「商品廃棄1万円まで本部負担します」食品ロスより機会ロスが大事なコンビニ
あるコンビニエンスストア本部が全国の店舗に配信した案内文(A4用紙3ページ)を入手した。2018年6月1日(金)から24日(日)までの24日間に納品もしくは仕込みをした商品に関し、社員との打合せ後に増やして発生した不良品につき、売価1万円まで本部が負担するという(筆者注:文書の2ページ目にある「具体的な実行の手順と会計処理について」に、「発注打合せして発生した不良品について、『商品廃棄』業務にて登録して下さい」とあるので、不良品とは商品廃棄を指すと読み取れる)。
筆者は2017年にコンビニ取材をした記事を書いた。その後、取材で別の店舗オーナーにお会いしたところ、この記事の企業に勤める社員が「あんな記事、痛くもかゆくもない」と話したとのことだった。
「機会ロスをなくす」とは、「販売機会のロスをなくす」こと。売り逃がしのないよう、商品が無くならないよう、万端に準備しておく、という意味と考えられる。
店のオーナーと社員が打合せをする。打合せ前に比べて、打合せ後に発注数を増やした場合、そのために発生した不良品について、1万円まで本部が費用を負担する。
社員と発注の打合せをして発生した不良品に関しては、「商品廃棄」業務に登録する。
農林水産省はコンビニエンスストアに対し食品廃棄物の発生抑制目標値を設定
農林水産省は、コンビニエンスストアを含む食品関連事業者に対し、食品廃棄物の発生抑制目標値を設定している。
コンビニエンスストアは「売上高100万円あたり44.1kg」という、食品廃棄の発生抑制目標値が掲げられている。
持続可能な社会に向けて2030年までに小売レベルの食品廃棄を半分に
2015年9月、国連サミットで採択されたSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)に基づき、2030年までに、世界の小売・消費レベルにおける食品廃棄物は半減(50%減)という数値目標が立てられている。
これを受けて、つい先日、政府(環境省)が初めて数値目標を発表した。2030年までに家庭の食品ロスを半減するという内容だ。
コンビニ業界も変革しつつある
コンビニ業界も、各社さまざまな取り組みを始めている。セブン-イレブン・ジャパンは、2017年8月、店舗改装時に発生する在庫商品の一部をフードバンクに寄付すると発表した(流通ニュース、2017年8月23日付)。
ファミリーマートは、一部店舗で深夜営業をやめる実証実験を行い、平成28年度食品関連事業者研修会では「食品ロス削減に向けた取組み事例」について発表した。
ローソンは、大手コンビニ5社の中でも「経済産業省コンビニ電子タグ1000億枚宣言」のトップランナーとして、食品ロス削減にも繋がる電子タグについて精力的に取り組んでいる。
環境の専門家「コンビニ会計は世界の潮流の真逆」
SDGsのシンポジウムでお会いした環境分野の専門家が、「(見切り販売するより)捨てる方が本部が儲かるコンビニ会計は、環境負荷を考慮したマテリアルフローコスト会計の真逆」と話していた。
マテリアルフローコスト会計(MFCA)は、経済だけでなく、製造工程で発生するロスにも着目した、環境への負荷を考慮に入れた会計だ。持続可能な社会のために、環境と経済の両立を果たすのが目的だ。企業にとっては、環境配慮が果たせるだけでなく、大幅なコスト低減にも繋がる。
環境問題への取り組みが盛んなドイツで開発され、経済産業省も導入事例を発表している。厳密には製造工程で発生した無駄なコストを指すが、環境への負荷を最小限に抑えるなら、生産から消費まで、お客様の手に渡るまでにかけられたコストも考慮して然るべきだろう。
「たくさん食品を仕入れて、余ったら捨てなさい。本部が金を出すから」という指示を、いつまで続けるのだろう。
参考資料:
販売期限切れの弁当はどうなる?コンビニオーナー座談会でわかった「寄付は絶対しない」の理由とは
経済産業省 コンビニ電子タグ1000億枚宣言は実現可能か プロジェクトトップランナーのローソンに聞く