【若いランナーよりも、中年のランナーの方がペースが安定している?】そして最も安定して走れる年代は?
大規模なマラソン大会やオリンピックでは、若いマラソンランナーが活躍するのを目にします。ですが実際にマラソン大会に出場すると、若いランナーよりも年配のランナーの方が、しっかり最後まで走れているように思います。ですが本当にそんな傾向があるのでしょうか。実際にあるハーフマラソン、フルマラソンで検証した文献があるのでみてみましょう。
2017年のウィーンシティマラソンから
文献は2019年のセルビアのもので、2017年のウィーンシティマラソンで調べています。同大会の気温はスタート時に7.8度で、5時間後には11.8度まで上昇、湿度は高くなく風は強かったそうです。コースは比較的平坦で、フルマラソンは6081人、ハーフマラソンは11384人が参加しました。冬の日本国内の都市型マラソン大会とおおよそ似たような環境ではないでしょうか。
そして参加者を年代別に区切り、それぞれのペースを調べています。ペースは上記4区間に分け、ペースの変化を調べています。具体的には最も速かった区間のペースと最も遅かった区間のペースの差を、平均ペースからの割合で算出しています。
また、最終の区間4のペースとラストのペースの変化も算出しています。
レース中のペースの差(終盤の失速の程度)、一番安定しているのは40代
区間1から区間4の最速区間と最遅区間を比較したところ、ほとんどの年代で最速は区間1、最遅は区間4でした。要はレース中での失速の大きさを調べていることになります。そしてその差の合計を調べたものが下記グラフになります。
18-24歳、25-29歳のランナーは男女ともペースの差、要は失速の程度が大きいことが分かります。一方で30-50代、特に40代のランナーは比較的ペースが安定しています。ですが60歳を超えると、特にフルマラソンで失速が目立つようになるようです。
またフルマラソンの男性と女性を比較すると、女性の方がペースが安定していることが分かります。
ラストスパートのペースアップ
そしてラストスパートについては、男性の場合は若いランナーほど速いことが分かります。女性の場合も同様ですが、加齢によるラストスパートの速さの鈍化がやや緩い印象です。特にフルマラソンでは、驚くことに30代、40代になっても20代に負けないくらいのペースアップができているのです。
以上から、10-20代のランナーは前半速く、後半は失速するものの終盤のラストスパートは速い。30-50代のランナーは前半後半のペースの変動は少ないものの、ラストスパートは鈍化する。60代以上のランナーは、後半ペースが落ちやすく最後のラストスパートもなかなか効かないというという結果でした。
なぜ若いランナーと60歳以上のランナーは失速しやすい?なぜ女性
文献では、若いランナーが後半ペースが落ちてしまうのは、自身の能力を過大評価して速いペースで入ってしまい、結果疲労してペースが落ちてしまう。また経験の少なさからペースの制御が不安定で一定しないため、疲労してしまうと考察しています。また60歳以上になるとタイムが落ちるため、走行時間が長くなって疲労が増加し、ペースの変動幅が大きくなるとしています。
また女性の特にフルマラソンのペースが安定するのは、一般的に疲労に強いタイプI筋線維が多く、脂肪をより有効に活用できる体質があるからとしています。また競争心が男性ほど強くなく、社交し、レースを楽しみ、最終的にはゴールラインを越えることが動機となっている傾向があるからともしています。
そう言う自分も、20-30代の頃は終盤に失速を繰り返していました。大会で失速しては、たくましく走って抜いていく年配のランナーや女性ランナーをみて、とても悔しく感じたものです。でもそれは一般的を通り越して、世界的にみてもそんな感じなのかもしれません。若いランナー・走り始めたばかりのランナーは、終盤に大失速するような大会を経験しても、諦めずに走り続けて欲しいと切に願っています。