奇妙な柄のムクゲの害虫ラミーカミキリも外来種。背中の模様は燕尾服を着たちょっと顔色の悪い新郎。
夏から秋にかけてきれいな大輪の花を咲かせるムクゲ。その緑の葉にとまるかわいい柄のカミキリ虫は、横暴な外来昆虫第4弾のラミーカミキリだ。和やかな情景につい心を許して、優しい視線を注ぎたくなる。しかし、そのまま放っておくと、何年か後にはムクゲの木が穴だらけの無残な姿になって枯れてしまうのだ。
ラミーカミキリの背中の模様は、まるで燕尾服を着た新郎や高級レストランのウェイターの姿。ちょっと顔色が悪いのは気になるが、インスタ映えしそうなこの模様が、ラミーカミキリの人気の一因だ。
ラミーカミキリの名は、主な食草のラミーから来ている。やつらは、幕末から明治にかけて、繊維原料になるラミーという草に紛れ込んで日本進出を果たしたらしい。南蛮貿易や黒船来航に便乗した侵入者だったのかもしれない。ラミーはいわゆる「麻」の主原料の1つ。しかしラミーの害虫としてラミーカミキリが敵視されることはあまりない。生命力が強い多年草のラミーにとって、小さなカミキリなど取るに足らない存在だったからだ。多少食害されたとしても、繊維を取る妨げにはならない。
公園や野山で見られるラミーカミキリの主な餌は、ラミーの野生種のカラムシという迷惑な雑草だ。つまり、雑草を駆除するラミーカミキリは益虫とも言えるのだ。
しかし、いつの頃からか、公園や庭のムクゲの被害が目立つようになった。ムクゲと同じアオイ科で、さらに大きく華やかな花を咲かせるフヨウでもラミーカミキリの姿が見られるようになった。成虫が葉を食べるだけならいいが、幼虫が茎の中を食べ進むので、いずれは木が枯れる。これは困ったことだ。
カラムシとムクゲは全く違う植物なのに、なぜラミーカミキリがムクゲを好むようになったのか、理解に苦しむ。カラムシ駆除に集中していれば、愛される存在でいられるのに、なぜムクゲも襲うのか。昆虫記者が良く通う公園のラミーカミキリに至っては、カラムシもムクゲも生えているのに、ムクゲばかりを食べている。こんなことでは、園芸家の目の敵にされて、一斉駆除されかねない。早く悔い改めて、カラムシ駆除に精を出してもらいたいものだ。