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小学校英語を廃止すべしというパブコメを提出

寺沢拓敬言語社会学者

文科省の新学習指導要領に対するパブリックコメントを提出した。

(自分でいうのもおこがましいが)個人的な意見というだけではなく公共性もある内容だと思うので、こちらに転載する。

ポイントは、小学校英語の廃止は、消極的な撤退などではなく積極的な改革なのだという点である。

パブリックコメント本文

小学校英語教育学(学問および学者の状況)をよく知る研究者としてコメントをします。

次のような教育改革が必要です。

1. 小学校外国語活動の必修を廃止する。

2. 小学校5・6年に予定されている外国語科を廃止する。

3. 空いたリソースを中学校・高等学校の英語教育の振興に配分する。

以上は「改革をやめるべし」という消極的提案ではありません。副作用の大きい施策から効果の大きい施策に転換せよという積極的な改革プランです。

以下、根拠です。

(A)効果なし

現在の公立小学校の状況(教育予算、教員養成・研修、時間割等)を前提にしたとき、外国語活動・外国語科の必修化が効果を生むと想定可能な根拠はない。そのような研究結果を出している研究者は私が知る限り、一人もいない。

(B)副作用

外国語が小学校教員にとってまったく新しい教育内容である以上、対応には非常に大きな労力を必要とする。きちんと対応するためには、従来の業務を大幅に軽減する必要があるが、そのような予算措置は現在の教育財政を考慮すればまず不可能である。こうした現状で強引に導入すると、「教育全体の質」「外国語指導の質」「教員の就労環境」のうちいずれかあるいはすべてが犠牲になる。前述(A)のように、効果が見込めないにもかかわらず、このような大きな犠牲を払う改革は合理的ではない。

(C)改革予算の合理的配分を

日本の中学・高校の英語科は既に非常に長い蓄積を持っている。このインフラに投資したほうが合理的である。具体的には、小学校英語廃止によって得られたリソースを中学・高校の英語教育改革に配分し、より大きな成果を得ることを目指すべきである。

参考情報

なお、筆者は、Yahoo! ニュース(個人)上で小学校英語に関する詳細な批判を展開している。併せて参照されたい。

言語社会学者

関西学院大学社会学部准教授。博士(学術)。言語(とくに英語)に関する人々の行動・態度や教育制度について、統計や史料を駆使して研究している。著書に、『小学校英語のジレンマ』(岩波新書、2020年)、『「日本人」と英語の社会学』(研究社、2015年)、『「なんで英語やるの?」の戦後史』(研究社、2014年)などがある。

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