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ゴールデンウィークに「食フェス」が増えているワケ

坂口孝則コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家
円安で海外も難しいので国内で食フェスに行きましょうか(写真:アフロ)

2024年のゴールデンウィークを迎えています。

今年は2023年にくらべて「食」をテーマにしたイベントやフェスティバルが増えています。たとえばイベント紹介サイトで「食」をテーマにした催しを比較するとその増加に気づくでしょう。

ところで、なぜ今年(2024年)は「食」をテーマにしたイベントやフェスティバルが増加しているのでしょうか。次の要因のためです。

【マクロ要因】

・新型コロナ:五類に格下げされたのは2023年5月8日以降でした。とすれば、2024年はそこからはじめて迎える年です。人々を集めるイベントが増加するのは必然といえます。

・円安:当原稿執筆時点では$1=156円にまで、円安は進行しています。さすがにちょっと前まで$1=100円でしたので、割高感が増してしまい、国内旅行に回帰するのは必然でした。なお、海外旅行は前年比で大幅(1.7倍ほど)に伸びており、コロナ禍前の9割は回復しています。しかし、それでも、まだ完全には海外に行く動機が戻っていない感覚が見て取れます。

【なぜ食のフェスなのか】

・食費の特異性:複数のアンケートによると、微妙な感覚を理解できます。「ゴールデンウィークはせっかくだからどこかに行きたい」「しかし、節約も忘れてはならない」「たとえば交通費はマイカー移動などで節約したい」。しかしながら、どうせだからケチりたくない支出項目として「食事」があげられています。だから、食フェスっていうのはニーズにも合致しているんですね。

・アミューズメント施設の代替:現在、約2年ほど実質賃金のマイナスが続いています。そのような大衆からすると、できるだけ費用を抑えたいのも事実です。食フェスは、アミューズメント施設よりも安価に楽しめます。もちろん、安くはありませんが、アミューズメント施設に行くと、家族で何万円もかかりますからね。

・コミュニケーションというエンタメ:さらに食フェスは、アミューズメント施設のように乗り物を楽しむ、というよりも、食事を媒介に家族間・友人間で会話をしながら楽しむことにことに焦点が置かれています。これはコミュニケーションの促進に優位性があるはずです。

【供給側から】

・新たな収益源:いくつかの店舗に取材してみると、ゴールデンウィークで売上減になる収益の代替の意味があるようです。オフィス街など、4月末から5月上旬は閑散とします。それをフェスで巻き返しを図る。さらに魅力を感じてもらうことで、新たな顧客を掘り出すこともできます。

・新商品のマーケティング:また「食欲の秋」というくらい、秋の商戦に向けて、新商品等をテストマーケティングすることが可能です。フェスは旧来の自社顧客だけではなく、さまざまな層に触れ合えることができるのは魅力です。そこで生の声を拾うことができます。

・インバウンド:円安ですから、インバウンドで来日した外国人客にはかっこうのPR場所になります。日本の食文化は、すでにありながら、なかなか外国人旅行者にまとめてアピールができていません。まさに食フェスは絶好の場というわけです。

このように、ゴールデンウィークは食フェス、食イベントが増える必然性があります。

そうそう。私は今年は長めの連休を取れていません。かなりの方はそうではないでしょうか? とすれば近場で工夫する必然はあるはずで、その選択肢で食フェス・食イベントを勧めたいと思います。

コメンテーター。調達コンサル、サプライチェーン講師、講演家

テレビ・ラジオコメンテーター(レギュラーは日テレ「スッキリ!!」等)。大学卒業後、電機メーカー、自動車メーカーで調達・購買業務、原価企画に従事。その後、コンサルタントとしてサプライチェーン革新や小売業改革などに携わる。現在は未来調達研究所株式会社取締役。調達・購買業務コンサルタント、サプライチェーン学講師、講演家。製品原価・コスト分野の専門家。「ほんとうの調達・購買・資材理論」主宰。『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)、『調達力・購買力の基礎を身につける本』(日刊工業新聞社)、『牛丼一杯の儲けは9円』(幻冬舎新書)、『モチベーションで仕事はできない』(ベスト新書)など著書27作

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