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ルイス・エンリケが示すスペインの道筋。ポゼッションに“毒された”チームからの解放。

森田泰史スポーツライター
スペイン代表のルイス・エンリケ監督(写真:ロイター/アフロ)

針路は、正しく示されている。

UEFAネイションズリーグで、優勝を飾ったのはフランスだった。EURO 2020ではベスト16敗退という結果に終わったフランスだが、この大会では世界王者の強さを見せ付けた。

そのフランスを、最も苦しめたのがスペインだろう。「スペインはボール保持という意味合いにおいては独占状態だった」とはディディエ・デシャン監督の言葉である。キリアン・エムバペの決勝点の場面ではオフサイドの疑惑がかけられ、その議論はなお続いている。

ゴラッソを沈めたベンゼマ
ゴラッソを沈めたベンゼマ写真:ロイター/アフロ

思えば、スペインはポゼッションに“毒された”チームだ。

EURO2008、2010年の南アフリカ・ワールドカップ、EURO2012で主要大会3連覇を成し遂げたラ・ロハ(スペイン代表の愛称)の印象は鮮烈だった。

シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバ…。クアトロ・フゴーネスーー四人の創造主ーーそう称された選手たちがピッチで躍動していた。

チキ・タカという言葉が流行したのも、その頃である。ラ・ロハとジョゼップ・グアルディオラ監督率いるバルセロナの強さが相まって、スペイン=ポゼッションというイメージは広く世界に染み渡った。

セスクとシャビ
セスクとシャビ写真:Action Images/アフロ

無論、現在のスペインがポゼッションを放棄しているわけではない。UEFAネイションズリーグでは、ポゼッション率(67.3%)、パス成功率(90.2%)共に高かった。

だが、それ以上に目を引くのはゴールに迫るプレーとそのスタッツである。シュート数(1試合平均17本)は全チーム中2位、総クロス本数(181本)は1位の数字だった。

ルイス・エンリケ監督は、これまで多くの選手を試してきた。起用されてきた選手に関しては末尾に後述する。

ただ、今大会に関しては、ペドリ、ジョルディ・アルバ、マルコス・ジョレンテ、ジェラール・モレノ、アルバロ・モラタらを負傷やコンディション不良で欠いていた。EURO2020の主力メンバーが不在の状況であった。

■スペイン代表の戦術

ここからは、ラ・ロハを戦術的に考察する。

今大会で、サプライズ起用された選手が2人いる。バルセロナのガビとチェルシーのマルコス・アロンソである。

アロンソに関しては、本人が「スペインよりイタリアやイングランドで認知されている」と語るように、非常に過小評価されている選手だ。しかし、今回の2試合で自らの価値を証明した。

チェルシーでは、【3−4−2−1】が施行されている。そのため、アロンソのポジションはウィングバックだ。サイドバックではない。

(スペインの布陣)

それでも、イタリア戦で、4バックの左サイドバックに入ったアロンソは好パフォーマンスを見せた。

アロンソ、サラビア、オジャルサバルの三角形
アロンソ、サラビア、オジャルサバルの三角形

アロンソ、左ウィングのパブロ・サラビア、CFのミケル・オジャルサバルが左で三角形を形成する。左サイドのスペースを、3人が入れ替わるように使い、人とボールが動いて、イタリアの守備を崩していった。

コケのポジション
コケのポジション

また、コケが機をみて左サイドに落ちる。これはレアル・マドリーで、トニ・クロースがよく見せるプレーだ。

この4選手の関係性によって、左サイドを制圧。これまで使われていたペドリとジョルディ・アルバのホットラインとは別のパターンが、用意された。

(全2357文字)

■ガビの覚醒

そして、ガビである。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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