ういてまて こどもの日に我が子に教えたい せめてお話しだけでもいいので
ゴールデンウイーク(GW)連休の4日午前、佐賀県の池に未就学の男の子2人が転落し、その後、死亡しました。連休の残りの日々、そして夏に向かっての時期、大事な我が子を水難事故で失わないように、こどもの日にできることがあります。
GW連休中に繰り返される子供の水難事故
今年も、佐賀県から悲しい事故の一報が入りました。
毎年、GWの時期になると、天候が夏のようになり、場所によっては暑くて、ついつい水辺に近づきたくなります。そのため、休みに入っている子供も大人も水難事故に見舞われる確率が増えて、この時期に集中的に発生件数が増えてしまいます。
【参考】釣りと水辺の遊びに、安全のひと工夫 マスクの連休は救命胴衣が効果絶大
30年くらい前までは、子供と、助けようとした大人が一緒に命を落とす事故が連休中に多く発生していました。15年くらい前からは、先に溺れた子供が助かり、助けようとした親などの大人が亡くなるという事故に変わってきました。そして、このところは2014年に新潟県上越市で発生した子供3人と大人2人が同時に亡くなるという悲惨な事故を最後に、あまり大きな事故を聞かなくなりました。
この間に何があったかというと、全国の小学校などで地元の消防職員などが先生役となり、夏休み前に子供たちを対象として、ういてまて教室を普及しました。今では全国のほぼすべてといっていいほどの学校に広がっていて、子供たちは溺れたら背浮きをして呼吸を確保して、救助を待てるようになったのです。
この動きは幼稚園や保育園にも広がり、「未就学児でも、浮くことができる」と驚きをもって迎えられています。顔を水につけるのが怖くてたまらない子供でも、浮くことはできるという、これまでの思い込みだけでは考えられなかったような成果がでてきています。
未就学児に浮くことができるのか?
カバー写真は、3歳児が背浮きをしている様子です。服を着て、運動靴をはいて、少し練習すれば10分間でも浮いていることができます。このお子さんがすぐにできるようになったのは、動画視聴のおかげです。子供たちが浮いている様子を動画で何回か見せてあげて、その気になったところで実際に背浮きしてみたら、すぐに浮くことができました。
要するにジタバタさえしなければ、誰にでもこのような格好で浮くことができるのですが、「布団の上で寝るような感じ」と子供の頭に前もってすり込んでおくことが重要です。動画で無くても、イラストやカバー写真のような実際の写真でもかまいません。水に落ちたら「こうやって浮くんだよ」と日頃から教えておいてほしいと思います。
ちなみに小学生ですが、背浮きで救助されている子供たちの中で、「テレビで、こうやって浮くと教えていた」と、救助後に教えてくれたお子さんが複数人います。全部の子供が知識だけで助かるとは言いませんが、少なくとも知識で助かった子供が実在します。
背浮きのこつは
動画1をご覧ください。背浮きでは体の力を抜いて、空を見るように少しアゴを上げるようにします。両腕と両脚は自然に広げます。力を使って極端な大の字を作る必要はありません。息は肺にためて、呼吸するときだけ、急いで「はいて・すって」をします。
少々の波や流れでは背浮きが崩れることはありません。陸上からは「ういてまて」と大きな声で呼びかけてください。浮いている本人は何も音がしないと不安になります。そして何かを探そうと顔を動かすとバランスを崩して沈む恐れがあります。
背浮きになったら、「救助が来るまで頑張って浮いているんだ」と教えてあげてください。
動画1 海での背浮きの様子。専門の救助員を複数人、海中に配置し、本人と保護者の同意のもとで撮影されています(水難学会提供)
やはり、保護者が寄り添って遊んでほしい
ちょこちょこあちこち遊び歩くのが子供。そこを親として敢えてやっておきたいのが、子供に寄り添って遊ぶこと。
釣りなどのように、水に落ちる可能性が極めて高い遊びでは、救命胴衣を親子で着用してほしいと思います。そして、目を離さないではなくて、寄り添って遊ぶことが重要です。
釣りをするわけではなく、池のある公園でなんとなく遊ぶとか、バーベキューで河原に来ていて、楽しく食事するとか、こういうときには頭の中から水難事故の4文字が消えてしまっています。だからこそ、危険性の高低にかかわらず、どこに行ってしまうかわからないのが子供だと考えて、寄り添って遊んでほしいのです。
近くにいればいいということで、子供の近くでスマートホンをいじっていたりしていないでしょうか。あるいは大人同士でおしゃべりをしていないでしょうか。子供の近くにいたとしても、これらは全部、目を離したことになります。
別の例です。これから泳ぐために着替えをしようというときに、(おおよそ決まっているのですが)5歳くらいの男の子が「着替えたから先に行っていい?」と言って先に水辺に行き、そのまますぐに溺れた事故を筆者は何件も扱いました。これも保護者が目を離した瞬間にあたります。監視員がいるところでは、最後の砦で監視員が助けて命には別状なく済むのですが、誰も見ていない水辺では、保護者の寄り添いが命を守る最後の砦となります。
まとめ
明日5月5日はこどもの日。悲しい事故に遭わないように、ぜひ親子で水の安全について話し合ってみてはいかがでしょうか。