Yahoo!ニュース

MCTオイルって効果あるの?自分はおススメしない理由

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

読んで頂いてありがとうございます!
たくや/ランナーです。都内で医師&ランニングコーチをしています。

今回はマラソンにおけるMCTオイルの効果についてまとめます。
・短時間で理解・対策ができるようまとめました。
・時間のない方は、黒板だけでもOKです。
・もっと知りたい場合は、Noteも読んで下さい(無料)。
では早速いってみましょう!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

MCTオイルとは

MCTオイルというものを聞いたことがあるでしょうか。
中鎖脂肪酸というダイエット効果のある脂肪です。

吸収が速く、またエネルギー源として使われやすいので、
日常から摂取していると、脂肪を使える体になるというのです。

結果脂肪が落ちて痩せたり、脂肪を使えて持久力競技能力が向上するというのです。
またレース時に摂取すれば、糖質よりも大きなエネルギー源とすることができます。

ですが、本当に効果があるのでしょうか・・・・

ますは結論から

今回は書く内容がフラフラするので、結論から先に言ってしまいます。
今のところ文献的には、効果があるとは言えません。ただウルトラマラソンを中心に根強い愛好者がいる事は確かで、効果に個人差があるのかもしれません。

では実際に試すとすれば、どんな方がおススメでしょうか。
まずは日常生活において空腹が我慢できない方、そしてレースの時にハンガーノックになりやすい方。そういう方は試して効果があれば、大きな武器になるかもしれません。

そしてMCTオイル以外にも、ケトンエステルが同じ目的で研究されています。ですが、これもなかなか研究結果は厳しいようです

あらためてMCTオイルの文献をみてみます

さて話は戻り、文献検索の結果からみてみます。

MCTオイルの研究ですが、マウスではよい効果がみられました。
暑熱下での運動パフォーマンスの向上や、ミトコンドリアの増生、その酵素の活性化などが確認されました。

ですが実際にヒトでの効果がなかなか確認できません。
12人の男性ランナーを対象に60gという比較的多いMCTを2週間摂取した群と、56gのコーン油を摂取した群を比較しましたが、最大酸素摂取量や持久力は変らなかったようです。また呼吸商をみるとコーン油の群の方が脂肪をより燃焼しているようにすらみえました。
グリコーゲン枯渇or満タンの状態で運動中にMCTを摂取しても、ほとんど効果がなかったというものもあります。

結果MCTオイルってどうなの?

そんな状況で国際スポーツ栄養学会はMCTオイルについて「現時点では効果を裏付ける結果が乏しく今後の研究が必要」としています。

ですので「MCTオイルは良いはず!」と過信せず、脂肪をうまく使えない人が試してみて、効果が感じられなければやめてしまうのがよいと思います。

先述した通り空腹が我慢できない方、ハンガーノックになりやすい方は、試すとよいかもしれません。

MCTオイルの試し方

一度に大量に摂取すると下痢をする方がおられます。一日に何回かに分けて少量ずつ摂取するとよいでしょう。そしてレースで15ml程度摂取することを見越して、一度に15mlは摂取できるようにしておきましょう。

3週間ほど摂取してみて、またレースでも使用してみて、
「空腹を感じにくくなった」(脂肪をうまく使えるようになってきている?)
「体重が減ってきた」(体脂肪をうまく使えるようになってきた?)
「レースで最後までガス欠にならなくなった」(レースで脂肪を使えるようになった?)
と感じたら、MCTの効果がある方なのかもしれません。

さらなる進化バージョンのケトンエステルを含めて厳しいかも!?

ちなみに余談なのですが、MCTより効率的に吸収・代謝される脂肪としてケトンエステルというものあります。そちらの方が理論上は良い結果が出そうなものです。ですが、それすらよい結果が揃いません。

そのような文献を読む限りMCTオイルやケトンエステル、またそれに類似した根拠の栄養戦略(高脂肪・低糖質)は、効果が乏しいのではないかと思っています。


以上、最後まで読んで頂いてありがとうございました。

興味ある方は少し違う内容ですが、興味があれば自分のNOTEも参照下さい:
マラソンに必要な脂肪燃焼力


今後も「医師・コーチの立場で」役立つことを、分かりやすく発信します。
いいねやフォローを押して頂けると、めっちゃ励みになります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<主な参考文献>
・国際スポーツ栄養学会の「ウルトラマラソンンの栄養」におけるポジションスタンド
Tiller, N.B. et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: nutritional considerations for single-stage ultra-marathon training and racing. J Int Soc Sports Nutr 16, 50 .2019.(BMC
・マウスではMCTオイルで、暑熱下での運動能力向上・ミトコンドリア増加など良い効果あり
Wang Y et al. Medium Chain Triglycerides enhances exercise endurance through the increased mitochondrial biogenesis and metabolism. PLoS One. Feb 8;13(2).2018(Pub-Med
・60gのMCTと56gのコーン油の2週間摂取で、最大酸素摂取量・持久力は差がない。
Misell LM et al. Chronic medium-chain triacylglycerol consumption and endurance performance in trained runners. J Sports Med Phys Fitness.Jun;41(2): 2001(Pub-Med
・運動中にMCTを摂取してもほとんど効果がなかった。
A. E. Jeukendrup et al.Effect of endogenous carbohydrate availability on oral medium-chain triglyceride oxidation during prolonged exercise. J. Appl.80(3).1996(journals.physiology
・内因性のケトン(MCTなど)より、外因性のケトンはよいパフォーマンスが期待できる?
David J. Dearlove et al.The effects of endogenously- and exogenously-induced hyperketonemia on exercise performance and adaptation.Physiol Rep,10(10).2022(physoc.onlinelibrary

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

たくや/ランナーについて
中学・高校・大学と陸上競技部で、そして卒業後もランニングを続けています。フルマラソンのベストは2時間50分。
今は都内の病院で勤務をしつつ、ランステでコーチをしています(日比谷ライドのコーチ紹介)。
発信はおもにNOTEでしています(ビアランニングドクターのNOTE)。

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

たくや/ランナーの最近の記事