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なぜ走る?「それができるから」... 5万人が5万通りの走る理由を掲げ市内を走り抜いたNYCマラソン

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:ロイター/アフロ)

6日に行われたニューヨークシティマラソン。

1970年に始まった歴史ある国際マラソン大会だ。初年度は男子55人(女子0人)からスタートし、2019年には過去最高の5万4118人(男子3万1182人、女子2万2936人)が出場した。

今年も世界125ヵ国と地域から5万人のランナーが出場した。

スタテンアイランド(地図下)をスタートし、ゴールはセントラルパーク。市内全5区を走るコース。(出典:nyrr.org 筆者がスクリーンショットを作成)
スタテンアイランド(地図下)をスタートし、ゴールはセントラルパーク。市内全5区を走るコース。(出典:nyrr.org 筆者がスクリーンショットを作成)

コースの高低差。(出典:nyrr.org 筆者がスクリーンショットを作成)
コースの高低差。(出典:nyrr.org 筆者がスクリーンショットを作成)

完走者はこれまで通算120万人を超え、2019年の出場者5万4118人のうち、完走したのは5万3639人と、どの国際マラソンよりも多かった(今年の正式な数字はこれから*)。

  • 翌日の発表によると、今年の完走者は4万7839人(男子2万6608人、女子2万1186人、ノンバイナリー45人)

5万人いれば、5万通りのストーリーがある。

この日完走した一般ランナーに、出場した感想や走る理由を聞いた。

「走ることができるから走る」

カサンドラさん。(c)Kasumi Abe
カサンドラさん。(c)Kasumi Abe

「人々とハイファイブしたり、沿道からの声援を受けたりして、楽しいレースだった」と、バージニア州から参加したカサンドラ・オールダムさん。ニューヨーク大会は初めてだが、フルマラソン出場はなんと40回目! 今日のタイムは4時間20分で、自己ベストは3時間42分を出した今年9月のベルリン大会だ。

なぜ走るのか?との問いに「走ることができるから走るのです」とカサンドラさん。20歳の時に大事故に遭い左足首の関節を失い「もう2度と走ることができない」と診断された。10年間車椅子生活を送り、そこから復活して今ここにいる。「走ることは、2度とできないと言われたことでも可能であるということを私に教えてくれるものです」。2024年の東京マラソン参加も目指すそうだ。

この2週間で2マラソンを完走

アントニオさん。(c)Kasumi Abe
アントニオさん。(c)Kasumi Abe

メキシコ出身のアントニオ・メディーナさん。この日のタイムは3時間58分。自己ベストは2015年の3時間21分。「今日ももっと早くゴールできたけど、暖かかったのでペース配分に気をつけました」。マラソンが大好きで、現在の居住地ニューヨークの大会だけでも12回出場。つい2週間前にもアトランティックシティマラソンに出場したばかりだと言う。「自分でもクレイジーな挑戦というのはわかっているよ」と苦笑い。よって今日のレースはあまり期待していなかったらしいが「最後の2、3マイルが大変だったけど楽しく走ることができた。今とても幸せな気持ちです」。

走る理由について「自分自身への挑戦のため。生きているって感じるし、健康になれるし、周りの人に良い刺激を与えられるものでもある」。

東京から参戦!「また走りたい」

岡本さん。(c)Kasumi Abe
岡本さん。(c)Kasumi Abe

「蒸し暑かったです。3日前に到着し、時差ボケが抜けなくてコンディションも最悪でした」と苦笑いするのは、東京から出場した岡本晃一さん。フルマラソンの挑戦は4回目で、この日は3時間50分弱で走り抜いた。

「沿道の皆さんの温かい声援がずっと途切れなくて、走りながら途中手を振り返したりしていたら、立ち止まることができなくなり、休むことなく完走できました」。楽しすぎて、もう一度走りたいと早速意欲を見せる。「身体は走りたくないけど心が走りたいと言っています!」と最高の笑顔を見せた。

5週間前にロンドンマラソン

ルースさん。(c)Kasumi Abe
ルースさん。(c)Kasumi Abe

アイルランド出身でロンドン在住のルース・ダーヴァンさんもなんと、5週間前にロンドンマラソンに出場したばかり。「とても蒸し暑かった」今日のタイムは、3時間39分。自身の中で悪い成績と分析したが、前の大会から十分な時間が空いておらず、楽しかったのでそれで良しと笑う。

なぜそこまでマラソンが好きなのか?「私は挑戦が好きだから」と即答。「今はもうクタクタな状態だけど、おそらく明日になるとまた別のマラソン大会に申し込むでしょう!」。

(Text and most photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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