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妻の怒りの投稿が3000万回表示! 食い尽くし系の夫が作り置きを「善意」で残飯処理

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

食い尽くし系が話題

最近X(旧Twitter)で、食い尽くし系(食べ尽くし系)の投稿が話題になっています。

食い尽くし系とは、大皿に盛られている料理を全て一人で平らげたり、冷蔵庫にあるものを勝手に全部食べたり、保管されているものに手を出したりと、家族など他の人のことを考えず、あるものを食べ尽くしてしまうことや、そういった人を指します。

投稿では、妻から夫に向けたメッセージになっており、鍋や大皿に多めにつくってあるのは「作り置き」であり、「余ってるもの」ではないとあります。「明日の私のための貯金」を勝手に食べた上に、「むしろ善意で残飯処理した」みたいな態度を取るなと、怒りが爆発している様子です。

記事執筆時点で、約3000万のインプレッションがあり、8500件のリツイート、580件のリプライ、12万のいいね、と反響を呼びました。

食い尽くし系について

食い尽くし系の例は豊富に見かけられます。

今回の「他の人の分を全て食べる」「事前に注意しても食べる」にはじまって、「つくりおきを食べる」「冷蔵庫にあるものを勝手に食べる」「店舗で試食品を食べ尽くす」「被災地で配布された支援物資でさえ、家族の分まで食べる」と、なかなかショッキングです。

食い尽くし系の人は、おいしかったから食べてしまっただけと、悪びれることもありません。怒っても何も響かないので、怒ることに疲れてしまい、もう諦めてしまうケースもあります。

件のケースでは、夫は、ほかの家族のことを考えず、自宅にある食べ物は全て自分が食べてよいと思っている節があります。加えて、善意で処理したとして悪びれた様子もないので、まさに食い尽くし系の典型です。

対策には、いつでも食べられるものを、食事とは別に用意しておくという対策も散見されますが、結局は全てを勝手に食べられるだけなので、意味がないようです。

食い尽くし系は、摂食障害や発達障害、もしくは、何かしらの依存症であるようにも感じられますが、医学的な観点からはまだそのように認められていないようです。

男女の差

食い尽くし系の報告をみていると、ほとんどは男性ですが、なぜでしょうか。

食い尽くし系に男性が多いのは、料理をつくるのは夫よりも妻の方が多いからだと指摘されています。もしも食べ尽くしてしまうと、妻は自分でつくるしかなく、自分が大変になるだけなので、食べ尽くさないということもあるでしょう。

一般的に女性の方が男性よりも体型に敏感であることも、関係あるかもしれません。カロリーを過剰摂取すると体重が増える可能性があるため、女性は食い尽くし系になりにくいのではないかと考えられます。

食い尽くし系の原因

では、どうして食い尽くし系になってしまうのでしょうか。

小さい頃の家庭環境に依拠することが多いといわれています。

大皿料理で自由に取り分けていたり、兄弟で食べ物を奪い合っていたり、親が子どもに食べ物を譲っていたりすることがよく挙げられます。他にも、家族が揃ってから食事を開始するのではなく、勝手に食べ始めてよかったり、運ばれて来た料理からどんどん手を付けてよかったりすることも、一因であるとされています。

食べ物に対する強い執着が生まれたり、全ての食べ物は自分が食べてよいと思ったり、他の人たちが食べることを全く想像できなかったりするのです。

子ども時代ならまだしも、独り立ちしてからも自分で料理をつくったことがないと、食い尽くし系になりかねません。つくり手の苦労や気持ちを理解できなかったり、日々の食事スケジュールを考えられなかったりするからです。

食い尽くし系への対応

では、食い尽くし系の人に対して、どのように対応すればよいでしょうか。

つくり置きはせず、その時に食べるものだけを用意したり、料理がある場所に鍵をかけたり、食べる人の名前を記したりする手段も見かけられます。ただ、それでは家事の負担が増えてしまうのが、難しいところ。

最も重要なことは、まずはコミュニケーションです。食べ尽くしてしまうと、みんなが困ることを辛抱強く説明し、理解してもらう必要があります。そして、みんなが揃ってから食べるようにしたり、小皿に盛ったりすることを徹底しなければなりません。

食育の重要性

食育も大きな重要性をもつと考えられます。

第4次食育推進基本計画/農林水産省

食育基本法をもとにして、2021年3月31日に公表されたのが、第4次食育推進基本計画。2021年度から2025年度までの5年間の計画であり、ここでは共食の重要性も述べられています。

共食の場においては、自分が食べられる分量を考えたり、相手のものを勝手に取らなかったり、同席者の気持ちを配慮したりすることが極めて重要です。学校などの教育で、食い尽くし系を取り上げることによって、気付きが得られたり、家庭内で共有したりして、改善されるのではないでしょうか。

食事は人と人との潤滑油

誰かと共に食事することによって、コミュニケーションが促進されたり、人間関係が円滑になったりします。食事は人と人との潤滑油であるだけに、食い尽くし系によって人間関係が毀損されるのは非常に残念です。

食い尽くし系がもっと知られ、効果的な対策も行われ、食事の場がより建設的なものになることを願っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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