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河川の氾濫 夜の避難はきわめて危険 台風10号の洪水から命を守る #専門家のまとめ

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
道路が冠水すると家の周囲のトラップが見えない(画像制作:Yahoo!JAPAN)

 台風10号に伴う大雨が続き、各地にて河川氾濫や内水氾濫が報告されています。これから夜間に向かい、避難がきわめて危険な時間軸に入りました。車での避難、徒歩での避難は暗い中では急な危険に対応できません。夜間避難の基本は建物の2階以上にあがります。(20時10分一部改編)

ココがポイント

▼「家族の声が聞き取れないほど猛烈な雨が降り、下水がボコボコと音を立てて水があふれてきた。本当にあっという間だった。」あっという間に浸水した。

下水から「ボコボコ」 あっという間に家浸水 氾濫の岐阜・大垣(毎日新聞 8/31(土) 19:28配信)

▼夜間避難の怖さ、2019年台風19号が接近した夜、車で避難所に向かっていた人が乗った乗用車が、氾濫した川の水に押し流された。ドラレコ映像付き。

「これ、死ぬわ」車、流され転落 脱出までの4分間をドラレコが記録(毎日新聞 2019/10/17(土) 11:42更新)

▼水深20センチならなんとか開けられる車のドア。60センチでは運転席側から全く開かなくなる。

水深60cmではドアに144kgの水圧…豪雨時の『アンダーパスの危険性』車が水没し犠牲者出た事故が何度も(東海テレビ 8/31(土) 11:02配信)

▼どうしても徒歩避難をするのであれば、棒や傘を手に持ち急な深みがないか探りながら歩く。深さは膝下までにとどめる。

岐阜県を流れる杭瀬川 池田町付近で氾濫発生(tenki.jp 8/31(土) 12:19配信)

エキスパートの補足・見解

 これから夜に入ります。各地の洪水にて最も怖いのは夜間の移動。道路冠水が始まったら、基本は建物の2階以上に避難です。平屋だったり、車両内にいた場合には、緊急的に一度外に出て徒歩で高い場所や建物に向かって避難します。

 しかし、暗くて危険が最後まで分からない様子を衝撃的に示しているのが、上から2番目の記事中のドラレコ映像。これはぜひ確認してください。

 以下は科学的根拠に基づいた記事で、各メディアが記事を書くときに参考にする、いわゆる元記事です。

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水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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