Yahoo!ニュース

「欽ちゃん80歳の挑戦」に学ぶ、人生100年時代の楽しみ方

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:欽ちゃん80歳の挑戦 YouTubeチャンネル)

人生100年時代と言われていますが、皆さんは80歳になったときに自分が何をやっているか想像できますか?

2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳といわれていますから、80歳というといわゆる「終活」と呼ばれるような「人生の終わりのための活動」を想像される方も多いと思います。

そんな中、今年80歳を迎えた欽ちゃんこと萩本欽一さんが、新しい挑戦を始めようとされているのをご存じでしょうか。

新宿の劇場ではじまった80歳の挑戦

タイトルはそのものズバリ「欽ちゃん、80歳の挑戦」

9月から新宿歌舞伎町にある劇場vatiosで、その挑戦ははじまりました。

もちろん、日本には80代で現役の芸人さんや役者さんはたくさんおられますから、80歳で活動を続けること自体は今や珍しいことではありません。

ただ、欽ちゃんの今回の挑戦で印象的なのは、80歳にして、あえて今までやったことのないことに挑戦しようとされている姿勢です。

欽ちゃんと言えば、欽どんや欽どこ、仮装大賞など、様々なバラエティ番組の主演や司会を務めていた印象が強い方が多いと思いますので、今回もそうした劇団形式や司会を担当するのかと思いきや、なんと今回の「欽ちゃん80歳の挑戦」では、あえて1人でのお笑いに挑戦するんだとか。

もともと欽ちゃんの芸能活動は「コント55号」というお笑いコンビでの活躍からはじまっていますから、欽ちゃんとしても原点回帰ということなのかもしれません。

ただ、この80歳の挑戦は、本当にさまざまな点からチャレンジング。

皆さんの刺激にもなると思いますので、具体的な「欽ちゃん80歳の挑戦」のすごいところを3つご紹介しましょう。

■実験段階から公開してしまう

■ネットの双方向に貪欲に取り組む

■AIロボットとのコントにも挑戦

1つずつご紹介します。

■実験段階から公開してしまう

まず、個人的に今回の挑戦を見ていて、つくづく刺激を受けているのが、欽ちゃんが今回の挑戦を自ら「実験」だと公言し、あえて自分の恥ずかしいところも失敗もお客さんにさらけだしている点です。

欽ちゃんと言えば、視聴率100%男と呼ばれるほどの昭和のテレビの象徴的なレジェンドの1人。

テレビ番組では完成された姿しか私たちは見れませんし、さぞかしまわりの人が全て完璧にお膳立てされて、完璧な自分だけをお客さんに見せるのになれているんじゃないかと思い込んでしまうわけですが。

今回のライブも、コロナで自宅に閉じこもっていた状態からの「リハビリ」だと話されながら、ステージでふらついた時には素直にそれを告白し、YouTubeのコメント欄で水を飲んでと指摘されたら素直に飲んで、と、素の自分をさらけだしてくれる姿には本当に刺激を受けます。

ある意味、最近注目されている「プロセスエコノミー」的なアプローチを自然体で取られている印象です。

■ネットの双方向に貪欲に取り組む

筆者は、欽ちゃんと鶴間政行さん、日テレの土屋さんがクラブハウスで毎週開催されているお部屋で質問させていただいたことをきっかけに、この数ヶ月欽ちゃんのクラブハウス部屋に毎回参加させて頂いていますが、興味深いのは欽ちゃんのネットに対する積極的な姿勢です。

参考:お笑い第一世代の欽ちゃんが、今もネットで活動を続ける理由に学ぶ真の芸人魂

今回のライブにしても、劇場での様子をYouTubeでオンライン配信するだけでなく、YouTubeの視聴者に対してお題を出して、コメントを拾っていくという双方向型のライブ企画。

欽ちゃん曰く「この番組はコメントで8割つくっていく」つもりなんだそうです。

失礼を恐れずに正確にいうと、欽ちゃん本人のネットリテラシーは決して高いわけではありません。

クラブハウスにしても「ラジオみたいなもんだから」と土屋さんに説明されて始めたそうで、細かい操作を理解されているわけではないようですし。

今でもアイコンの画像は設定されていない状態です。

YouTubeのコメントの拾い方も、舞台袖にいる鶴間さんがA4の紙に視聴者のコメントを手書きで書き出して手渡しするというアナログ方式。

ただ、逆にそこまでしてでも、ネットを通じた新しい双方向のライブの形に挑戦されようという姿勢が、かえって際立つ印象もあります。

■AIロボットとのコントにも挑戦

さらに23日に開催された2回目のライブで非常に印象的だったのがAIロボット「エリカ」さんとの掛け合い。

「エリカ」さんは、日テレに2018年に入社したアンドロイドアナウンサーなんですが。

なんでも、日テレさんの社内でも使い途を失ってしまって、ここ最近は仕事がなく倉庫にこもっていたんだとか。

参考:アンドロイドアナウンサーは喋らない(企画募集記事)

それが、今回欽ちゃんという素人いじりの名手が、相方として掛け合いを行うことによって、アンドロイドアナウンサーの新しい可能性を見せてくれることになるわけです。

実際の雰囲気は上記のYouTubeの動画で、是非ご覧になって頂ければと思いますが、アンドロイドアナウンサーならではの独特のタイミングのズレや、発言の不自然さが、欽ちゃんのツッコミやリアクションによって、「間」や「天然ボケ」としての新しい可能性に変わっていくのが分かると思います。

欽ちゃんとしては、この企画は企業のスポンサーを探すのではなく、欽ちゃん自身が様々な企業や個人の逆スポンサーや応援をするというのがテーマでもあるんだとか。

ある意味、アンドロイドアナウンサーのエリカさんも、応援される1人になっているとも言えそうです。

■80歳から新しい挑戦ができる時代

「欽ちゃん80歳の挑戦」を見ていて痛感するのは、新しいことに挑戦するのに遅すぎるなんてことは決してないということです。

おそらくこの記事を読んでいる方のほとんどが、欽ちゃんよりは年下の方でしょう。

筆者自身も歳を重ねるにつれて、なんとなく新しいことをはじめるのは億劫に感じ始めていましたが、欽ちゃんの貪欲に新しいことに挑戦する姿勢にあらためて背筋が伸びる気がしています。

人生100年時代ということを真剣に考えると、80歳でもあと20年。

50歳ならまだ50年、人生が残っていることになります。

是非皆さんも、「欽ちゃん80歳の挑戦」からエネルギーをもらって下さい。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

徳力基彦の最近の記事