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ラストオーダーぎりぎりに大量注文して「焼いて持ってくるなり工夫しろ」 客と飲食店のどちらが悪い?

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

ラストオーダー時間ギリギリの来店

Threadsで“ラストオーダーギリギリ問題”が話題となっています。

ある客が入店時にスタッフから「23時ラストオーダーですけど大丈夫ですか?」と確認されて入店。それなりの量をオーダーした後で23時15分に、23時30分に退店するよういわれたといいます。

「この量の注文入ったら23時半退店は無理かどうかわかるだろ」として、「頼んだ時にこの量は難しいと伝えるか、焼いて持ってくるなり工夫しろ」「まず最初に23時半閉店って言え」と激怒。

残っている肉を焼いてもいいと承諾してもらい、少し延長してもらいましたが、スタッフから“早く帰れ”という視線を感じたといいます。

投稿内容から、この飲食店の業態はおそらく焼肉店であると思われます。

この投稿には賛否両論が寄せられており、「こういうクレームを書いちゃう客がカスハラ認定されるクソ客」という非難から、店側のコミュニケーションの不備を指摘する声も少なくありません。

飲食店の営業時間

飲食店を営業するには、自治体の保健所から飲食店営業許可をとらなければなりませんが、基本的に営業時間は自由に設定できます。

バーや居酒屋など、主食(米飯類、めん類、菓子パンを除くパン類、ピザ、お好み焼きなど)を常に提供しておらず、お酒が中心となっている業態において、0時から6時までの間にお酒を提供するには、深夜酒類提供飲食店営業開始届を警察署に提出する必要があります。

なお、風俗営業の接待飲食等営業に該当する飲食店は原則0時までしか営業できず、深夜酒類提供飲食店営業と併せることはできません。

食べ物と飲み物のラストオーダー

営業時間と同じように、ラストオーダーの時間も、飲食店が自由に決められます。

食べ物と飲み物とで、オーダーストップの時間が異なり、後者の方が時間が遅いです。食べ物は営業終了時間の30分前から1時間前、飲み物は営業終了時間の15分から30分前が一般的です。

料理によってラストオーダーの時間が異なることもあります。たとえば、アラカルトの飲食店では、焼き上がるのに時間を要する料理に関しては、前半のオーダー時に注文しないと受け付けてもらえません。

また、コースが中心のファインダイニングでは、全てのコースが提供できる時間が必要なので、2時間前くらいにラストオーダーになることがあります。鮨店では、ひととおり握りが終わった後に、追加で食べたいものがあるかどうかを訊かれます。

ラストインと滞在時間

ラストオーダーの時間以外にも、ラストインの時間や滞在時間が設けられていることもあります。

ラストインとは、last in=最終入店を意味しています。ラストインの時間を定めている飲食店は少なくありません。ラストインの時間を定めていない飲食店であれば、ラストオーダーの時間がラストインの時間となります。

カフェやブッフェスタイルの業態、飲み放題のコース、繁忙期の飲食店では、滞在時間が定められている場合もあります。滞在時間とは入店から退店するまでの時間であり、60分から120分くらいがほとんどです。

スタッフの人数

飲食店におけるスタッフの人数は、流動的です。開店前の料理の仕込みやテーブルのセットアップなどから増えていき、ランチタイムでは12時から14時、ディナータイムであれば18時から20時くらいのピークタイムが最も多いです。ディナーのピークタイムの後からは、閉店に向けて少なくなっていきます。

ラストオーダーの時間近くになると、小箱の飲食店ではなくても、キッチンもホールも、それぞれ1人のスタッフで回すという飲食店も珍しくありません。会計対応やクローズ作業も始まり、ラストオーダーのあたりではさまざまな業務が発生します。

スタッフの立場からすれば、ラストオーダー時間ぎりぎりの来店や閉店間際の大量注文を、あまり歓迎できないのは理解できます。

体制を整える

仕事の“上がり”が見えてきたところで、想定外の対応が入ってくれば、面倒に思うかもしれません。しかし、飲食店の営業時間や営業に関するルールを決めているのは、他ならぬその飲食店自身です。

ラストオーダーの時間帯に高い負荷がかかるようなら、余裕をもったラストオーダーの時間に変更したり、スタッフの人数を増やしたりして、対応するしかありません。

飲食業界は人材不足にあるので、そもそもスタッフの確保が難しいという面はあります。

件のケース

件のケースではラストオーダーの時間までに注文したので、客に非はありませんが、営業時間終了までに退店しなければなりません。ただ、店側も営業時間通りにクローズしたければ、しっかりとコントロールしなければなりません。

オーダー時にサービススタッフが、閉店時間までに食べられるかを確認する必要があります。オーダーを伝えられたキッチンのスタッフも、用意する側なので、最も分量について理解しているはずなので、この時間内で食べるのが難しいので、再度確認するようにサービススタッフに伝えなければなりません。

飲食店は自由にルールを定めることができますが、それをしっかり客に伝えて、運用していく必要があります。

一期一会

飲食店と客の出合いは、まさに一期一会です。

飲食店には、せっかく訪れてくれた客に対して、ラストオーダー間際の来店にも柔軟に対応し、心地よい食体験を提供してくれることを期待しています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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