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着信が11回連続の日も 花子和彦を名乗るしつこいロマンス詐欺師を「Fraud」「Scam」で撃退

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
筆者撮影・修正

SNSでロマンス詐欺師と友達になってしまうと、しつこく連絡をしてきます。相手は詐欺師とバレてしまっても、一度、カモとしてみた相手を簡単に手放そうとはしません。相手方からブロックすることはほぼありませんので、詐欺師とのやり取りをやめたい場合は、SNSの運営者側に通報して相手のアカウントを削除してもらうか、私たちの側からブロックするより他はありません。本当に面倒な事態になります。その実態をお伝えします。

突然の着信あり キャンベラ病院に入院中の未亡人から 5億円あげますロマンス詐欺師につきあってみると… (Yahoo!ニュース エキスパート 多田文明)

この記事にて、5億円の生前贈与を持ち掛けるロマンス詐欺の実態を暴きました。

花子和彦を名乗るロマンス詐欺師は、70歳の高齢女性になりすまして、私とFacebookで友達になります。そしてオーストラリアのキャンベラの病院に喉頭がんで入院しており、余命6週間未満と医師から告げられたとのメッセージを送ってきます。そして生きているうちに、5億円の遺産を日本に送りたいといい始めます。

しかしこれまでの取材を通じて、これは真っ赤な嘘で、お金を受け取るには税金や手数料などが必要といわれて、逆にお金をだまし取られることになります。

電話をかけてくるロマンス詐欺師

これまでのロマンス詐欺ではメッセージや動画を送ってくるだけで、電話での話をしたがらない傾向にありました。しかし今回のロマンス詐欺師は違っていて、メッセージだけでなく、電話をしつようにかけてきます。一回だけ、男の声で返答はありましたが、基本、着信に出ても無言状態のまま、時間だけが過ぎていきます。要はメッセージを読ませるためにかけた電話とみてよいと思います。
前回、花子和彦が入院中との写真が送られてきましたが、調べるとそれは嘘で、この写真は海外のニュースサイトの記事で使われているものであることがわかったところまでお伝えしました。

ロマンス詐欺師とその後のやりとりは?

私は「日本人の方ではないように思います」といった返信をして、その後のメッセージを無視しました。

それでも相変わらず、花子和彦からは、着信とメッセージが毎日のようにきます。ついには「なぜ私のメッセージを無視しているのですか?私は何か間違ったことをしましたか?それともあなたは私に怒っていますか?」といった内容までやってきました。

しかし無視します。

すると、しだいに着信の数が多くなり、5回連続でかかってくるようになりました。その翌日には11回の着信がありました。行動がエスカレートしてきましたので、そろそろ撃退モードに入ることにしました。

キーボードを打つ音が聞こえる

電話をかけてみました。いつものように通話にはなりますが、無言のままです。何度もしつこくかけるうちに、突然「パチパチパチ」と激しくパソコンのキーボードを打つ音が聞こえてきました。今、この瞬間にも、ロマンス詐欺師とメッセージのやり取りをしている人がいるということでしょう。しばらくすると、その音が消えて無言になります。こちらの出方をうかがっているようです。

これまでの取材を通じて、今回の「多額の遺産をあげます」といった詐欺は、中央アフリカを中心とした英語を公用語とする犯罪グループが行っていることがわかっていますので、英語の方が言葉が伝わるだろうと考えました。

今は便利な時代で、ネットの翻訳機能で相手にメッセージが送れます。もちろん、詐欺グループもそれを使って、私に連絡をしてきますので、それを逆手に取ることにしました。

「Fraud(フラウド)」を8回流す

ネットで日本語の「詐欺」を英語に翻訳すると「Fraud(フラウド)」と出てきました。通話状態にはなっていますので、無言対応をしている相手に、その単語の音声を繰り返し流しました。

「フラウド」「フラウド」「フラウド」を間を置きながら、8回繰り返し流しました。相手はずっと無言のままですので、詐欺グループの側も静かにこの言葉を聞いているようです。

さらに「あなたは詐欺ですか?」を翻訳すると「Are you a scam?(アーユーアスキャム?)」と出てきましたので、その音声を繰り返し、流し続けました。

「アーユーアスキャム?」「アーユーアスキャム?」「アーユーアスキャム?」を5回ほど流します。相変わらず無言のままです。

さらに「Which country is the fraud group?」(どちらの国の詐欺グループですか?)という英語の音声も2回送ってみました。すると男性らしき声が聞こえて、再びキーボードを打つ音になりましたので、また流してみました。すると、電話は切られました。

次はメッセージで畳みかける

今度はメッセージで「なぜ、私の電話を無視しているのですか。」と問いただすと、花子和彦は「もうできないから」と、涙のアイコンを送ってきます。「なぜ?」と返信して、電話を3回かけますが出ません。

筆者撮影・修正
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すると「喉が痛いって言ったでしょ、いつやっても痛いの」と返信があります。

そこで「嘘はやめましょう」と畳みかけました。それでも「私はあなたに 30% のお金を支払うつもりです」などというメッセージを送ってきます。

さらに「まだ、嘘をつきますか。Which country is the fraud group? Is it an African country?」とメッセージを送ります。

たいがい、別人になりすましてメッセージを送る「打ち子」は、組織の末端である比較的若い人たちが行っています。これは世界共通です。

そこで「I think you are still a young person, so I think it is better to stop scamming.」(あなたはまだ若い人だと思うので、詐欺はやめた方がよいと思います)との英語文と「まだ、嘘をつきますか。詐欺はやめた方がよいです。逮捕されますよ」とのメッセージを送りました。

ついに霊感商法の手口で脅してきた?

すると、脅すような文章が届きます。

「もし私が死ぬ前にこの願いを叶えられなければ、私の魂はあなたを決して許さないでしょう。 もしあなたが私を助けようとしないなら、私が死んだら私の血はあなたに降りかかり、罪のない子供たちの血はあなたに降りかかるでしょう(後半省略)」

目に見えない存在を使って脅してくるとは、まるで霊感商法の手口のようです。
この手法へ対応は、スルーするのがベストです。

ナイジェリアか、ガーナあたりから連絡をしてきている可能性が高いので、「From this point of view, it is from Central African countries such as Nigeria and Ghana」というメッセージを送りました。

さらに「日本人はそのような呪いのような言葉はいいません。嘘をついている人の言葉には、説得力はありません」と返して、電話をかけました。

筆者撮影・修正
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図星だったのか?電話を拒否される

しかし通話にさえ、ならなくなりました。どうやら、ナイジェリア、ガーナは図星だったようで、居場所がバレてまずいと思ったのかもしれません。通話を拒否してきました。その後は、一切電話はこなくなり、ようやく撃退することができました。

このように詐欺グループに狙われると、しつこいアプローチがやってきます。今はメッセージだけでなく、電話が何度もかかってくることもあります。
詐欺から身を守るためには、最初の段階でロマンス詐欺を見抜き、友達にならないことが、大事になります。今回のやりとりが、そのための一助になれば幸いです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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