産経記事に民族侮蔑表現 「読めば読むほど…」憎しみ募らせたコメント多数
【トピックス】産経新聞編集委員が「朝鮮人が国家体制にかかわらず、いかに統治能力を欠く致命的欠陥を持っているか」などと特定の民族を侮蔑するような表現を用いて論評したコラムがYahoo!ニュースに配信され、これに反応して多数の差別的コメントが投稿されていたことがわかった。同サイトを運営するヤフーがコメントの約2割以上を削除したが、依然として民族的憎悪を募らせたコメントも残されている。
【追記】
ヤフーが5月17日、産経の記事を削除(非表示処理)した。産経のニュースサイトでは削除されていない。日本報道検証機構が16日、改めてヤフー側に記事の取り扱いについて見解を求めていた。17日午後、ヤフーの自主的な判断で非表示処理にしたとの連絡があった。(2017/5/17 15:30)
問題の記事は「金正恩氏斬首後の『不統一国家』 度を超す自己主張+激高しやすい民族性+偏狭な民族&共産主義者が入り乱れ…」との見出しで、産経のニュースサイトに5月8日配信された。見出しを含め、「偏狭な」「激高しやすい」といった形容詞を伴って「民族」を侮蔑的に評価した表現が6箇所、朝鮮人は統治能力が欠如しているという趣旨の表現も2箇所あった。野口裕之編集委員の署名記事で、紙面には掲載されていない。
ヤフーコメント2割以上削除 多くが差別的表現か
日本報道検証機構が5月12日に調査した結果、この産経の記事に対してYahoo!に722件のコメント(返信を含む)が投稿されていたが、少なくとも2割超の150件以上が削除(非表示処理)されていたことがわかった。削除されたコメントの多くが「不快な内容のコメント(わいせつ、差別など)」などを禁じたヤフーのコメントガイドラインに違反する内容だったとみられる。
ただ、コメント欄には依然として「韓国の完全なる消滅を期待します」「南北ともに爆撃して根絶やしにしてほしい」といった朝鮮民族の存在を全否定するかのようなものが残されている。最も賛同が多かったコメントは「読めば読むほど、『半島ごと消えちゃえばいいのに』と思っちゃう」だった。産経の記事を読んだユーザーが民族憎悪の感情を募らせたことがうかがわれる。
ヤフーは、以前から差別を助長するコメントが相次いでいるとの指摘があり、2015年に対策強化を発表。24時間365日体制でコメントパトロールを行い、「ガイドライン違反の不適切コメントを削除する」「機械学習によって不適切なコメントを検知して非表示にする」といった対応に取り組んでいるという。今回も同様の対応をとっていると広報部は説明している。
産経の記者指針「人種・国籍で差別してはならない」とあるが
ただ、今回のように「激高しやすい民族性」「統治能力欠如」といった特定の民族を侮蔑する記事は、配信するメディアのガイドラインに抵触しないのか。この点についてもヤフー側に質問したが、「個別の配信記事に関する見解は差し控える」(広報部)との回答だった。
記事を執筆した野口氏は50代後半とみられ、1999年「北朝鮮がテポドン発射を準備」のスクープで日本新聞協会賞を受賞。ここ数年は紙面で署名記事が載ることは少なく、ニュースサイトにコラムが掲載されている。
産経新聞社は「記者指針」として、論評にあたっては人種や国籍によって差別してはならないと定めている。
また、2013年には、ヘイトスピーチ問題を取り上げた社説で「正当な批判と侮蔑は別だ」と題し、次のように説諭したこともあった。
当機構は、産経新聞社に対し、野口氏の記事に特定の民族に対する差別表現が含まれているのではないかと指摘して見解を求めたが、5月14日現在、回答はきていない。