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ツイッターのスペース機能との競争から考える、クラブハウスの将来 4つのシナリオ

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(筆者撮影)

いよいよ、ツイッターがクラブハウス対抗とも言われる音声チャット機能の「Spaces(スペース)」の展開を加速し始めてきています。

3月2日には、クラブハウスよりも先にAndroidで「スペース」機能が利用可能に。

3月5日には、「スペース」機能を使って、オープンな説明会も開催されました。

日本で話題になった初期には、音声版ツイッターとよばれることも多かったクラブハウスですが、ここに来てツイッターが「スペース」機能提供を拡大してきたことで、ツイッターとクラブハウスの対決構造が明確になってきた印象もあります。

一方のクラブハウスは、1月末から2月上旬の盛り上がりが大きすぎたこともあり、ブームの終わりやクラブハウス疲れという報道も増えているようです。

実際に、Googleトレンドの検索数のグラフを見ると、その盛り上がりの大きさと、その後の一段落ぶりは一目瞭然。

(出典:Googleトレンド 「クラブハウス」の日本の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 「クラブハウス」の日本の検索数推移)

この状況で、ツイッターの「スペース」機能とユーザーの奪い合いになることを考えると、不安になるクラブハウスユーザーが少なくないことは良く分かります。

さらに、延長になった緊急事態宣言があければ、関東地方の会社員がさらに音声メディアから離れてしまう可能性もあるでしょう。

はたして、今後のクラブハウスはどういう展開を見せるのか、過去の他のウェブサービスの歴史から予想してみましょう。

■1.独自路線縮小シナリオ(Ustream型)

1度盛り上がったサービスが、その後ブームが去って忘れ去られるというケースは、インターネットでは珍しくありません。

今回のクラブハウスもあまりに最初のブームが大きすぎた結果、まだ日本で話題になってから一ヶ月半も立っていないのにもかかわらず、早くもブームが終わったと考えている人も少なくないようです。

実際に、良くネット業界で比較対象の例として名前があがるのがUstreamでしょう。

(出典:Googleトレンド 「Ustream」の日本の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 「Ustream」の日本の検索数推移)

Ustreamは、2007年3月にサービスを開始した、インターネットのライブ配信サービスで、アメリカ大統領選挙の中継などで注目されたこともあり日本でも2009年から話題に。

2011年の東日本大震災の際には、地上波テレビの同時放送を行ったことが大きく注目されました。

しかし、その後YouTube Liveなどの競合サービスとの競争にやぶれ、IBMに買収されるという形でブランドが消えることになりました。

参考:さらばUstream、10年で消滅。IBM Cloud Videoへ完全移行

クラブハウスも、Twitterのスペース機能など、競合サービスとの競争状況次第では同じ結果になる可能性は当然あると言えるでしょう。

■2.M&A後拡大シナリオ(Instagram型)

次に、噂ベースで良く予想されているシナリオは、クラブハウスがネット系大手企業に買収されるパターンです。

特に、Facebookに買収されたInstagramや、Googleに買収されたYouTubeのように、大手ネット系企業に買収されることで、資金的、人的な弱みを解消し、競合とのユーザー獲得競争に勝利するというシナリオは十分ありえます。

(出典:Googleトレンド 「インスタ」の日本の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 「インスタ」の日本の検索数推移)

Twitterが自社でサービス開発をしている関係で、買収されるとしたらFacebookやGoogleではないかという憶測もありましたが、その後Facebookも自社開発をしているというニュースも出てきたので、このシナリオの可能性は低いと見ている業界関係者も少なくありません。

特に今回クラブハウスには、世界最強のVCとも名高いアンドリーセン・ホロウィッツがついており、簡単には売却しないのではないかという見方も強いようです。

■3.M&A後縮小シナリオ(Flickr型)

もちろん、ネット大手企業に買収されたからといって、全てのサービスが、インスタグラムやYouTubeのようにさらなるユーザー層拡大に成功するわけではありません。

インスタグラムの登場以前、世界一の写真共有サービスとして注目されていたFlickrは、ヤフーに買収された後に、その勢いを失ってしまったと言われています。

(出典:Googleトレンド 「Flickr」の日本の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 「Flickr」の日本の検索数推移)

参考:ヤフーがどのようにFlickrをダメにしたのか? スタートアップが大企業に買収されるということ

また、ツイッターに買収されたPeriscopeのように、最終的に買収されたサービスに統合されて、そのブランドが消えるケースもあります。

クラブハウスも、安易に買収の道を選択すると、こういう結果に繋がる可能性もあります。クラブハウスの創業背景を聞いていると、こういう買収によるリスクを考えて、創業者がM&Aを選択しないという確率の方が高い気はします。

■4.独自路線拡大シナリオ(TikTok型)

個人的に、一番可能性が高いと考えているのは、この独自路線拡大シナリオです。

例えばSnapは、自分達が開発した一定時間で消える動画という発明を、インスタグラムのストーリーズ等にコピーされることになりましたが、その後も独自路線を歩み、見事に時価総額10兆円を突破して成長を続けています。

参考:時価総額10兆円突破の「スナップ」の株価はどこまで伸びる?

また、TikTokも、自らの機能をインスタグラムのリール機能等にコピーされることになりましたが、その後も着実にユーザーを増やしているようです。

(出典:Googleトレンド 「TikTok」の日本の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 「TikTok」の日本の検索数推移)

そもそも、ツイッター自身も、ツイッターが生み出したタイムラインという発明を、Facebookにコピーされることになりましたが、独自の地位を築いて現在のポジションに辿り着いています。

実は競合にサービスを真似されると、市場自体が拡がって両方のサービスが伸びるというケースも少なくないのです。

現在のところ、ツイッターの「スペース」機能とクラブハウスは、サービスの方向性が違うようにも見えますので、Facebookとツイッター同様に、両方が違う用途に定着するケースも想像できます。

なにしろクラブハウスは、まだ日本で話題になってから2ヶ月もたっていないサービスですから、これからTikTokやSnapChat同様に、着実にコアユーザーを積み上げてサービスを伸ばしていく可能性も十分あるわけです。

クラブハウスは縮小したのか話題になりすぎたのか

特に注目しておきたいのは、これまでにご紹介した各サービスと、クラブハウスが辿った話題の山とのスピード感の違いです。

冒頭に掲載したように、直近の「クラブハウス」のキーワードの検索数の推移を見ると、縮小シナリオのグラフと同じ形に見えますが、実は他のグラフと時間軸が全く違います。

例えば、Googleトレンドの検索数をTikTokと比較してみると、こんな形になります。

(出典:Googleトレンド 「TikTok」と「クラブハウス」の日本の検索数推移)
(出典:Googleトレンド 「TikTok」と「クラブハウス」の日本の検索数推移)

クラブハウスの場合は、あまりにピークの山が高すぎるために、落ち込みが非常に目立つのも事実ではあるのですが、実は下がった地点で見てもTikTokが大きく注目された2018年の検索数と同じ水準まで「伸びた」と見ることもできます。

このグラフだけ見ると、クラブハウスに比べるとTikTokは全く話題になっていないサービスのように見えてしまうほど。

逆に言うと、TikTokが1年近くかけて獲得した注目度を、クラブハウスは1ヶ月で獲得してしまった、ということも言えるわけです。

そういう意味では、クラブハウスにどれぐらいユーザーが定着しているのかが注目点。

筆者はクラブハウスに今も住人として住んでいますので、少しバイアスはかかっていますが。

初期に一気に押し寄せた芸能人や流行り物好きの方は1ヶ月でいなくなったものの、農家の方々や、地方のお店の方々など、これまで手作業が中心でスマホを使えなかった職業の方や、私のようにリモートワークで人恋しくなっている人が定着していたり、学生が就職活動の情報収集に使っていたりと、継続して使っているコアユーザーの方は着実に存在していると感じています。

この記事を書いている当日も、クラブハウスに新しく誰でも「クラブ」というメンバー登録型の部屋を開設できる機能を解放したこともあり、クラブハウス内はちょっとしたお祭りムードに包まれていました。

参考:ついにクラブハウスに、誰でもクラブが開設できる機能が実装されたので、作り方をまとめてみた。

いずれにしても、クラブハウスが号砲を鳴らした、おしゃべりSNSのユーザー獲得競争はまだはじまったばかり。

日本には日本独自の音声配信プラットフォームも複数ありますし、これからしばらくは、目を離せない戦いが続きそうです。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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