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ナ・リーグのDH導入で「投手による最多本塁打」は不滅の記録に!? それとも大谷翔平が塗り替える!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)Jul 27, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今年から、ナ・リーグもDHを導入し、メジャーリーグは「ユニバーサルDH」となる。

 DHは、ア・リーグが1973年に採用した。以来、特例として両リーグともDHありの2020年を除き、ア・リーグはDHあり、ナ・リーグはDHなし、が続いていた。1997年にスタートしたインターリーグ――日本プロ野球の交流戦――は、ナ・リーグのホーム・ゲームがDHなしだった。ワールドシリーズも同様だ。

 投手による通算本塁打の最多記録は、ウェス・フェレルが保持している。1927~41年に193勝を挙げたフェレルは、投手として37本のホームランを打った(その他に代打本塁打が1本)。1931年に記録した9本塁打も、投手としてのシーズン最多だ。ちなみに、この年のフェレルは、ア・リーグ2位の22勝を挙げた(「ベーブ・ルースと大谷翔平の間に「シーズン二桁勝利&二桁本塁打」に迫った選手はいたのか」)。

 フェレルだけでなく、通算本塁打のトップ15に名を連ねる投手のほとんどは、引退してから、少なくとも40年以上が経っている。24本塁打のジョン・クラークソンと21本塁打のジャック・スティベッツは、19世紀の選手だ。スティベッツは、投手以外に、外野手として8本塁打、一塁手と代打として各3本塁打を記録した。

筆者作成
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 そのなかで、カルロス・ザンブラーノマディソン・バムガーナー(現アリゾナ・ダイヤモンドバックス)、「ビッグZ」と「マッド・バム」は、21世紀の投手だ。ザンブラーノは、2001年から2012年まで、シカゴ・カブスなどで投げた。バムガーナーは、2009年にメジャーデビュー。2019年のオフにFAとなり、サンフランシスコ・ジャイアンツからDバックスへ移った。バムガーナーに次ぐ現役投手は、10本塁打のアダム・ウェインライト(セントルイス・カーディナルス)だ。現在はFAのザック・グレインキーも、9本のホームランを打っている。

 今後は、DHを解除しない限り、投手に打順が回ってくることはない。投手が打つ機会をなくすことには、怪我を防ぐという意味があるので、将来、ルールを見直して再びDHなしにするとは、考えにくい。

 現時点において、投手として打席に立つ機会がありそうなのは、ロサンゼルス・エンジェルスの2人、大谷翔平マイケル・ロレンゼンくらいだ。

 大谷は、通算93本塁打のうち、投手として3本を記録している。いずれも、昨年に打った。ロレンゼンは、通算7本塁打中4本がそう。2016年に1本、2018年に2本、2019年に1本だ。

 昨年の大谷は、23登板中20試合で打席に立った。19試合はDHを解除し、1試合はナ・リーグのホームだったのでDHがなかった。投手としての打撃成績は、20試合の計65打席で、打率.214(56打数12安打)と出塁率.323、3本塁打、OPS.787だ。ホームランは18.7打数に1本なので、このペースの場合、1931年のフェレルに並ぶ9本塁打には、160打数以上が必要となる。投手以外としてのペース、11.2打数/本でも、100打数以上でないと、9本塁打には届かない。また、ここから、投手として1シーズンに5本ずつのホームランを打ったとしても、フェレルの通算37本塁打に並ぶ、あるいは追い越すのは、2028年だ。

 なお、ベーブ・ルースが投手として打ったホームランは、通算714本中14本だった。

「ユニバーサルDH」が大谷に及ぼす影響については、こちらで書いた。

「ナ・リーグのDH導入が大谷翔平にもたらす「プラス」は、打席の増加だけじゃない」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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