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カジノ申請期間は2021年7月30日まで

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:ロイター/アフロ)

さて本日、観光庁よりカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の認定申請を2021年1月4日から7月30日まで受け付ける案が公表されました。以下共同通信より転載。

カジノ申請、21年1月に開始案 政府公表、自治体準備に配慮

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191119-00000111-kyodonews-bus_all

政府は19日、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の認定申請を2021年1月4日から7月30日まで受け付ける案を公表した。

共同通信の記事内では「申請する都道府県、政令指定都市などの準備にかかる時間に配慮」とのコメントが添えられていますが、実態としてはそれぞれの自治体の立場でその「受け止め」は変わるのではないでしょうか。総論としては、

アゲ:横浜、東京

サゲ:大阪、千葉

となるでしょうか。まず横浜ですが、そもそも認定申請の期間を2021年7月末としたのは、2021年8月末に予定されている横浜市長選への配慮がそこに見られます。同年7月末に〆切が来るのであれば、選挙公示期間を含めても横浜市長選はIR導入の是非に絡みにくくなる、と言った所でしょう。一方で、横浜市長選直前をデッドラインとして、なぜギリギリまで認定申請期間を遅らせたかったかというと、それこそがまさに共同通信がいうところの「申請する都道府県、政令指定都市などの準備にかかる時間に配慮」。最大の焦点となるのが東京の立ち回りであり、2021年7月末の〆切という設定は「今から準備すれば東京もギリで間に合う」期間の設定となります。一方で、一部メディアで報じられている「東京は来年の都知事選以降の決断」だとすると、完全に〆切には間に合いません。国としては、小池知事に次の都知事選までの期間で「やる/やらない」の決断を迫っている形となります。

【参考】小池都知事、来年知事選後にIR誘致方針表明か 「稼ぐ東京」計画も

https://www.sankei.com/life/news/191113/lif1911130051-n1.html

一方で、今回の申請期間の設定によって最も被害を被ることとなったのが大阪です。大阪は2025年の大阪万博前のIR開業を長らく目指し、2020年中の認定申請を国に対して要望してきました。国としては、その大阪の要望を横に置いた上で「大阪以外の自治体の準備時間に配慮」した形。2021年7月末までの認定申請となると、実際の国からの指定が行われるのはどんなに頑張っても2021年末、普通に考えると2022年にまで食い込むのが妥当となり、2025年までのIR開業を謳ってきた大阪にとっては、いよいよ「当初計画の変更」が求められる段階にまで至ったと言えるでしょう。実は、国側は今回の認定申請期間の(案)の発表よりも更に前となる今年9月の段階で、日本版IRの開発計画において全ての施設開発が終わる前に「一部早期開業を認める」とする方針を発表しています。国側としては、この「一部早期開業」を容認したことで、万博前開業にこだわる大阪には十分配慮を行った、というスタンスなのであろうと思われます。

そして、今回の申請期間の発表によって地味に難しい決断を迫られる状況となったのが、関東圏で同じくIR誘致の検討を行っている千葉市です。実は千葉市では、2021年4月に千葉県知事、同年6月に千葉市長の任期がそれぞれ切れ、首長選挙が予定されています。現在、国から示された申請期間の設定だと、県知事選、市長選がそれぞれIR導入の是非に絡む形になってしまい、特に現職の首長は将来の選挙戦も睨みながらIR導入の是非を検討する必要が出て来るという、かなり政治的に「体力」が必要な決断を求められる状況となります。

その他、現在、IR導入検討を巡っては、北海道、愛知、和歌山、長崎なども手を上げてる状況であり、それぞれの自治体にとって悲喜こもごもの申請期間(案)の発表となったのではないかな、と思います。引き続き、全国の動向に注視してゆきたいと思います。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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