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闇バイト募集の実行犯に「危害を加える」の脅し言葉だけではない 血だらけの写真で恐怖心をあおる可能性も

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

連日のように組織的な強盗事件が発生しています。この背景には、お金に困った人たちが闇バイトに応募して、指示役の捨て駒として、実行犯らが動かされていることがあります。

最初は「ホワイト案件」などといって、犯罪行為ではないようにして募集しますが、応募者に身分証を送らせた後は「家族に危害を加える!」などと脅して犯行をさせようとします。この辺りは知られているところですが、脅し方はそれだけではありません。言葉だけではなく、視覚で訴えて脅してくることもあることを知っておいてください。

「送迎、廃品回収…」のアカウントに連絡をとると

情報提供者の男性Aさんは「送迎、廃品回収、免許を持っている方の限定案件」という募集をするアカウントをみつけてつながりました。ここには、他に「資金調達、日払い、日雇い、困っている、人材派遣」という言葉も並んでいますが、犯罪行為を臭わせるものはありません。男性がDMで連絡すると、相手の男からは秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」で話をしようと持ち掛けられます。

その後「受け子、出し子、かけ子、タタキ、空き巣、荷受け、運び、海外出稼ぎ案件…リフォーム営業、電話営業……」というメッセージが届けられます。ここにきて、ようやく犯罪の仕事であることがわかりますが、もしかすると犯罪知識のない人はこの言葉だけではわからないかもしれません。

興味深いのはこの他にも「リフォーム営業、電話営業」の案件もあることです。これは犯罪者の手元にある闇名簿をブラッシュアップしたり、強盗などを行う上での下見役の募集であることも考えられます。

若い男性が縛られて殴られて、血を流している写真が送られてくる

その後「名前、住所、所持金、緊急連絡先、銀行口座」などを書いて送るように指示があります。男性Aは個人情報を伝えて「すぐに、電話で話したい」ともちかけて、電話をかけますが、相手は出てくれません。

そこで男性Aが「もういいです」と投げやりなメッセージや写真で応対すると、次のようなものが送られてきました。

それは、若い男性が血を流して横たわっている写真でした。

おそらく、詐欺などでだましとったお金を、上位者の指示に従わずに横取りなどした人物に暴力を加えて、それを撮ったものと思われます。血がいたるところに飛び散っていて、残虐なシーンの写真ですので、お見せすることはできませんが、これを見た人は、かなりの恐怖を感じるかと思います。

フェイク画像か、本当の写真なのかの判別はできないが、脅す効果はてきめん

ただし、相手から送られてきた写真の下には「ハロウィン」という文言がついています。作り物と思わせて、警察への通報をさせないようにするところにも、より信ぴょう性を感じさせます。
現時点で、これが作られたフェイクの画像なのか、本当に誰かが縛られて殴られた写真なのかの判別はつきません。しかし今、連続強盗事件が起きている状況です。そうしたなかで、犯罪行為をさせようとする者が、身分証などで身元をおさえたうえで、闇バイトで募集者にこうした画像を送れば、脅しの効果はてきめんといえます。

この写真をよく見ると、写っている男性は粘着テープで口をふさがれて、手を縛られています。連続強盗の実行犯は必ず粘着テープで住民を縛りますが、こうした画像を現場の実行犯に、縛り方や殴る際の実例としても見せていることもあるのではないかと思いました。

犯罪グループは、聴覚、視覚の両面から脅すこともある

いずれにしても、今回の募集内容の入口は「送迎、廃品回収」であり、高額の報酬も記載されておらず、闇バイトとは思わせないものです。しかし連絡を取り、その先にいくと、犯罪行為とわかる募集となっていきます。どんなに高額な報酬を提示されても、その時点で必ず思いとどまるようにしてください。

犯罪グループはこの世の法律など平気で破る人たちです。過去には詐欺グループの仲間割れによる殺人事件や、だまし取ったお金を持ち逃げした人物に対しての傷害事件も起きています。それゆえに、身元を押さえて危害を加えるといった脅しの言葉だけでなく、恐怖心を煽るような画像を見せて、聴覚、視覚の両面から脅すこともあるはずです。

いつまでもなくならない連続強盗事件の裏には実行犯がおり、指示役らは彼らを恐怖で心をからめとりながら、犯行を行わせています。SNS上からの闇バイトへの応募には、自らの身も危険にさらされるような恐ろしい罠が犯罪グループによって仕掛けられています。安易な応募や連絡は控えて、犯罪行為だと気づいた時点で必ず引き返すようにして下さい。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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