ChatGPT応用特許(広い)のもう1つの例
先日の記事では、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を使った権利範囲の広い特許について、GMOペパボの例を取って解説しました。この分野では、セキュリティ調査技術提供企業エーアイセキュリティラボも、ChatGPTを使った、生成AI関連の特許を取得した旨のプレスリリースを出しています。
同社のWebアプリケーション脆弱性診断ツールAeyeScanに関する特許です。ウェブサイトを自動巡回(クローリング)して、様々な入力を自動的に行ってくれることで、脆弱性やエラーの診断の省力化を実現するツールです。クラウドベースのツールとしてはトップシェアの製品とのことです。様々な入力値を人工的に生成しないといけないことから、もともと生成AIとの相性は良いテクノロジと言えるでしょう。
リリースでは3件の特許に言及しています。7320211号、7344614号、7348698号です。いずれも、発明の名称は「ウェブサイトの脆弱性を検査するためのシステム、方法、及びプログラム」です。ファミリー特許ではなく別系列の特許です。いずれも、2023年の5月~6月に出願され、7月~9月に特許登録されています(当然ながら早期審査請求されています)。7320211号については、6月12日に出願され、即、審査請求+早期審査請求により7月11日に一発特許査定が出ておりめちゃくちゃ早い権利化です。
これに加えて、上記プレスリリース公開後の10月17日に前述の7348698号の特許査定後の分割出願である7368921号が特許登録されています。この特許では「大規模言語モデル」という言葉が請求の範囲に出てきていますので、権利範囲を見ていくことにしましょう。GMOペパボの特許はレンタルサーバー上のホームページ制作サービスでChatGPTを使うだけで抵触してしまいそうな広範囲の特許でしたが、こちらの特許もChatGPTを使ってダミー入力のデータを取得してウェブ自動巡回するとそれだけで抵触しそうなほどめちゃくちゃ範囲が広いです。セキュリティ業界以外の企業にも関係してくると思われます。
なお、上述のその他の特許も、「学習済みモデル」という「大規模現モデル」の上位概念で権利化されていますので、大規模言語モデルを使用した場合も当然に権利範囲に含まれることになると思います。先日の記事でご紹介したGMOペパボのケースもそうですが、絶妙のタイミングで特許化できたと思います。
なお、前回の記事に関連してYouTube動画を作ってますのでご参考まで。
では、7368921号の請求項1を見ていきましょう。
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