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台風10号が熱帯低気圧との相互作用で一旦西に振ってから北東進で接近 接近前に暖湿気の流入で局地的豪雨

饒村曜気象予報士
台風10号の藤原の効果(8月25日21時の地上天気図に加筆)

台風10号が北上

 日本の南海上の強い台風10号は、海面水温が29度以上という暖かい海域を北西進しています。

 台風が発達する目安の海面水温が27度ですから、台風10号は今後も発達を続け、種子島の南海上まで北上してくる8月27日(火)には、中心気圧950ヘクトパスカル、最大風速45メートル、最大瞬間風速60メートルの非常に強い台風になると予想されています(図1)。

図1 台風10号の進路予報(8月26日0時)と海面水温
図1 台風10号の進路予報(8月26日0時)と海面水温

 台風に関する情報は最新のものをお使いください

 そして、台風10号は、27日頃から向きを次第に東に変え、西日本から東日本に接近する見込みですので、今週は西日本から東日本にかけて、暴風や高波、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください。

 ただ、台風10号が接近するタイミングが、新しい情報程遅れています。

 これは、沖縄の南にある熱帯低気圧との相互作用(藤原の効果)によって、西へ振り回されたためと考えられます(タイトル画像)。

 気象庁は3時間ごとに暴風域に入る確率を予報しています。

 確率の値そのものは、予報期間が長くなれば小さくなりますが、値が一番大きくなる時間帯は、台風接近の時間帯になります。

 例えば、8月24日21時の予報では、高知県の高知中央において、暴風域に入る確率が一番高いのは、8月28日(水)未明(0時から3時)の58パーセントであることから、高知県に台風が最も接近するのは、8月28日未明という予報でした。

 ところが、8月25日9時の予報では、高知県に最も接近するのは28日の昼まえ(9時から12時)か昼過ぎ(12時から15時)と遅くなっています(図2)。

図2 高知中央が暴風域に入る確率の予報の推移
図2 高知中央が暴風域に入る確率の予報の推移

 そして、8月25日21時の予報では、29日未明とさらに遅くなっています。

 沖縄の南の熱帯低気圧は、次第に弱まって消滅する見込みですので、台風10号は、27日以降は向きを東寄りに変えると思われますが、予報が難しい台風には変わりがありません。

 最新の気象情報に注意してください。

暑くて湿った空気の流入

 西日本から東日本の広い範囲では、台風10号周辺の暑くて湿った空気が北上しています。

 湿った空気は、乾いた空気に比べ、同じ気温でも熱中症にかかりやすくなります。

 気象庁と環境省が共同で、全国59地域(都府県毎、北海道と鹿児島県・沖縄県は細分)を対象に、前日夕方と当日朝の1日2回、「熱中症警戒アラート」を発表しています。

 8月26日の前日予報では、関東を中心に全国18地域(約31パーセント)に対して「熱中症警戒アラート」が発表されています(図3)。

図3 8月26日の熱中症警戒アラートの発表状況(前日17時発表)
図3 8月26日の熱中症警戒アラートの発表状況(前日17時発表)

 今年は、記録的な高温となった昨年を、4割程度上回るペースで熱中症警戒アラートが発表されており、8月25日で1415地域(のべ)となっています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)
図4 熱中症警戒アラートの発表回数(令和4年・令和5年と令和6年の比較)

 観測史上一番暑かったのは、昨年、令和5年(2023年)ですが、その昨年の熱中症警戒アラートの発表件数は、1232地点でしたので、現時点でも昨年より15パーセントも上回っています。

 つまり、今年は、記録的な高温となった昨年以上に熱中症になりやすい、湿った暑さが続いているのです。

 今年から熱中症特別警戒アラートの運用が始まり、発表時には徹底的な熱中症対策をとることが必要となります。

 現在運用中の熱中症警戒アラート(対象地域内のどこかで暑さ指数33以上)と違い、熱中症警戒特別アラートは都道府県単位で、前日の14時に都道府県内全ての暑さ指数が35以上と予測される場合に発表されます。

 この発表基準は、これまでに経験したことがない暑さで、記録的な猛暑となった昨年も発表基準に達していません。地球温暖化等で予想される今後の暑さに対する備えです。

 現在までの暑さでは、熱中症特別警戒アラートが発表されていませんが、発表に至らないとはいえ、熱中症になりやすい危険な暑さにはかわりがありません。

 熱中症特別警戒アラートで求められる徹底的な熱中症対策への準備が必要です。

 また、熱中症になりやすい湿度の高い暑さになると同時に、大気が不安定となって積乱雲が発達しやすくなっています。夜間も含めて熱中症に警戒すると同時に、天気の急変や落雷、突風、急な強い雨に注意してください。

 8月25日午後に、記録的短時間大雨情報が、富山県、新潟県、岩手県、香川県、栃木県で発表となりましたが、このときの大雨が降っている範囲は局地的でした(図5)。

【8月25日の記録的短時間大雨情報】
13時40分 富山県 上市町伊折で111ミリ
13時50分 富山県 上市町東種で131ミリ、上市町付近で120ミリ以上、
魚津市付近で約100ミリ、滑川市付近で約100ミリ
16時00分 新潟県 小千谷市付近で約110ミリ
17時10分 岩手県 遠野市西部付近で約100ミリ
18時00分 香川県 三豊市付近で約90ミリ
23時20分 栃木県 塩谷町付近で約110ミリ

図5 香川県三豊市で記録的短時間大雨情報が発表されたときの降雨量の分布(8月25日18時の1時間降水量)
図5 香川県三豊市で記録的短時間大雨情報が発表されたときの降雨量の分布(8月25日18時の1時間降水量)

 大気の不安定による積乱雲発達は局地的ですので、すぐ近くで落雷や局地的豪雨があっても気がつかないことがあります。ネット等を活用し、最新の気象情報の入手に努めてください。

 また、気象庁では、8月26日0時26分に「顕著な大雨に関する情報」を発表し、栃木県では線状降水帯が発生し、非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているとして、最大限の警戒を呼びかけています。

 命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まることは、栃木県だけでなく、他府県でも起こる可能性があります。

今週は、台風10号に厳重警戒ですが、その前に、熱中症と大雨に対しても警戒が必要です。

タイトル画像の出典:気象庁ホームページの図に筆者加筆。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図3の出典:環境省ホームページ。

図4の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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