暖かい弥生入り 近畿地方に春を告げる奈良の「お水取り」の10日前の3月2日に若狭で「お水送り」
暖かい弥生入り
令和5年(2023年)3月1日は、日本海を東進している低気圧に向かって南から暖気が流入し、各地で気温が上昇し、特に東日本太平洋側では概ね晴れて4月中旬並みとなりました(図1)。
今冬の特徴として、冬型の気圧配置は強さの割には長続きしないということがあげられます。
令和5年(2023年)1月13日は北日本を通過した低気圧に向かって暖気が北上して4月並みの気温となり、最高気温が25度以上という夏日を観測したかのが21地点(全国で気温を観測している914地点の約2パーセント)もありました。
しかし、その後、西高東低の冬型の気圧配置が強まり、今冬一番の強い寒気が南下したため、1月25日には真冬日を観測したのが502地点(約55パーセント)と、全国の半数以上の地点で、気温が一日中氷点下という、冷凍庫の中の状態でした。
また、冬日を観測したのが869地点(約95パーセント)と、南西諸島以外は全ての観測地点で冬日でした。
2月に入ると、強い寒気の南下は北日本どまりで、南岸低気圧が短い周期で通過するようになってきました。
南岸低気圧が通過するときは、暖気が入りますので、真冬日や冬日を観測した地点数が減少し、その後の寒気南下で増加するという変化をします。
真冬日や冬日は、バレンタインの頃(2月14日頃)に南下してきたバレンタイン寒波によって増えましたが、観測地点数は減少傾向にあります(図2)。
そして、2月28日と3月1日は、真冬日の観測地点数がともに0地点となっています。
また、3月1日から2日にかけて低気圧に伴う寒冷前線が通過した影響で、西日本から東~北日本の広い範囲で雨が降りましたが、雨が降っても気温は高めでした。
そして、2日以降も暖かい日が続き、寒気が南下して寒くなるときがあっても平年並みの見込みです。
寒い寒いと言っていた今年の冬も、そろそろ春の気配です。
「お水送り」と「お水取り」
関西に春を告げるとされる奈良・東大寺のお水取りは、1270年以上一度も休むことなく続く伝統行事です。
毎年3月12日深夜(13日の午前2時)に、若狭井(わかさい)という井戸から観音さまにお供えする「お香水(おこうずい)」を汲み上げる儀式(お水取り)が行われます。
そして、「お水取り」に続き、大松明を持った練行衆が内陣をかけまわる達陀(だったん)という妙法が行われます。
東大寺の若狭井は、その名のとおり、若狭の国(現在の福井県)と関係があります。
福井県西部の神宮寺では、東大寺の「お水取り」の10日前の3月2日に「お水送り」の行事が行われています(タイトル画像参照)。
神宮寺の閼伽井戸(あかいど)と呼ばれる井戸の水は、遠敷川(おにゅうがわ)の鵜の瀬(うのせ)までたいまつ行列でおごそかに運ばれるのです(写真1)。
そして、若狭小浜の「鵜の瀬」で流された神宮寺の井戸の水が10日後に東大寺二月堂の「若狭井」に届くとされています
大陸の文化が、天然の良港である若狭の国・小浜から奈良へと伝えられた足跡が、この伝統行事の中に残されているのではないかと思われます。
火祭り
平成17年(2005年)に福井県で勤務しており、このとき、「お水送り」の神事を見学し、冷たい雨のふるなか、たいまつ行列に参加しましたが、勇壮な火祭りでした(写真2)。
火祭りで有名なお寺として、若狭の神宮寺、京都の鞍馬寺、奈良の東大寺、和歌山の熊野那智大社があります。
この4つの火祭のお寺は、南北一直線にならんでいます(図3)。
日本人は古くから東西を意識していたことが多いと言われていますので、ひょっとしたら、南北を意識していた人々、遠くまででかけてきた渡来人が起源になっているのかもしれません。
東京の最高気温と最低気温
東京の最高気温と最低気温の推移をみると、1月26日に氷点下3.4度の最低気温が観測されたあと、寒い日と暖かい日が交互にあらわれていましたが、3月2日以降はともに平年より高い日が続く予報となっています(図4)。
東京の最高気温は、2月28日と3月1日と続けて19.4度と、4月中旬並みの気温で今年の最高値です。
しばらくは、暖かい日が続き、寒気が南下して気温が下がったとしても平年並みの気温の見込みです。
季節が一気に進みますので、あと2週間ちょっとで平年より早くソメイヨシノ開花のニュースが聞かれそうです。
タイトル画像、写真1、写真2の出典:筆者撮影。
図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図4の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。