AIが水道管の破損確率を推計。経済活動が活発で人口集中する都市部ほど高い。リスクの高い区域もはっきり
法定耐用年数の1.5倍を経過した老朽化管路が年々増加
老朽化した水道管の漏水・破損事故は毎年2万件を超えている。昨年末には、千葉県富津市で水道管が壊れ、約5000戸が断水した。40年以上前に設置された地下5メートルから7メートルの深い地点にある送水管が破損したため工事は難航した。
破損が大きな事故につながるケースもある。2018年7月4日には東京都北区で老朽化した水道管が破裂し、地面が陥没した。
全国的に、水道管の老朽化が進んでいる。水道は高度経済成長期を中心に整備され、法廷耐用年数40年を経過した管路(経年化管路)は15%あり、法廷耐用年数の1.5倍を経過した管路(老朽化管路)も年々増えている。管路更新率は、管路延長全体の0.677%/年(水道統計2018)に止まっている。
老朽化した水道管は漏水につながるし、地震発生時などに破損しやすい。2018年6月18日に発生した大阪府北部地震の際は、水道管が破損して水が吹き上げ、21万人が一時的に水を使えなくなった。
また、漏水の放置は水道事業経営にマイナスになる。コストをかけて集水、浄水、送水した水道水が、顧客に届く前に失われるからだ。
どこから更新していくかの優先順位付けができていない
更新が滞っている原因には、財源不足、人材不足などもあるが、管路の状況が把握できていない、どこから更新していくかの優先順位付けができていない、という点が大きい。
また、一概に古くなっているから壊れやすいというわけでもない。水道管の置かれている状況(管路周辺の環境、管路の上にある道路の交通量など)によっても漏水や破損の確率は変わる。
この現状を正確に把握し、解決の糸口を探るため、FRACTA(フラクタ)は全国自治体の水道管の破損確率を独自の手法で推計した。
同社は、AI(人工知能)/機械学習を使って水道・ガスなど各種インフラの劣化状況を予測するソフトウェアサービスを提供している。これまで米英日3か国、約100事業体において、約20万km、 約30万件の破損漏水事故を学習、日本では約3万km、1万件以上の破損事故のパターンを学習済みだ。今回の推計では、地理情報、経済・社会に関する情報、学習済みの破損事故のパターンを用いて全国の自治体における破損確率を試算した。
管路更新の優先順位が明らかに
これによると、全国1660の自治体の水道管の破損確率の平均値は1.86%。
試算した自治体の約8割は、破損確率0.00%〜2.61%に該当し、全体として見ると、破損事故の確率は低いことがわかる。
一方で、破損確率が高い上位2割の自治体では、破損確率は2.61%〜28.26%。
これらのエリアは経済・産業の活性度が高く人口が集中する地域で、全人口の約51%にあたる約6520万人が居住する。破損事故が生じた場合の社会的な影響は極めて大きい。
さらに重要なのは、同じ自治体の中でも、破損確率の高い区域とそうでない区域には大きな差異があることがわかった。破損確率の高い区域が、全体の確率を上げている。
つまり、高リスク区域を見極め、重点的に更新することが大切で、これによって破損確率は大幅に下がる。
現在は古くなった管路から順番に更新している自治体が多いが、これを見ると優先順位付けが変わる。場合によっては、古い水道管でもそのまま使えることがわかる。自治体を悩ます管路更新コストの削減につながる。