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11月19日は「世界トイレの日」。トイレと健康、人権、教育、貧困の深い関係

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
世界水の日2022のポスター

トイレが健康、人権、教育、貧困に与える影響

11月19日は国連が定めた「世界トイレの日」。

参考:国連「世界トイレの日」ページ

国連によると現在、世界には「安全に管理された衛生施設(トイレ)」を使うことができない人が36億人いる。

「安全に管理された衛生施設(トイレ)」の条件は、「排泄物が他のものと接触しない」「別の場所に運ばれて安全かつ衛生的に処理できる設備を備えている」「他の世帯と共有していない」など。

では、こうした衛生設備がないことで何が起きているか。

水と衛生の支援を専門にするNGOウォーターエイドによると、毎年28万9000人の子供たちが下痢で命を落としている。トイレのない地域にすむ女性や少女は暗くなるのを待って用を足す場所を探す。そのため襲われるおそれがある。

また、安全かつ尊厳をもって月経に対応できなくなる。トイレのある学校は世界的に見ると3校に2校の割合なので、月経が始まる年齢になると退学する少女も多い。衛生設備がないことが衛生や教育にも影響を与え、慢性的な貧困へと結びついている。

目標6の「安全な水とトイレを世界中に」は、水と衛生にまつわる課題を解決するために掲げられたものだが、トイレがあることが、格差の是正や食料問題の解消、教育機会の確保などにもつながっているというわけだ。

達成が難しいSDGs(持続可能な開発目標)6

だが、国連が公表したThe Sustainable Development Goals Report 2021には、厳しい現状が記されている。

The-Sustainable-Development-Goals-Report-2021
The-Sustainable-Development-Goals-Report-2021

●「安全に管理された衛生施設(トイレ)」を利用している世界人口の割合は、2015年の47.1%から2020年には54%に増加した。

●2020年には36億人が「安全に管理された衛生施設(トイレ)」を利用できず、そのうちの17億人は基本的な衛生設備さえ利用できない。

●このうち野外排泄する人は4億9400万人で、2015年の7億3900万人からは減少した。2030年までに野外排泄をなくすという目標は達成しつつある。

●2030年までにすべての人が「安全に管理された衛生施設(トイレ)」を利用できるという目標を達成するには、現在の4倍のスピードで敷設する必要がある。

Making the invisible visible

「世界トイレの日」の今年のテーマは「見えないものを見えるように(Making the invisible visible)」。

これは地域の水循環への示唆を与えるテーマだ。

衛生設備が整っていないと、排泄物が川や土壌に広がり、足元の水資源を汚染してしまう。しかし、地下水は地下を流れているため、この問題は見えにくい。

地下水は、飲料水、生活用水、農業、産業などに利用されるほか、生態系を支えている。適切に設置され、安全に管理された衛生設備に接続されたトイレは、し尿を収集、処理、処分し、し尿が地下水に拡散するのを防ぐのに役立っている。

 水が地球を循環する資源。目の前に安全な水と管理された衛生施設があるだけでは不十分だ。それらは水循環のなかに置かれた小さな施設に過ぎない。水がどこから流れてきて、どこへ流れていくのかを考えたうえでのアクションが必要だ。

#WorldToiletDay

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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