したことが示されています。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/takuyasurasshuranna/article/00521708/internal_1689075290397.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
まとめ
暑い中でのランニングでは、身体冷却・水分補給と並行して、塩分摂取も大事です。特に暑熱馴化が不十分のときは、意識して塩分を摂取しましょう。
経口補水液がベストですが、スポーツドリンクや水しかないこともあります。その際は塩分を追加摂取することを心掛けましょう。塩飴や塩分補給のタブレットは手軽に塩分が補給できますが、1個あたり塩分は0.1g程度と多くありません。塩昆布(10g中に塩分1.8g程度)や梅干し(1個中の塩分2-4g程度)がおすすめです。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/takuyasurasshuranna/article/00521708/internal_1689075311246.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
おわりに
ランナーは普段、早朝や夜間の涼しい時間帯に練習をしている方が多いと思います。ですが、大会の多くは昼間の暑い時間帯に行われます。暑い中の練習は十分にしていると思っても、暑熱馴化が不十分の場合もあります。そして想像以上に塩分を喪失します。
暑い日中のランニングの際は、塩分摂取も心掛けましょう。スポーツドリンクや塩飴・塩タブレットではなく、経口補水液や梅・塩昆布などがおすすめです。
以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました。
もっと詳しく書いているので、興味があれば自分のNOTEも参照下さい:
Note~【本には書いていないランニングの知識③】汗腺を鍛えるということ
今後も「医師・コーチの立場で」役立つことを、分かりやすく発信します。
いいねやフォローを押して頂けると、めっちゃ励みになります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<主な参考文献>
・マラソンランナーの汗中ナトリウム・クロール濃度~汗中の塩分濃度は個人差が大きい
Lara B et al.Interindividual variability in sweat electrolyte concentration in marathoners.J Int Soc Sports Nutr.2016(PubMed Central)
・暑熱下で汗の塩分濃度は上昇する、暑熱下馴化で塩分濃度は低下する
Buono MJ et al.Sodium ion concentration vs. sweat rate relationship in humans.J Appl Physiol.2007(PubMed)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たくや/ランナーについて
中学・高校・大学と陸上競技部で、そして卒業後もランニングを続けています。フルマラソンのベストは2時間50分。
今は都内の病院で勤務をしつつ、ランステでコーチをしています。
発信はおもにNOTEでしています(ビアランニングドクターのNOTE)