ノート(214) 陸山会事件の反対尋問でどのような証言をしたか その意図とは?
~続・工場編(7)
受刑234/384日目(続)
予想された反対尋問は?
検察官役の指定弁護士による主尋問が終わり、休廷を挟んで弁護側の反対尋問が行われた。尋問を担当したのは、証言台から見て右側にある弁護人席の最前列で最も裁判官寄りの位置に座っていた男性の弁護士だった。
厚労省虚偽証明書事件で無罪となった元局長の弁護団の一人でもあり、刑事弁護に熱心に取り組む関東圏の弁護士の中でも「若手のホープ」と目されていた人物だ。
上品で落ち着いた高級そうな紺系統のスーツやネクタイをパリッと着こなし、知的なメガネ姿で髪型もカチッと決まっており、清潔感がある。尋問中は背筋をピンと伸ばし、声も朗々とよく通る。
しかも、あらかじめ用意していた「尋問メモ」にチラチラと目をやるような自信なさげな素振りは見せず、十分な事前準備によって何をどのような組み立てで尋ねるのか頭の中に叩き込み、証人や裁判官に目配りをしつつ、堂々と尋問を行っていた。
英米の法廷で活躍したキース・エヴァンス弁護士の著書『弁護のゴールデンルール』には「きちんとした服装をせよ」という一文がある。法廷はプレゼンテーションの場であり、自らの見せ方にも注意を払えということだ。
この弁護人は、まずは身なりや立ち居振る舞いによって裁判官を含めた周囲に与える印象をよくし、信頼感を得ようといった法廷における刑事弁護技術の初歩をきちんと実践できているように思われた。
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