海外でも国内でも重要なニュースが立て続けに起きている年の瀬
フーテン老人世直し録(412)
極月某日
このところ海外でも国内でもフーテンを驚かせる動きが相次いでいるため頭の中の焦点が定まらない。
例えば10月にイスタンブールで起きたカショギ氏暗殺以降、米国のトランプ大統領はかつてなく追い詰められているとブログに書いたが、そのトランプ大統領が12月19日にシリアから米軍は撤退すると発表、それに反対のマティス国防長官が辞任することになった。
シリアからの米軍撤退はトルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領を喜ばせ、ISとの戦争で米国に協力してきたクルド人勢力を見捨てることになる。それは敵対するイスラエルとイランとで言えば、イスラエルに厳しくイランに有利に作用する。
シリアからの米軍撤退はトランプの選挙公約ではあるが、しかしISとの戦争が終わったとは言えない時点での撤退は、カショギ氏暗殺を巡りトランプがエルドアンと裏取引をしたのではないかとの疑惑を抱かせる。
カショギ氏暗殺でエルドアンがサウジアラビアのムハンマド皇太子関与をこれ以上追及しない見返りに、トランプはトルコによるクルド攻撃を認めたのではないかと疑われているのである。トランプの決断には共和党からも批判が上がった。
それはムハンマド皇太子と特別の関係にあるトランプの娘婿クシュナー氏を守るためだと思われ、またクシュナー氏が「ロシア疑惑」にも絡んでいることから、捜査次第ではトランプへの風当たりがさらに強まる可能性がある。
一方、国際社会との協調を重視してきたマティス長官の辞任は、より一層トランプが主張する「世界の警察官からの完全撤退」に米国をシフトさせ、米国は各国に自前の防衛力を要求、それぞれの国に米国製兵器を買わせて金儲けする路線を採ることになる。
日本にとっては日米安保体制の見直しにつながる話だ。フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相が欧州軍創設を主張するように、米国の軍事力に頼らずに独自の軍隊を持つ体制構築が必要になる。
そうした状況の中で、ロシアのプーチン大統領は20日に恒例の年末会見を行った。そして北方領土を巡る日ロ交渉について、日本に北方領土を引き渡した場合、米軍施設を作らせない権利を日本が持っているのかと疑義を呈した。
例としてプーチンは沖縄の米軍基地問題を指摘する。「知事が基地拡大に反対しているが何もできない。人々が撤去を求めているのに基地は強化される。皆が反対しているのに計画は進んでいる」と語った。
これは戦後の日本が抱える本質への鋭い指摘である。しかし沖縄を除くほとんどの日本人がこの本質を知らない。日本は平和憲法を護り、軍隊を持たずに米軍に守って貰うのが一番だと思い、日本に本当の意味での主権がないことを知らない。
日米安保条約がある以上、米軍は日本の領土のどこにでも基地を作れる。また基地を作らなくとも米軍の艦船はどこの港も自由に使える。そこから出撃することも可能だ。プーチンはその状況を変えない限り日ロ平和条約は結べないと言ったのである。
俄然フーテンは北方領土交渉に興味がわいてきた。河野外務大臣は一切の質問を受け付けないが、この交渉によって戦後の日本をまともにするチャンスが訪れるのである。すべての日本人はこの交渉を契機に、なぜ日米安保条約が結ばれたのか、誰が安保条約を書いたのか、それがどのような経緯を経て今日に至ったのかを知る必要がある。
そうすれば、沖縄が置かれた状況や、日本の領土、領海、領空がどうなっているかを日本人は知り、同時にそれがなぜこれまで知らされてこなかったのかも分かるようになる。
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