木村拓哉氏と玉森裕太氏がサプライズゲスト! 「ミシュランガイド東京2025」を読み解く3つの注目点
「ミシュランガイド東京2025」が公開
2024年10月17日に「ミシュランガイド東京2025」の発表会がウェスティンホテル東京で行われました。11時からメディア向け説明会、12時30分から掲載店発表セレモニー、14時30分からカクテルパーティーという流れで、私も全てに参加しました。
・「ミシュランガイド東京2024」の読み方 発表会に参加したグルメジャーナリストの視点(東龍)/Yahoo!ニュース
日本ミシュランタイヤが全面協力したTBS系ドラマ「グランメゾン東京」、および、映画「グランメゾン・パリ」で、尾花夏樹を演じる木村拓哉氏と、平古祥平役の玉森裕太氏がサプライズなスペシャルゲストとして登壇。
・木村拓哉氏主演「グランメゾン東京」はどこまで正しい? ロス後も楽しめる15の検証(東龍)/Yahoo!ニュース
人気者の二人がプレゼンターを務めたこともあって、会場は大いに盛り上がりをみせました。
メディア向け説明会
メディア向け説明会では、日本ミシュランタイヤの代表取締役社長である須藤元氏、ミシュランガイド・RPWA事業部執行役員である三輪唆矢佳氏が説明を行いました。
例年通り、ミシュランガイドの歴史、評価基準、調査員制度、星の定義を改めて説明。ホテルセレクション、ウェブ版、電子ブックについても時間が割かれていました。
特に力を入れていたのは、ミシュランガイドの評価基準です。
・匿名のインスペクター
匿名の調査員が通常のゲストと同じように予約して料金を支払い、年次更新で調査
・評価基準
素材の質、料理技術の高さ、味付けの完成度、独創性、常に安定した料理全体の一貫性
・合議制
インスペクター、リージョナル・ダイレクター、インターナショナル・ダイレクターによって判断
以前から主張していることにぶれがなく、一貫性があって信頼できます。今年はメディアの数が多かったこともあり、評価の公平性や公明性について、詳説していたという印象です。
掲載店発表セレモニー
掲載店発表セレモニーからは、セレクテッドレストランを除く、レストラン関係者が招待され、とても活気に溢れていました。
発表は昨年と同じ流れで、ビブグルマンの新規掲載店、メンターシェフアワード、サービスアワード、ソムリエアワード、ミシュラングリーンスターの新規掲載店、一つ星の新規掲載店、二つ星の新規掲載店、三つ星の全掲載店という順番で紹介されました。
セレクテッドレストランは数が多いということもあり、詳しい紹介はありませんでした。
世界で最も多くの星をもつ東京
掲載軒数は全部で507軒(新規64軒)。
内訳は、セレクテッドレストラン227軒(新規41軒)、ビブグルマン110軒(新規13軒)、一つ星132軒(新規10軒、昇格3軒)、二つ星26軒(昇格1軒)、三つ星12軒(昇格1軒)、ミシュラングリーンスター12軒(新規1軒)。
東京の星つきレストランは170軒となり、ミシュランガイドが日本に上陸した2007年の「ミシュランガイド東京2008」からずっと、世界で最も星付き掲載店が多い都市となりました。
三つ星、二つ星、ミシュラングリーンスターで新規店が登場し、初めてデザートレストランも登場。ミシュラングリーンスターの新規店として、一つ星でもある精進料理の「醍醐」が掲載されています。アワードではソムリエアワードが新設されました。
最後のカクテルパーティーでは三つ星でミシュラングリーンスターの「レフェルヴェソンス」、一つ星「寅黒」、一つ星でミシュラングリーンスターの「ノル」、一つ星「トワヴィサージュ」、一つ星「プルニエ」がサステナブルガストロノミーを提供。ミシュランガイドがいかにサステナビリティを重視しているのかがわかります。
三つ星レストラン
三つ星として掲載されたのは、以下の通り。
・青空/寿司
・かんだ/日本料理
・神楽坂 石かわ/日本料理
・虎白/日本料理
・麻布 かどわき/日本料理
・龍吟/日本料理
・茶禅華/中国料理
・カンテサンス/フランス料理
・レフェルヴェソンス/フランス料理
・ジョエル・ロブション/フランス料理
・ロオジエ/フランス料理
・セザン/フランス料理
今年は三つ星「まき村」が掲載されなくなり、「セザン」が二つ星から昇格しました。
フォーシーズンズホテル丸の内 東京の「セザン」は、東京のホテルレストランとして、初めて三つ星に輝いたことになります。エグゼクティブシェフを務めるダニエル・カルバート氏は、ホテルやチームのお陰であると述べていました。
18年連続で三つ星として掲載されているのが「カンテサンス」「かんだ」「ジョエル・ロブション」の3軒のみです。
三つ星の内訳は、日本料理5軒、フランス料理5軒、寿司1軒、中国料理1軒。昨年は日本料理が最も多かったですが、フランス料理が並ぶことになりました。
東京では、日本料理はもちろんのこと、フランス料理も非常にレベルが高いです。イタリア料理では、三つ星レストランはまだ現れていません。
アワードの受賞者
アワードの受賞者は次の通りです。
・メンターシェフアワード
金坂真次氏/鮨 かねさか
・サービスアワード
安井理恵氏/スィークル
・ソムリエアワード
若林英司氏/エスキス
メンターシェフアワードには、国内外の鮨界をリードする「鮨 かねさか」の金坂氏、サービスアワードには、フランスのミシュランガイド三つ星「ミラズール」のマウロ・コラグレコ氏がプロデュースする「スィークル」エグゼクティブ・ディレクターの安井氏、新設されたソムリエアワードには、知名度も実績も十分の「エスキス」総支配人兼シェフソムリエの若林氏が選出されています。
ミシュランガイドは、基本的にレストランのセレクトが中心です。人を選出するとなると難しいものがありますが、納得できる人選ではないでしょうか。
Newセレクションの評価
Newセレクションは、2023年3月からミシュランガイドの公式サイトに新しく登場したセレクションです。
昨年2024年版で、2023年3月にNewセレクションに登場した「マス」がいきなり二つ星を獲得したことによって、Newセレクションはますます耳目を集めるようになりました。
・ミシュランガイドに初めて登場した「Newセレクション」とは? これから起きる3つの変化(東龍)/Yahoo!ニュース
今年の結果は次の通りです。店名の横にNewセレクション掲載年月も併記しています。
ビブグルマン
ル ビストロ デ ブル/le bistrot des bleus(フランス料理)/2024年4月
Fry家/Fry-ya(とんかつ)/2024年4月
をことて/wokotote(日本料理)/2024年5月
鮨 三か田/Sushi Mikata(寿司)/2024年5月
一つ星
スィークル/CYCLE(フランス料理)/2024年4月
アポテオーズ/apothéose(フランス料理)/2024年4月
ソーセ/Saucer(フランス料理)/2024年5月
四ツ谷 みね村/Yotsuya Minemura(日本料理)/2024年6月
オルタンシア/hortensia(フランス料理)/2024年6月
白寧/hakunei(現代風料理) /2024年7月
佐野鮨/Sanosushi(寿司)/2024年8月
割烹 室井/Kappo Muroi(日本料理)/2024年8月
東山無垢/Higashiyama Muku(日本料理)/2024年8月
今年度のNewセレクションは、2024年4月から8月まで毎月発表され、全部で48軒。そのうち13軒、つまり、全体の3割近くにビブグルマンや星がつきました。
昨年度にNewセレクションとして掲載されたレストランが、ビブグルマンや星として掲載されることもあるだけに、“ミシュランガイドの登竜門”としてNewセレクションは引き続き脚光を浴びることになりそうです。
今年の注目点
「ミシュランガイド東京2025」の注目点は3つあります。
最初は、昨年に続いてフランス料理の躍進、および、復権です。先に述べたように、三つ星12軒のうち5軒がフランス料理を占めています。一つ星の新規10軒のうち、「ソーセ」「オルタンシア」「スィークル」「アポテオーズ」と、フランス料理が4軒と約半分を占めました。フランス料理が再び評価されていくのか、目が離せません。
次に注目したいのが、非掲載の方向性。昨年三つ星であった「まき村」、二つ星であった「鮨 よしたけ」、一つ星であった「鮨 むらやま」などが掲載されなくなりました。こういった店は過去に不掲載となった「すきやばし 次郎」「鮨 さいとう」「日本橋蛎殻町 すぎた」などと同様に、一気に評価が落ちたというのが理由ではないでしょう。キャパシティの狭さと常連客による独占、さらにはインバウンドの増加もあって、著しく予約困難になっているという背景があります。ミシュランガイドの調査員は匿名で通常の客と同じように利用するため、このような店を予約することができず、調査が不可能です。
「山」がデザートレストランとして世界で初めて星を獲得しました。ミシュランガイドではもともと料理が対象であっただけに、デザートがメインのレストランが選出されたのは極めて驚きです。料理カテゴリーにはデザートがありませんでしたが、新たにクリエイティブが創設され、こちらにカテゴライズされました。ミシュランガイドは、ラーメンや粉ものをはじめとして、純粋なガストロノミーの枠を超えて、料理カテゴリーを広げてきただけに、今後の拡張に関心が寄せられるところです。
ミシュランガイドの意義
今年のミシュランガイド発表会は、ここ数年の中でも、最も盛り上がっていたと思います。
レストランのスタッフは普段、ゲストが満足するように尽力し、裏方に徹しています。しかし、年に一度のミシュランガイド発表会の場では、もてなされる側となり、ワクワクしていて楽しそうです。
ゲストを楽しませるには、レストランのスタッフにも、このような非日常的な刺激が必要。ミシュランガイドは利用者のための道標であると同時に、レストランにとっても心の支えとなっているのです。