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なぜ「ミラノ・グリル」なのにイタリアンではないのか? 横浜にできた新しいグルメスポット

東龍グルメジャーナリスト
ハイアット リージェンシー 横浜 (C) 東龍

横浜で多くのホテルがオープン

東京に多くのラグジュアリーホテルがオープンしていますが、横浜でも多くのラグジュアリーホテルがオープンしています。2019年10月31日にインターコンチネンタル横浜Pier8、2020年5月23日にハイアット リージェンシー 横浜、2020年9月23日にザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜、2020年10月31日にオークウッドスイーツ横浜が開業しました。

ハイアット リージェンシー 横浜 (C) 東龍
ハイアット リージェンシー 横浜 (C) 東龍

どれも魅力的なホテルですが、特に注目したいのが、ハイアット リージェンシー 横浜です。

ハイアットのホテルは、北海道から沖縄まで日本全国に、現在7ブランド、18ホテルを展開している大きなグループです。日本では1980年に初めてとなるホテルセンチュリー・ハイアット(現在はハイアットリー ジェンシーへリブランド)が新宿にオープンしてから、馴染みの深いラグジュアリーホテルグループ。

そのハイアット リージェンシーが横浜に新しく開業するということで、耳目を集めました。

ただ、ハイアット リージェンシー 横浜が注目されているのは、ただ単に初めて横浜に進出したからではありません。メインダイニングである「ミラノ・グリル(MILANO|GRILL)」が評判となっているのです。

「ミラノ・グリル」とは

「ミラノ・グリル」の料理長を務めるのは田坂嘉隆氏。国内外のラグジュアリーホテルやレストランで輝かしい経歴を積んできた総料理長の河合隆良氏からバトンタッチされ、2021年11月から現職に就きます。フランス料理に造詣が深く、フランス料理とイタリア料理、さらにはグリル料理が融合したメインダイニングを牽引。

田坂氏が腕をふるう料理の中で、特にオススメしたいのがシェフのスペシャリテが詰まった「ブレシアコース」(16,000円、税・サ込)。コースは季節で新しくなります。

スプリング ブレシアコース

・本日のアミューズ

・モンブラン

・ロワール産ホワイトアスパラガスとフォアグラのソテー トリュフソース

※現在はフランスの鳥インフルエンザの影響で仏産のフォアグラの流通量が少なくなっているので一時休止。詳細は公式サイトをご確認ください

・本日の創作パスタ

・本日の鮮魚 アクアパッツァ

・肉料理(1品選択)

シャラン産鴨胸肉のロースト マデラソース 産直野菜

ニュージーランド産仔羊のグリル グリーンアスパラガスとポテトの木の芽風味

国産牛の煮込み カルボナード風

黒毛和牛のグリル 赤ワインソース 産直野菜 +1,000円

・デザートまたはチーズ(1品選択)

欧州産チーズのワゴンサービスドライフルーツとナッツ

ティラミス

柑橘を使ったミルフィーユ仕立て エストラゴンの香り

イチゴのフレッシュコンポートとバニラアイス

ホワイトアスパラガスとホワイトチョコレートのムース グリーンアスパラガスのアイス

・コーヒー または ロンネフェルト紅茶セレクション

田坂氏がセレクトした春に旬を迎える野菜をふんだんに味わえるコースとなっています。この時期にしか味わえないフランス ロワール産のホワイトアスパラガス、田坂氏のシグネチャーである季節野菜の「モンブラン」の前菜も体験できます。

本日のアミューズ

本日のアミューズ (C) 東龍
本日のアミューズ (C) 東龍

本日のアミューズ (C) 東龍
本日のアミューズ (C) 東龍

横浜のニンジンをローストしてからエスプーマでムースに。その下には旨味のあるチキンコンソメです。ダブルウォールのガラス器が美しく、食欲がかきたてられます。

モンブラン

モンブラン (C) 東龍
モンブラン (C) 東龍

田坂氏のスペシャリテ。底はアサリのメレンゲで、中には細かくカットされたサーモンのマリネが包まれています。セルフィーユの根のピューレ、キャンディキャビアがあしらわれ、彩りも美しいです。

ロワール産ホワイトアスパラガスとフォアグラのソテー トリュフソース

ロワール産ホワイトアスパラガスとフォアグラのソテー トリュフソース (C) 東龍
ロワール産ホワイトアスパラガスとフォアグラのソテー トリュフソース (C) 東龍

口溶けのよいフォアグラのポワレに合わせるのは、フランス料理の王道である、マディラ酒とフォン・ド・ヴォー、黒トリュフのソース・ぺリグー。甘味と滋味のあるホワイトアスパラガスとプチヴェールが添えられます。

本日の創作パスタ

本日の創作パスタ (C) 東龍
本日の創作パスタ (C) 東龍

本日の創作パスタ (C) 東龍
本日の創作パスタ (C) 東龍

カナダ産オマール海老のムースをパスタに詰めました。食味の素晴らしいモリーユ茸を合わせ、イタリアのロディジャーノチーズをブレードで薄く削ってトッピングし、風味も豊かに。

本日の鮮魚 アクアパッツァ

本日の鮮魚 アクアパッツァ (C) 東龍
本日の鮮魚 アクアパッツァ (C) 東龍

イトヨリダイをポワレして表面はクリスピーにして、アクアパッツァに仕上げました。アサリの出汁を用いたソースは滋味がたっぷり。アサリ、ドライトマト、キノコをふんだんに添えています。

国産牛の煮込み カルボナード風

国産牛の煮込み カルボナード風 (C) 東龍
国産牛の煮込み カルボナード風 (C) 東龍

ベルギーやフランスの料理である、牛肉の黒ビール煮込みを洗練させました。牛肉のフォン・ド・ヴォー、タマネギを用いたソースの底には、マスタードをぬったシナモンやクローブのパンデピス。付け合わせの野菜はロマネスコやタケノコなど、約8種類の野菜をローストしたり、エシャロットでマリネしたり、バターでソテーしたりと、調理法も様々で味わいやテクスチャが豊か。

ホワイトアスパラガスとホワイトチョコレートのムース グリーンアスパラガスのアイス

ホワイトアスパラガスとホワイトチョコレートのムース グリーンアスパラガスのアイス (C) 東龍
ホワイトアスパラガスとホワイトチョコレートのムース グリーンアスパラガスのアイス (C) 東龍

アスパラガスずくめのアシェットデセール。ホワイトアスパラガスとチョコレートのムースの下にはほろ苦いカカオのビスキュイ。グリーンアスパラガスのアイスクリームは、アスパラガスの鮮やかな香りが広がります。

石川県小松市にある本田農園のフルティカトマトをコンフィして添えています。真ん中には皮ごとローストしたミカンをマヌカハニーと合わせて黄色が鮮やかなムースリーヌに。

フレンチとイタリアンの融合

独創的なコースでしたが、ここで改めて「ミラノ・グリル」の特長を紹介しましょう。最初に挙げたいのが、フレンチとイタリアンを味わえること。

店名にミラノやグリルがついているので、イタリア料理やグリル料理が想起されますが、田坂氏によってフレンチのニュアンスも多分に含まれているのが、コースの魅力です。

フランス料理をベースとしながらも、パスタ料理が提供され、グリルされた肉料理も味わえるので、多くの体験ができるレストランであるといえるでしょう。

バイザグラスで味わえるグランヴァン

ワインのラインナップ (C) 東龍
ワインのラインナップ (C) 東龍

グラスで超一級のワインが楽しめるのも魅力です。ハウスシャンパーニュは季節によって変わり、取材時は辛口の「ポメリー ブリュット ロワイヤル」でした。

赤ワインでは、通常であればボトルでも用意されているかどうかわからないフランス・ボルドー地方の5大シャートや、同じくボルドーやブルゴーニュのグラン・クリュがグラスで提供されています。

ワインの鮮度を保つことができるコラヴァンが用いられていたとしても、このクラスのワインをグラスワインのために開けることはほとんどありません。

グランヴァンをグラスで味わいたいのであれば、絶対にオススメです。

充実したテーブルウェア

料理やワインを彩るテーブルウェアも出色。

プレートはフランスのベルナルドが中心で、同じくフランスのジャン・ルイ・コケやイタリアのビレロイ・ボッホもあります。かなりのファインダイニングでなければ、このようなプレートは提供されません。

素晴らしいテーブルウェアの上で表現された独創的な料理のプレゼンテーションを楽しめるのも嬉しいです。

新しい美食スポットに

「ミラノ・グリル」内観 (C) 東龍
「ミラノ・グリル」内観 (C) 東龍

イタリア料理のコース構成を維持しながらも、田坂氏のルーツであるフランス料理をしっかりと取り入れており、より魅力的なものに昇華させています。

田坂氏は次のように述べます。

「イタリアンレストランを想起させる店名ですが、イタリア料理に固執しているわけではありません。フランス料理などの要素も取り入れて、お客様にもっと楽しんでいただけるようにしています」

田坂氏が料理長に就任してから、メニューの変化もありました。

「以前まではコース料理だけをご用意していました。しかし、私が料理長に就任してからは、プリフィックスコースやアラカルトも提供するようにして、選択肢を増やしています。記念日に訪れていただくことが多いようですが、気軽に利用していただけたら嬉しいですね」

横浜は洋食文化と非常に結びつきが深い街。「ミラノ・グリル」というに新しい美食スポットが誕生したことによって、ますます注目の街になることでしょう。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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