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教え子の姿に上本博紀監督もニッコリ!「阪神タイガースジュニア2022」の初陣は先輩後輩対決だ!

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
石野稜眞と川口壱茶を囲んで(左から)藤川俊介、岩本輝(右端)上本博紀(撮影:筆者

■初実戦は先輩との対戦

 「阪神タイガースジュニア2022」の初陣は、なんとも胸熱なゲームとなった。

 10月1日、新チームの相手は「関メディベースボール学院」の中学1年生たち。そこになんと、昨年の「阪神タイガースジュニア2021」のメンバーが2人所属しており、この試合に出場して先輩VS後輩が実現したのだ。

関メディ|000 000 0=0

阪神  |000 000 0=0

 関メディの先発は石野稜眞選手。投球練習から速くノビのあるボールを投げ込んでいたが、実戦でも格の違いを見せた。立ち上がりから内外を広く使って攻め、時折タイミングを変えるなど、一段と成長したピッチングで三回まで3奪三振でパーフェクトピッチ。四回と五回に死球と内野の失策でランナーは出したが、落ち着いて後続を断ち、無失点でマウンドを降りた。

 ショートを守ったのは、同じく昨年のジュニア、川口壱茶選手だ。五回までに5度の守備機会があったが、いずれも軽快にさばいた。

 六回からは二人がポジションを交代した。石野選手は初のショート、川口選手もほぼピッチャーはしていない。どうやら関メディ・佐藤義浩コーチの粋な演出だったようだ。

 川口選手もテンポよく投げて六回を抑えたが、続く最終回の七回、味方のエラーで先頭打者を出塁させた後、ヒットで繋がれた。暴投で振り逃げのランナーは許したものの、ここはキャッチャーが判断よく飛び出した三走を刺した。そして重盗、四球で2死満塁のピンチを背負ったが、最後は三邪飛で得点を許さなかった。

■石野稜眞選手(関メディベースボール学院)

 試合後、二人に話を聞いた。ジュニアとの対戦で絶対に投げたかったという石野選手は「今年のタイガースジュニアが優勝してほしいという思いで投げた。だからこそ、しっかり0点で抑えたかった」と、後輩たちのために全力で力勝負したと語る。

 中学になって現在は硬式球を使っているが、この日はジュニアに合わせて軟式球で投げてくれた。「ボールがめっちゃ軽くて、ちょっと投げにくかった」と苦笑するも、「いつもよりはコントロールも球の速さもよかった」と、自身のピッチング自体には手応えがあったようだ。

 最速が125キロだったと聞くと、「僕の最速です!」と興奮気味に目を丸くした。ジュニア相手に先輩のすごさを披露しようとして、リミッターが解除されたのかもしれない。

 対戦した後輩たちについては「普通に思いきり投げたボールを簡単に当ててくるんで、レベルが高いなと思った」と讃え、自身の今後に向けて「しっかりレギュラーになって、チームに貢献したい。そして甲子園に出られる高校に行って、甲子園でも活躍できるような選手になりたい」と力強く答えた。

 1年前は恥ずかしがってか質問の答えもなかなか出てこなかったのが、ハキハキと、そして堂々と自分の思いを語ってくれたことが頼もしく、非常に感慨深い。

石野稜眞(撮影:筆者、写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者、作成:筆者)
石野稜眞(撮影:筆者、写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者、作成:筆者)

■川口壱茶選手(関メディベースボール学院)

 ほぼピッチャーをしていないという川口選手は、登板について「たぶん古巣だからだと思う」と答え、今年のジュニアたちのバッティングを「投げていて簡単に当ててくるし、自分のときはどうやったかなと考えたらレベルも高いし、いい緊張感で投げられた」と振り返った。

 立ち上がりにワンバウンド投球が見られたが、「あれは緊張をほぐすためにわざと投げた」と明かし、最後の2死満塁のピンチの場面には「キャプテンになりたいと思っているので、みんなの気持ちを背負って、(味方の)エラーとか気にせずに魂で、力を込めて投げた」と、いかに気合いが入っていたかを強調した。

 その最後の打者を迎える前に、マウンドに来てくれたキャッチャーは、「自分がいたところやからこそ力を込めて、オレの構えたところに投げてこい!」と言ってくれたそうで、川口選手もしっかりとそれに応えた。

 投球時に「よっしゃー!」「オリャ―ッ!」などと大きな声を発する。気持ちが乗っていることがひしひしと伝わってきたが、これには「気持ちが上がったら、いい打球とかいいプレーとか出るし、仲間もついてくると思うので、そういうところを意識してやっている」という訳があるという。

 さすがキャプテンを志望するだけあって、さまざまなことを考えながら行動しているようだ。

 今後については「ベンチ入りしてタイガースカップで活躍して、いい高校に行って、そこでまた活躍して、プロ野球に入ってベテランまでプレーすること」と、しっかりしたビジョンを明かしてくれた。

川口壱茶(撮影:筆者、写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者、作成:筆者)
川口壱茶(撮影:筆者、写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者、作成:筆者)

■相好を崩す上本博紀監督

 二人を眩しそうに見ていた上本博紀監督(昨年は野手コーチ)は「二人ともプレーは元々ものすごかった。久しぶりに見て、体が一回り大きくなったなと思ったし、久しぶりに顔が見れて嬉しかった。いや、ほんと大きくなったな」と目尻を下げ、「軟式球を投げさせて申し訳ない気持ちもあった。でも後輩のために投げてくれて、そういうのも見てていいなと思った。先輩後輩っていう関係がね」と柔らかい表情で語った。

 「これからもケガだけはしないように」と慮り、二人には「いつでも連絡してこいよ」と温かい言葉をかけていた。離れていても、今も教え子であることには変わりない。短い時間ではあったが、再会を心から喜んでいた。

 一方、初実戦の今年のジュニアたちについては「初めての試合だったので『声を繋いでいこう』とか『元気を出していこう』というのを課題にしてやった。前回(の練習で)元気がなかったので。でも元気が出てきたので、それが収穫だと思う。しっかり守るところは守れていたし、初戦にしてはよかった」と、満足そうに振り返った。

前監督の白仁田寛和氏を囲んで(撮影:筆者)
前監督の白仁田寛和氏を囲んで(撮影:筆者)

■先発・殿垣内大祐選手

 当日の朝、先発を告げられたという殿垣内大祐選手からスタートした。「最初、ちょっと緊張した」と言いながらも、コントロールよく連続奪三振で立ち上がった。力強い球は空振り奪取力が高く、どんどん振らせて有利なカウントでゲームを進める。

 「最初は球が抜けていた」と冷静に自分を分析し、「前で球を放そうと意識した」と試合中に修正できる能力も見せた。2本のヒットは許したが、3イニングスを無失点と上々のピッチングで手応えを深めた。

 「今日は無失点なのがよかった。今後も三振を取れるピッチングをしていきたい」と意気込んでいた。

《上本監督評》

 「大会を想像して、緊張感に堪えて先発のマウンドに上がることを考えて、今日の先発に抜擢した。精神的な強さとか、大舞台を踏んでるような感じかなと思うので。立ち上がりはストライクが入る入らないで苦労するピッチャーが多いもの。緊張したのかどうかわからないけど、しっかりストライクで強い球が投げられたので、期待どおりだった」

殿垣内大祐(写真提供:阪神タイガースジュニア2022)
殿垣内大祐(写真提供:阪神タイガースジュニア2022)

■新開柚葉選手

 2番手でマウンドに上がったのは新開柚葉選手だ。少し緊張していたのか、最初はややバラつきが見られたが、徐々にノッていき、2回を3奪三振でパーフェクトに抑えた。ショートの小松蓮選手も深い位置からの好守備でバックアップした。

 試合後、「いつもよりいいピッチングができた」と、ややはにかみながら答えた新開選手も、完全投球に「狙ったところに投げられた」と満足げだった。

 投球の中で常に「前足にしっかり体重を乗せること」を意識し、普段のキャッチボールから「狙ったところに投げること」を大切にしているという。

 この日は1人の出塁も許さなかったが、今後の登板に向けて「ランナーが出ても、荒れずにしっかりと投げたい」と誓った。

《上本監督評》

 「元々緊張しぃとか、人見知りとか、そういうタイプなんで、慣れてくれば…という子だと思う。ちょっとコントロールを乱したところはあったけど、今日はマウンドに立って、しっかりバッターに投げられただけでいい」

新開柚葉(写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者)
新開柚葉(写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者)

■浅居煌星選手

 最後に登板した浅居煌星選手は投げっぷりよく、帽子を飛ばしながらグイグイと勢いよく押し込んだ。先頭打者の叩きつけた当たりが外野に抜けてヒットとされたが、見事な牽制で刺し、後続を連続三振で斬った。ラストイニングも難なく抑え、2回を無失点と躍動した。

 「打たれたのが高めのスローボールだったので、低めに投げていきたい」と悔しさは顕わにしつつも、「打たせて取る、いいピッチングができた」と好感触を得ていた。

 投げるときに声が出るのは「力強い球を投げるため」だそうで、その気迫は相手を圧倒していた。

 今後も「思いっきり、投げっぷりのいいピッチングをしたい」と次戦に向けて闘志を燃やしていた。

《上本監督評》

 「思いきりのいいピッチングをしてくれた。物怖じしないというタイプだと思う。ただ大舞台になっても、ああいいふうにいけるかなというのを今後、見極めていきたい」

浅居煌星(写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者)
浅居煌星(写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者)

■唯一のヒットは代打・新野旬選手

 昨年のジュニアのメンバーである石野選手―川口選手のリレーに、打線は1安打に抑えられた。その唯一のヒットを放ったのが、最終回に代打で登場した新野旬選手だ。

 「井澤佑馬)くんの代打だったんで、しっかり打とうと思った」と打席に入り、1ストライクからセンターへきれいに弾き返した。

 実は肩を痛めているのだが、「だいぶボールが放れるようになってきた。スイングをするのは大丈夫」と快方に向かっているようで、一安心だ。バッティングセンターでは120キロを打っているとのことで、速球に強いのは頼もしい。

 「まだまだ時間はあるので、最後の年末の試合に向けて頑張っていきたい」と、しっかりと治して大一番に臨む。

《上本監督評》

 「肩を痛めていて、ろくに練習ができていないけど、ランナーコーチャーとか裏方仕事をテキパキやってくれている。今日も(大事をとって)出さないつもりだったけど、普段頑張っているから、最後1打席、立たせようと思った。でも、そこで結果を出したから、そういう持っている子なのかなと思う」

新野旬(写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者、作成:筆者)
新野旬(写真提供:阪神タイガースジュニア2022保護者、作成:筆者)

■今は見極め段階

 この日は死球や敵失で出塁すると積極的に足を使い、重盗を含む盗塁を5つ記録したが、上本監督によると「サインは出していない。好きにやって自分をアピールしてくれと言ってあるんで。いきたいときにいって、アピールしてくれと」と、個々に任せていたという。

 適材適所で起用していくため、16人のポテンシャルを見定めているところだ。よって、次戦も「まだ個人個人アピールしてもらって、こっちが力を見極めたいんで。どんどん好きにやって自分を出してくれればいい」と、“アピールタイム”は続く。

 今週末はメンバーの石田修選手と井澤選手が所属している多賀少年野球クラブとの練習試合が予定されている。各自がどんなアピールをするのか楽しみだ。

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メンバー紹介

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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