大規模言語モデル(LLM)の強力な応用特許の権利化が始まっています
権利範囲の広い強力な特許を取るための最大のポイントはテクノロジの潮の変わり目でまだ世の中にアイデアが出尽くしていない時期に出願することに尽きます。たとえば、アップルはスマホのタッチUIというテクノロジ分野において強力な特許(たとえば、バウンスバック特許)を多数取得していますが、それはマウスからタッチUIというテクノロジの潮の変わり目において特許出願を積極的に行ったからに他なりません。逆に、今これからタッチUIという分野で強力な特許を取ろうと思っても、既に世の中にアイデアはあふれかえっていますので、それは不可能でないにせよ著しく困難です。
今、潮の変わり目にあるテクノロジといえば、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)をはじめとする生成AIがあるでしょう。生成AIそのものに関する特許としてはGoogleがかなり強力な特許を有していますが(別の機会に解説しようと思います)、生成AIの応用という点ではまだまだアイデアが出尽くしているとはいえず、斬新な応用を考え付けば範囲の広い強力な特許を取得できる可能性が高い状況にあると言えます。
とは言え、生成AIは、ある意味、何にでも使えてしまうテクノロジなので、単に生成AIを応用してみましたというだけの発明ですと「当業者の通常の創作能力の発揮」に過ぎないとして進歩性が否定される可能性はあります。たとえば、LLMを医療相談に応用する、就職相談に応用する、英会話の練習に応用するというだけの発明であれば、新規性はあっても進歩性をクリアするのは困難だと思います。
こういう状況でも課題をクリアして特許化に成功したケースが出始めています。本記事執筆段階で、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)において「大規模言語モデル」を「請求の範囲」に含む国内出願を検索すると8件ヒットしました(思ったより少ないです)。うち7件の特許はすべて今年に出願され早期審査請求により特許登録されたものです。もう1件は中国企業により2020年に出願された、GoogleのBERTを使った特許発明です。
これ以外も出願審査請求(および出願公開)待ちのもの、早期審査請求はされたがまだ審査中のもの、早期審査請求がはされたが拒絶査定になったもの(このケースでは、出願内容は公開されず、出願があったことすら外部からはわかりません)が多数あるものと思われますが、公開されていない以上、状況は知りようがありません。また、請求の範囲に「大規模言語モデル」という言葉がでてきていなくても実質的にLLM関連の特許であるものもあるかもしれません。
ここでは、8件の特許からGMOペパボによる特許7378003号の権利内容を見てみることにします(他のものについても追って記事化するかもしれません)。予想通り、結構範囲は広いです。結論から言うと、レンタルサーバー上でホームページをノーコードで作成するようなサービス(Wixみたいなやつです)でChatGPTを使ってホームページ生成すると抵触してしまいそうな感じです。
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