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ベガルタ仙台レディースが3年連続の準決勝へ。来季1部での戦いを控え、ノジマステラが得た課題とは(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
今季最後のホーム戦を勝利で飾った仙台L(C)松原渓

皇后杯準々決勝は、12月17日に Pikaraスタジアム(香川県立丸亀競技場)と ユアテックスタジアム仙台で2試合ずつ行われた。

ここではユアテックスタジアム仙台で行われた、ベガルタ仙台レディース(なでしこリーグ1部) vs ノジマステラ神奈川相模原(なでしこリーグ2部)の一戦をお伝えする。

【見どころ】

ベガルタ仙台レディース(以下:仙台L)は昨季、最終順位を2位で終え、今季は優勝を目標に掲げたが、コンスタントに勝利を重ねることができず、4位でシーズンを終えた。

2連勝以上したことがなく、波に乗り切れなかったのが要因とも言えるが、開幕から連敗が一度もなく、堅実に勝ち点を積み重ねた。特に、ホーム(ユアテックスタジアム仙台)に強く、今季は7勝1分1敗と勝ち越している(アウェイでは3勝6敗)。高さ、スピード、パワーはなでしこリーグ随一を誇り、サイドアタックやカウンターからのダイナミックな攻撃が魅力。攻守を牽引するボランチの川村優理は、なでしこジャパンでも活躍している。

2回戦で神村学園高校に7-0、3回戦はスフィーダ世田谷FC(2部)に5-1で勝利。皇后杯は、この試合に勝てば3年連続で準決勝進出となる。千葉泰伸監督が今大会での退任を発表しており、初タイトルを獲得して花道を作りたいところだ。

一方、順々決勝に進出したノジマステラ神奈川相模原(以下:ノジマ)は唯一、なでしこリーグ2部からの勝ち上がりとなった、今季リーグ戦では無敗(14勝4分)で優勝し、チーム創設4年目で1部昇格。ショートパスを主体としたポゼッションを持ち味とし、47得点6失点と内容も充実。ともに11ゴールで得点女王(同率)に輝いた南野亜里沙とパオ・ミッシェルと言った攻撃陣の得点力はもちろん、今季加入したCBの高木ひかりは今年は、高倉麻子監督のもとでなでしこジャパンにコンスタントに選ばれており、ロングフィードやセットプレーからの得点などを武器に活躍を見せている。2回戦では昨年の大学チャンピオンである早稲田大学に3-2、3回戦は岡山湯郷Belle(1部)に3-1で勝利。来季に向け、なでしこリーグ1部のチームにその攻撃力がどこまで通用するのかに注目だ。

両チームのスタメンは以下のようになった。

【仙台L】

FW  9小野瞳     10浜田遥

MF 23中野真奈美       8嘉数飛鳥

MF   4岸川奈津希 6川村優理

DF 13佐々木繭 3市瀬菜々 26北原佳奈 5坂井優紀

GK   21ブリトニー・キャメロン

【ノジマ】

FW        11南野亜里沙

MF 7川島はるな   8田中陽子  3石田みなみ 

MF     10吉見夏稀  9尾山沙希 

DF  6平野優花 15長澤まどか 19高木ひかり 2和田奈央子

GK      1リチャード・ジェネヴィーヴ

【試合レポート】

12月にもかかわらず、試合放送時間に合わせる関係で19:00キックオフとなったこの一戦は、キックオフ時には2℃を切る寒さとなった。

立ち上がりは攻守にコンパクトな陣形でノジマがボール支配率を高め、GKも含めたテンポの良いボール回しで仙台Lのディフェンスを揺さぶりながらチャンスをうかがう。ボランチの尾山と吉見を起点に、2列目から複数の選手が飛び出す攻撃など、「らしさ」も見せた。しかし、高さのある仙台Lに対し、シンプルなクロスは通用せず、裏へのボールはセンターバックの北原と市瀬が鋭い予測で対応。ノジマは最後の局面で崩しきれない。仙台はスタメン11人の平均身長が166.9cm、一方、ノジマは159.2cmと、7.7cmもの差があった。

仙台Lは、球際での予測や体の入れ方でも上回り、ボランチの川村と岸川がボールキープからピッチを広く使って展開。ホームスタジアムの利点を活かし、濡れたピッチでもパススピードと正確な足元の技術で、ノジマのプレッシャーをかいくぐった。両サイドの中野と嘉数のスピードを活かした得意のサイド攻撃からチャンスを作り、10分を過ぎると仙台Lのペースになった。

待望の先制点が生まれたのは23分。左サイドから中野が放ったシュートがノジマのDFに当たり、ゴール前で右にこぼれると、前線で浜田がいち早く反応。ゴールを背にして反転しながら右足ボレーで豪快に決め、仙台Lが先制に成功する。

その後もピッチを広く使った仙台Lが試合を優位に進めた。

同点に追いつきたいノジマは63分、スピードのあるパオ・ミッシェルを左サイドに投入してリズムの変化を試みた。ノジマの高い位置からのプレッシャーがハマり、ショートカウンターになる場面もあったが、ノジマは中盤のトラップミスやパスミスなどでチャンスをモノにできない時間が続くと、仙台Lは後半38分に右コーナーキックから、センターバックの北原が合わせて2−0と試合を決定付けた。

終わってみればシュート数21本(ノジマは5本)と仙台Lが内容・結果ともに圧倒した勝利で、3年連続の準決勝進出を果たした。

2部に比べると、1部のチームは球際での強さだけでなく、パススピードや判断スピードが速くなる分、選手間の思考の連動や、正確な技術も求められる。ノジマは来季の1部での戦いに向け、多くの課題を得る敗戦となった。

試合の詳細はこちら

日テレ・ベレーザ、INAC神戸レオネッサ、アルビレックス新潟レディース、ベガルタ仙台レディースの4チームが準決勝に進出。

ベスト4は昨年と同じ顔ぶれとなり、23日に味の素フィールド西が丘で準決勝が行われ、25日にフクダ電子アリーナで決勝戦が行われる。

(2)【監督・選手コメント(ベガルタ仙台レディース)】

(3)【監督・選手コメント(ノジマステラ神奈川相模原)】

に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のWEリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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