真冬は日陰者の季節=ヒカゲチョウの幼虫探しはまさに日陰者の作業
昆虫記者は日の当たらない(世間に注目されない)仕事だ。そんな日陰者のような昆虫記者の作業のうちでも、冬の笹の葉めくりは特に寂しげに見える。
笹の葉をめくって探す相手は、ヒカゲチョウの幼虫だ。ヒカゲチョウの成虫は初夏から晩秋にかけて2、3回発生するので、幼虫は夏や秋にも見つけることができる。
ではなぜ冬に探すのか。答えは簡単。冬は虫が少なくなり、昆虫記者が暇になるからだ。春から秋までは、色々な虫が次々に発生するので忙しく、ヒカゲチョウの幼虫なんて探している暇はないのである。
しかし冬になると、虫の姿は急激に減る。そんな中で、真冬でも比較的簡単に見つかるのが、ヒカゲチョウの越冬幼虫なのだ。
ヒカゲチョウの幼虫の食痕(食べ跡)は、きれいな台形になることが多い。雑で乱暴な感じの食痕だったら、タケノホソクロバという蛾の幼虫(毒虫なので注意)のものである可能性が高い。
新鮮そうな葉に新しい感じのきれいな食痕があれば、葉裏にヒカゲチョウの幼虫が隠れている可能性がある。しかしそれはあくまで「可能性」だ。その「可能性」賭けて、何十枚も笹の葉をめくってようやく、幼虫を1匹見つけられればラッキーな方だ。
ヒカゲチョウの幼虫は「猫顔」のイモムシとして知られている。冬の寂しい森でそんな猫顔に出会うと心が癒され、ついクロースアップの写真を撮りたくなる。
ヒカゲチョウの幼虫には、胴体がほぼ緑一色のものと、オシャレな斑紋が左右に3~5個ずつ並ぶものと、二つのタイプがある。もちろんオシャレなタイプの方が人気が高いのだが、このタイプは数が少ない。
なので、このオシャレなイモムシを冬に見つけたら超ラッキーということになる。冬の笹めくりはおみくじのようなもので、万が一タケノホソクロバの幼虫が出れば大凶(蛹越冬なので12月以降この幼虫に当たる確率は低い)、斑紋タイプのヒカゲチョウ幼虫がいれば大吉だ。
(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)