15名が無断キャンセルして、飲食店が「2度と来てほしくない」 忘年会の幹事が気を付けるべき3つのこと
忘年会シーズンが到来
今年も忘年会シーズンが到来しましたが、どのように過ごしますか。
ぐるなびが2024年11月29日に発表したプレスリリースによると、「職場」の忘年会には54.9%、「プライベート」の忘年会には57.4%が参加するとしています。
時期については、職場では「12月3週目」の31.2%、プライベートでは「12月2週目」の29.1%が最も多いということです。
・【ぐるなびリサーチ部】「忘年会」に関する調査/ぐるなび(PR TIMES)
忘年会のシーズンを迎える中、Threadsでは、無断キャンセルされた飲食店の投稿が話題となっています。
15名の無断キャンセル
週末に15名の団体が無断キャンセルし、電話しても出ませんでした。
これについて飲食店が「いい歳した大人がする事では無いですよ」「2度と来てほしくない」「当日でも一言前もって連絡するくらいできんかなぁ」と思いを吐露。
返信内容を確認すると、キャンセルを糾弾し、投稿に賛同する声が多く見られます。
これから、忘年会が開催されていきますが、ノーショー(無断キャンセル)とドタキャン(直前キャンセル)には是非とも気を付けていただきたいです。
ノーショーやドタキャンがいけない理由
ノーショーやドタキャンが起きると、飲食店は損害を被ります。
来客人数を鑑みて事前に準備しますが、席に加えてコースや料理を予約しているのであれば、用意した食材や料理が無駄となります。客入りを予測してスタッフのシフトを組みますが、キャンセルがあれば、そこまでスタッフが必要なかったということになり、人件費も無駄になるのです。
運よく直前に予約が入ったり、ウォークインの客が訪れたりすることもあるかもしれません。しかしその場合でも、同じものがオーダーされなければ、用意した食材や料理が無駄になり、損失が発生します。ノーショーでは客が遅刻する可能性も考慮して、15分から30分は様子をみるので、ドタキャンよりも損失を回避することは難しくなります。
キャンセルされた予約があったせいで、本来は受けられていた予約が受けられない場合もあるので、その場合には売上機会を損失してしまいます。
ほかの利用者にも迷惑
ドタキャンやノーショーは、飲食店に損害を与えるだけではなく、ほかの利用者にも迷惑をかけます。本来であれば、予約できたはずの人が予約できなくなるからです。
ドタキャンやノーショーがたびたび起きると、飲食店は損失分を転嫁して、より高い価格を設定しなければなりません。そうなれば、困るのは他ならぬ利用者です。つまり、ドタキャンやノーショーを行う人がいるせいで、他の人が損害の補填分を支払うことになります。
最初から訪れる気がなく、キャンセルするために飲食店を予約することは、法律に触れる可能性もあり、言語道断です。
飲食店の倒産件数が過去最悪ペース
東京商工リサーチによると、飲食店の倒産件数は2023年に前年比57%増加の930件となり、過去最高を記録しました。
・1-10月の「飲食業倒産」 過去最多の820件ラーメン店、焼き肉店、居酒屋、バーなどが苦戦/東京商工リサーチ
今年も厳しい状況が続いており、2024年は1月から10月の倒産件数は820件と、前年同期比で12.7%増加。最多であった2020年同期の730件を更新し、このペースで推移すれば、2024年は年間で初めて1000件を超えてしまいます。
コロナ関連支援の終了や縮小、ゼロゼロ融資の返済の本格化に加え、人手不足や人件費の高騰、食材やエネルギー価格の上昇など、さまざまなコスト増が大きな負担となっていることが要因として挙げられます。
閑散期が控えている
飲食店の書き入れ時は一般的に3月と4月の歓送迎会、忘年会の12月といわれています。反対に閑散期といわれているのが2月と8月。新年会の時期を除いた1月、5月もあまりよくありません。もちろん同じ飲食店であっても、業態や立地によって異なります。
ただでさえ倒産が増えている厳しい状況であるだけに、最大の書き入れ時である12月に十分な利益を確保しなければなりません。ドタキャンやノーショーによって繁忙期の売上が減少すれば、この後に控えている閑散期を、無事に乗り越えることができません。
幹事が気を付けるべきこと
忘年会を開催する幹事は、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。
最も重要なことは、飲食店や参加者との連絡に責任をもつこと。キャンセルはもちろん、人数の増減があれば、できるだけ早く連絡します。参加者には注意を促し、コミュニケーションをしっかりとらなければなりません。
次に気を付けるべきことは、強制参加にしたり、強制参加の印象を与えないことです。コロナ禍を経て会社など仕事関係による忘年会は減少していますが、上下関係がある場合には、注意が必要。
気が進まずに参加を表明してドタキャンやノーショーするくらいであれば、最初から欠席した方がよいです。幹事はこういった時期であるからこそ、少しでも強制的なニュアンスを漂わせてはなりません。
テイクアウトやデリバリーという選択肢も考えられます。人数もはっきりとせず、ドタキャンやノーショーとなる可能性があるようならば、飲食店でのテイクアウトやデリバリーも考慮に入れた方がよいです。
美談化への警鐘
ノーショーやドタキャンが起きても、運良くウォークインの客が入店し、リカバリーできることがあります。
「団体のドタキャンがあったことをX(旧Twitter)に投稿したら、多くの方が食べに来てくれた」「ノーショーになり、用意していた料理の写真をInstagramにポストしたら、代わりに食べたいという人が来店した」というエピソードです。
ハッピーエンドは面白い物語なので、メディアが美談として紹介することは少なくありません。
しかし、幸運に恵まれただけの特殊な事例を美化してしまうと、「何とかなるのではないか」「大したことではない」と思われてしまい、問題が矮小化されてしまいます。
メディアはノーショーやドタキャンの背景にある問題を掘り下げる必要があります。
ノーショーやドタキャンに対する意識の低さ
日本では飲食店の予約が契約であるという意識が低いです。
ホテルを予約して泊まらなかったり、飛行機や新幹線のチケットを購入して乗らなかったりしても、料金は支払うものという認識はあります。しかし、飲食店になると、予約してコースまで注文しているにもかかわらず、何も食べていないからとキャンセル料を支払わなくてもよいと考える人がいるのです。
ノーショーやドタキャンを解決するためには、クレジットカード登録やデポジットの支払いといった予約サービスの機能が重要。キャンセルポリシーに従って、ペナルティ料金を科すことができれば、飲食店は損害を補填でき、利用者はキャンセルを真剣に考えるようになります。
ノーショーやドタキャンは誰の得にもならない
2018年11月1日付けで経済産業省が配信した「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」には、ノーショーが与える影響が報告されています。
・No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート/経済産業省
ノーショーによる損害は、年間で約2000億円。2日前からのキャンセルも加えると、その発生率は6%強にも達し、被害額は約1.6兆円にもなると推計されています。直近のデータはありませんが、状況が大きく改善しているとは考えられません。
飲食店だけではなく、他の利用者にとっても、ノーショーやドタキャンは喜ばしいことではありません。ノーショーやドタキャンに気を付けて、忘年会で楽しい年末を過ごしていただければと思います。