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朽ち果てたソ連版スペースシャトル「ブラン」完成目前で開発凍結となった訳とは

格納庫に眠るソ連版スペースシャトル「ブラン」 出典:Ralpf Mirebs

1970年代、アメリカのエンジニアらは、アポロのような使い捨て宇宙船の時代が終わったと判断し、再利用可能な新しいタイプの宇宙船、すなわち「スペースシャトル」計画が誕生しました。

当時のソ連は、スペースシャトルは人工衛星を捕らえたり破壊したりするのに使われるのではないか、と憶測しており、アメリカの技術力に匹敵する宇宙船を作らなければならないという思いに駆られていたとのことです。本記事では、アメリカに対抗してソ連が開発した宇宙船「ブラン」を開発していきます。

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■開発人数は15万人、肝入りのプロジェクトが始動

ソ連版スペースシャトル「ブラン」 出典:Wikipedia
ソ連版スペースシャトル「ブラン」 出典:Wikipedia

ブラン計画に関わったエンジニアは15万人を超えていましたが、計画は秘密裏に始まったため、多くの人たちは当初、自分たちが何を作っているのかよく知らせていませんでした。しかし、ある出来事をきっかけにその謎が明らかになることとなります。1982年に、オーストラリアの偵察機が小型の宇宙船をロシアの艦船が海から回収しているのを撮影したのです。

その写真が公開されたところ、その形状はアメリカのスペースシャトルに酷似していたのです。あまりにもブランがスペースシャトルと酷似していたことから、ソ連の科学者がアメリカから設計図を盗んだといった憶測も飛び交っていました。

■実現すればスペースシャトルより高性能な宇宙船になるはずだった?

国際宇宙ステーションに滞在するブランのイメージ図 出典:Wikipedia
国際宇宙ステーションに滞在するブランのイメージ図 出典:Wikipedia

スペースシャトルとブランは全く同じというわけではありません。まず、スペースシャトルは宇宙へ打ちあがるためのエンジンを備えており、大型ロケットは燃料タンクとして使用されていました。それに対してブランは本格的なエンジンは搭載しておらず、宇宙へ打ち上げる場合には大型ロケット「エネルギア」に搭載されます。このような設計により、宇宙への柔軟なアクセスが可能になると考えられていました。

さらに、スペースシャトルの最大可能乗員数は7名ですが、ブランは10名搭乗できます。搭載できる貨物量も、スペースシャトルの24トンに対し、ブランは30トンと多くの物資を届けることができるのです。そして、国際宇宙ステーションにスペースシャトルは約2週間強ほど滞在できますが、ブランは30日間飛行できます。

ちなみに、ブランという言葉はロシア語で「吹雪」を意味しています。

■1988年には初の打ち上げ試験を実施

ブランの打ち上げ試験時の写真 出典:Wikipedia
ブランの打ち上げ試験時の写真 出典:Wikipedia

開発されたブランの初号機は、1988年にバイコヌール宇宙基地から発射されました。206分間にわたり無人で地球軌道を周回し、発射場所であるバイコヌール宇宙基地の滑走路に自動着陸を成功させています。

その後、1992年には有人飛行を行う予定となっていました。しかし、ブランの初飛行から1年後、ベルリンの壁が崩壊します。そして1991年にはソビエト連邦が崩壊し、それと共にブラン計画は消滅してしまったのです。

ブラン計画がなくなってしまった背景には、実はスペースシャトルと同じ維持費が高額であるといった事情がありました。フライト後の機体は大きく損傷しており、修理に多額の費用がかかることが分かったのです。これにより、使い捨てのプロトンロケットとソユーズ宇宙船を使ったほうが安く済むという結果となりました。

次回の記事では、ブランが格納庫に放置され朽ち果てた経緯までを解説していきます。お楽しみに!

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