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進むコミケの国際化と観光化 64の国と地域からのべ30万人弱が参加するイベントへ

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
炎天下での開催となったコミケ104の1日目

 世界最大の同人誌即売会・コミックマーケット(コミケ)104が、8月11日(日)と12日(月祝)の2日間で東京都江東区の東京ビッグサイトで開催されています。コロナ禍以降3回目の通常開催となり、2日間でのべ30万人弱の来場者数を見込んでいます。

 世界64の国と地域からの参加者を集めており、これはコミケの入場が完全チケット制となり、来場者の属性が把握できて以降最大規模となっています。

定着した新たな開催方式

東123ホールの様子
東123ホールの様子

 コロナ禍を経て開催方式が大きく変化したコミケですが、コミケ104ではコミケ103からの大きな変更点はありません。一般参加者の目線では、来場者全員にリストバンド型参加証の購入が必須となっており、当日参加は午後から可能となっています。

 参加証の価格は大手アニメグッズショップなどで取り扱う事前販売価格が440円で、当日の購入価格は1000円となっています(いずれも税込価格)。

 コロナ禍以前では、オリンピックの開催などから東展示棟が使えない時期もあったコミケですが、従来の東展示棟と西展示棟に加え、南展示棟を加えた全16ホールでの開催も定着しています。

コスプレ広場として活用されている南1ホール
コスプレ広場として活用されている南1ホール

 東1ホールから7ホール、西展示棟1階の西1・2ホールが同人サークル。西展示棟2階の西3・4ホール、南展示棟2階の南3・4ホールが企業ブース。南展示棟1階の南1・2ホール、東8ホールと西展示棟屋上展示場がコスプレエリアと更衣室になっています。

 開催時間も従来の10時から30分遅い10時半開始、終了はコロナ禍前と変わらない16時となっており、30分短くなっています。また、コロナ禍前は徹夜待機列の存在が地域社会やモラルの面などからもしばしば問題となっていましたが、入場方法が完全にリストバンド制になったことで解消しています。入場リストバンド制により以前より1日あたりの参加者が抑えられたことで、会場内の混雑緩和にも貢献しています。

 筆者も約四半世紀にわたり欠かさずコミケに参加していますが、コロナ禍後のコミケは1サークルあたりのスペースも広がったり、通信環境が改善したり、館内の空調も改善したりするなど、有料化の反面、明らかに過ごしやすくなっているように感じます。

“コミケ離れ”と高齢化の課題

スタッフ不足もコロナ禍後のコミケが抱える課題の一つだ
スタッフ不足もコロナ禍後のコミケが抱える課題の一つだ

 コロナ禍を経てコミケがそれまで抱えていた問題が解決された面もある一方、コロナ禍中の3回の開催中断があったことで、サークル参加者、スタッフ参加者の双方で“コミケ離れ”が発生しており、完全には戻ってきていません。

 特にスタッフ参加者の減少はコミケの開催期間や規模にも影響が出ており、スタッフ募集の告知が会場内やSNS等の各所で見られます。コロナ禍以前のコミケでは、スタッフの募集はスタッフによる紹介制が基本で、公募するような性質のものではありませんでした。来年で半世紀を迎えるコミケの歴史の中でも、異常事態が起こっているともいえます。

 サークル参加者においてもその内実は減少しており、同一サークルが2日間の両日に出展することも可能になりました。また、1サークルが隣接する2スペースを申し込むこともできるようになっています。

 他にも、コミケのジャンルの世代交代があまり上手くいっていない側面や、若年層を中心にオフラインの同人誌即売会の魅力を上手く訴求できていない面があり、参加者の高齢化が進んでいる傾向があると考えます。コロナ禍で失われた人材をどう補うかが今のコミケの課題となっているといえます。

進む国際化と観光化

企業ブースの一角では、自治体や鉄道会社の出展もみられた
企業ブースの一角では、自治体や鉄道会社の出展もみられた

 こうした中で、海外から訪れるコミケ参加者の数は増えています。コロナが明け、日本を訪れる外国人観光客の数は現在日本史上最高を更新中で、この動きは時代の流れに乗っているといえます。

 今回の企業ブースでは、出版社やゲームメーカー、アニメ製作会社が多く出展する中で、地方自治体や鉄道会社などの公的団体の出展も目立ちました。地方自治体では、長野県企業局が「水望(みずもち)メグ」というPRキャラクターによる出展や、浜松市の旧三ヶ日町の観光協会「青春防衛隊~三ヶ日第三部隊~」。鉄道会社では、熊本県八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ「肥薩おれんじ鉄道」が出展しています。

 こうした傾向についてコミケを運営する準備会は、「コンテンツツーリズムの成功事例も増え、プロモーションの場としての注目度が高まっているのかもしれません」とみています。

 他にも企業ブースではエナジードリンクの無料配布を行う企業も出展しており、コミケの楽しみ方が多様化しているとも言えそうです。海外からの参加者だけでなく、国内からも数としてはまだ少ないですが、新開催方式となったコミケから新しく入ってきた層も着実にいます。今後のコミケがどのような発展をしていくのか、期待する部分も大きいといえます。

西3・4ホールの企業ブースの様子
西3・4ホールの企業ブースの様子

(写真は全て筆者撮影)

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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