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既に蔓延する「オンラインカジノ」

木曽崇国際カジノ研究所・所長

東北財務局の職員が、勤務中にスマートフォンでオンラインカジノを繰り返し利用していた事で「懲戒処分→依願退職」という公職者お決まりの必殺コンボが炸裂するという事件が起こりました。以下、秋田魁新報からの転載。

勤務中にオンラインカジノ174回、秋田財務事務所職員

http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20150630n&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

東北財務局は30日、勤務時間中に私用のスマートフォンでオンラインカジノを繰り返し利用し、国家公務員法の職務専念義務に違反したとして、秋田財務事務所(秋田市)に勤務する20代男性職員を同日付で減給10分の1(6カ月)の懲戒処分にしたと発表した。男性は同日付で依願退職した。

東北財務局によると、男性は昨年7月から今年2月にかけ、主に事務所内で自分のスマホを使い、オンラインカジノを174回利用していた。同僚が不審に思い、上司が本人に事情を聴いたところ、事実を認めた。

我が国のカジノ合法化論議においては、反対派は「カジノが出来ると依存症が蔓延する」などという主張をしがちなのですが、実態としては今の日本ではスマフォでもPCでも、情報端末を利用すればたちどころに海外サーバーに拠点を置くオンラインカジノに誰でもアクセスできてしまう状態にあり、正直、そういう属性を持っている人というのは、既に我が国に存在する公営賭博や富くじ、それに類するパチンコ等のサービスも含めて、その多くが既に「ハマって」しまっているんですよね。ここにも、依存症問題を「カジノが出来たら…」とか「カジノが出来なければ…」とかの言説に結び付けて語ってしまう事の無意味さが、如実に表れているといえます。

いつも申し上げている事ですが、今必要なのは「カジノ合法化する/しない」とは全く別次元の、ギャンブル依存症に対する対策の充実なのです。

ちなみに、このような海外サーバーに拠点を置くオンラインカジノに関してですが、東京都の運営するくらし情報サイトである「東京くらしweb」において、7月1日付で注意喚起が始まっています。以下、東京くらしwebからの転載。

オンラインカジノを紹介する仕事で高収入!?

https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/trouble/trouble43-onlinecasino-150701.html

カジノへの参加は違法行為です

カジノに参加することは刑法で定める「賭博罪」に該当します。  「海外のサイトであれば法に触れない」「オリンピックに向けてカジノが合法化される」と説明されることもあるようですが、海外のサイトでも国内で参加していれば罪に問われる可能性があります。 また、自分が参加しなくても、違法・不当な行為を勧誘することで自分が加害者となり、自分が紹介した人から損害賠償請求を受ける可能性もあります。安易な気持ちで勧誘した結果、大切な友人・人間関係を失うことになりかねません。

※質問答弁情報(衆議院)

海外事業者との契約にはリスクがあります

オンラインカジノ勧誘  海外事業者の場合は、安心して取引できる事業者かどうかの判断が難しく、いったんトラブルになってしまうと、交渉に日本語が使えなかったり、法律や商習慣の違いなどから解決が非常に困難になることが想定されます。

甘い言葉に惑わされないで

会員登録をすることは事業者と「契約」を結ぶことになります。契約する時は事業者情報(所在地、連絡先等)、支払う会費の内容、手数料を受け取る仕組み、解約の条件等の契約内容をきちんと理解していることが必要です。  話題のキーワードを用いながら新しいビジネスモデルと説明されたり、「簡単に儲かる」、「会費はすぐに回収できる」と言われたりすると、気持ちが煽られその場で契約してしまうかもしれません。しかし、確実に利益が得られる保証はありません。勧誘の言葉を鵜呑みにせず、契約するかどうか慎重に判断しましょう。特に、金銭を支払う場合には安易に即決することは避けましょう。

特にオンライン上では、未だ「オンラインカジノはグレイゾーン/有効な法規制がない」などという表現の下で、特定の海外サービスを紹介し、そこへ顧客を誘導するような事業を行っているものが沢山存在します。特にその中でも悪質なものは、「カジノの総合情報ポータル」などと謳いながら、現在わが国で進行しているカジノ合法化に関するニュース等を一方で扱い、オンラインに関してはそのような「グレイゾーン」論を広めてゆく。なまじ国内のカジノ合法化論に関する情報内容は間違ってないだけに、思わずオンライン側に関する情報に関しても信じてしまいそうになるんですね。

しかし、上記で東京都が注意喚起を行っている通り、海外のサイトでも国内に設置される情報端末を通じてそれに参加していれば罪に問われる可能性があります。一部の人間が言う「有効な法規制がない」なんてのは大嘘で、立派な刑法犯です。また、自分が参加しなくても、違法・不当な行為を勧誘することで自分が加害者となり、自分が紹介した人から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

一方で、オンラインカジノを推奨する側の人間は、上記のような公式の注意喚起に関しても「あくまで『可能性がある』としかいってない」という水掛け論争を吹っかけようとする展開は容易に想像できるワケですが、そういう方々は上記東京都も参照している平成25年11月1日に内閣総理大臣名で公表された以下の答弁書もご参照下さい。

衆議院議員階猛君提出賭博罪及び富くじ罪に関する質問に対する答弁書

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b185017.htm

犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個々に判断すべき事柄であることから、政府として、お答えすることは差し控えるが、一般論としては、賭博行為の一部が日本国内において行われた場合、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条の賭博罪が成立することがあるものと考えられ、また、賭博場開張行為の一部が日本国内において行われた場合、同法第百八十六条第二項の賭博開張図利罪が成立することがあるものと考えられる。

(注:太字は筆者)

「可能性がある」とされているのは上記下線部に示された「犯罪の成否は個々に判断すべき事柄である」を受けての表現であって、答弁書そのものは「一般論としては、賭博罪が成立することがあるものと考えられ、また賭博開帳図利罪が成立することがある」と明示的に答えています。

実は、この平成25年11月にやりとりが行われた質問主意書および政府答弁書は、私と友人の渡邊弁護士(@日弁連・民事介入暴力対策委員)が衆議院議員の階猛氏の協力を得ながら、まさに今回、東京都が注意喚起として参照したような「使い方」を想定しながら仕掛けたものです。当時の状況に関しては、以下のリンク先をご参照頂ければ幸いですが、実は国内のカジノ合法化論議を行っている界隈にも、このような「オンラインカジノはグレイゾーン」などという主張を未だ展開しているようなコンプラ意識の低い方々が入り込んでいます。特にカジノ業界に関連する皆様に置かれましては、このような方々とは一切お付き合いをしないことをお勧め致したいところです。

【参照】ファイナルアンサー: オンライン賭博は違法である

http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/8134166.html

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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