上本博紀監督が率いる「阪神タイガースジュニア2022」は日替わりヒーローが大活躍
■ちび虎のサヨナラ男・池本大地
“虎のサヨナラ男”襲名だ。
11月19日のオリックス・バファローズジュニア戦の第1試合。阪神タイガースジュニアの池本大地選手はサヨナラ打でチームを勝利に導いた。
両チーム得点が入らず、スコアレスで迎えた六回裏。2死一、三塁の場面で打席に立った池本選手は「甘い球が来たら初球からいこうと思っていました」と、しっかりと振り抜いた。打球はみごと左中間を真っ二つ!「気持ちよかった」とサヨナラ勝利に笑顔が弾けた。
実は池本選手、10月30日の中日ドラゴンズジュニア戦でも2死二塁からサヨナラヒットを放っている。だから「この試合も『僕が決めてやる』っていう気持ちで打てました」と、より集中力が高まったようだ。サヨナラの場面が回ってくる強運と、そこで決める実力を兼ね備えている。
バファローズジュニア戦の第2試合でも、同点から勝ち越しとなるライト線へのタイムリー打を放った。こちらは手応えはなかったとはいうものの、外野手の打球処理もしっかり見ながら快足を飛ばし、三塁を陥れた。そして、さらに悪送球の間にホームまで生還した。
タイガースジュニアとしての練習がスタートしたころだった。「上本(博紀)監督から、僕のバッティングは当てるようにしてる感じがあるから、しっかりタメと割れを作ってフルスイングしたらいいと言われました」と明かす。
「ほかのメンバーと比べてあんまり飛距離が出ていなかったのがわかっていたから、なんでやろうと思っていたけど、上本監督の話を聞いて納得しました。それで、教わったとおりにしようと、意識して練習しています」。
上本監督が身振り手振りで懸命に教えてくれるのに応え、その日も一人黙々と素振りを繰り返していたが、その後もずっと継続し、家でも毎日練習しているという。
庭にあるネットに向かって、置きティーで130球は打つ。「当てにいかないように、なるべく引っ張らないように、センターからライト方向を意識しています」と、コツコツと真面目に取り組む。
自チームではおもにピッチャーとショートだが、ジュニアではサードを守る。「だいぶ慣れました」と、この日も2試合併せて7度の守備機会で鮮やかなゴロさばきを見せた。「ボールとの間をしっかりとって捕ることは、常に意識しています」と、安定感が増すばかりだ。
捕球だけでなく、判断よく素早くセカンドに送球したり、ランナーをしっかりと目で牽制するなど、板についてきている。
野球を始めたのは「たぶん4歳か5歳のとき」で、「お父さんが草野球チームで野球やっているのをお母さんと見に行っていて、お父さんがかっこいいと思ったから僕もやりたいと思いました」と、始めたきっかけを語る。小学3年のときにチームに入ったが、お父さんはいつも写真を撮って応援してくれている。
今後も「バッティングではなるべく出塁できるようにして、守備ではその周辺に飛んできたゴロはすべてさばけるようにしたいです」と闘志を燃やす。
■自立心旺盛なムードメーカー・井澤佑馬
バファローズ戦の第1試合では、井澤佑馬選手が先発し、「自分ひとりで投げるのではなく、あとにもいいピッチャーがたくさんいるので、つなげようという気持ちで投げました」と5回を散発の2安打、無失点と好投を見せた。
試合前のブルペンでは「制球がちょっと乱れていたんです」と明かす井澤選手。そこでマウンドに上がるときに気持ちを切り替え、制球を意識して投げたのだという。
「こういうすごくレベルの高いチームで、先発ピッチャーという役目をさせていただいているので、頑張ろうって考えました」。
初めての先発抜擢を意気に感じ、それに応えようとしたのだというが、小学生にしてそのメンタルコントロール力は素晴らしい。この日も投げている間に気持ちもより上がってきて、抑えるごとに乗っていけたと振り返る。
制球よく、緩急も使え、「左バッターのインコースがよかったです」と満足げな笑顔を見せるが、自己採点は「100点中、まぁ80点ですね」と満点は出せないという。足りない20点は「いいボールが決まったと思ったら『ボール』って言われたのが何回かあって、そのとき態度に出してしまったんで…」と反省点に挙げる。
幼稚園のころから両親とする野球の遊びが好きで、小学1年の4月にチームに入った。2年の途中まで高知で過ごし、そのあと岡山に移った。転機が訪れたのは5年のときだ。
「多賀少年野球クラブ(滋賀県のチーム)が岡山招待っていう大会に来てて見に行ったら、多賀の監督に『一回、練習に来てみんか』って言われて、練習に行ったんです」。
練習に参加し、自らの意思で「ここで野球をやりたい」と思った。といっても岡山と滋賀、通える距離ではない。そこで大人たちが話し合い、なんとチームメイトの家に“ホームステイ”をさせてもらえることになった。6年になった今年の4月から親元を離れて滋賀に住み、大好きな野球に打ち込んでいる。
「淋しさ?けっこうありました。でも毎朝電話しているし、毎週土日は来てくれるから。会えるのはやっぱり嬉しいです」。
毎週末、ご両親が岡山と滋賀を往復するのは子どものためだが、見ているとご両親も楽しんでいるのが伝わってくる。
今後は「ピッチャーでもバッティングでも走塁でもバントでも守備でもベンチでもランコーでも、チームの役に立てるように頑張りたいです!」と元気に誓う井澤選手。いつも明るく人懐っこく、チームのムードメーカーという役目も担っている。
■ちび虎のスピードスター・亀岡壮佑
この日の第2試合で大活躍だったのが亀岡壮佑選手だ。
四球、死球、中前打、右前打と4打席すべてで出塁し、マルチ安打に自慢の快足で盗塁も2コ決めた。
「家での練習が活かせたなと思っています」と誇らしげな表情の亀岡選手。家の中でトスマシンを使い、毎晩、カラーボールを打っているとか。何球ほど打っているのか訊くと、ここで邪魔が入った。
井澤佑馬選手「7球です。ラッキーセブンなので(笑)」
原田侑季選手「11球です。僕の背番号なので(笑)」
インタビューをしていると必ず乱入してくるのがこの二人だが、最高のキャラだ。
実際は「200から300くらい」という。かなりの数を打っているようだ。そしてその際、「上本監督に言われたことを意識しています。トップをしっかり作って、そこから打ちにいく。引っ張りのイメージで打っています」と、教えを実践している。
塁に出ると、常に次の塁を狙う意識でいるという。「ピッチャーの足を見たり、クセを見つけたり」と意欲的だ。ピッチャーの足を上げる動作がポイントだという。「僕の打席のときにいつも走ってくれるんで、おかげで打点が挙げられる」と、後ろを打つ駒勇佑選手もニコニコ顔だ。
6~7歳のころ、お父さんと公園などで野球を始め、小学3年生でチームに入った。当時は自身の足の速さには気づいていなかったようで、5年時に6年生の試合についていき、「そのとき一番速かった」と初めて自覚した。以来、試合でも積極的に盗塁を仕掛けるようになった。
バッティングで目標にする選手はいるのかと尋ねたときのことだ。「今、真似しているのは東幸蔵くん」と答え、そこにいた全員が「誰?」と一斉にツッコんだ。
「ソフトバンクの打順2番の子おったやん」。なんと、福岡ソフトバンクホークスジュニアの選手だという。先日対戦したとき目に留まり、「東くんの力感の抜け方とか真似してるんです」と語る。小学生ながら、対戦相手のことをしっかり見て、そこから盗もうとするのだ。さすがジュニアである。
「最近はヒットも打ててきたんで、今後も打てるようにしたいです。そのために、家での練習も続けていきたいです」。
タイガースジュニアには打って走れる頼もしいスピードスターがいる。
■キャプテンと副キャプテン
さて、阪神タイガースジュニアのキャプテン、副キャプテンが決定しているので、それぞれの意気込みを紹介しよう。
小松蓮 キャプテン
「上本監督に呼ばれて、『守備のときとか、みんなの中心にいて周りが見えているから。冷静やけん、キャプテンでいいか』と言われたので『はい』と返事しました。
自分のチームでもキャプテンをやっています。大変なのは、試合のときの声かけとか挨拶とか…緊張するので。
ジュニアでもチームの中心となって、みんなに声をかけて、楽しく勝っていきたいと思います」。
殿垣内大祐 副キャプテン
「キャプテンだけに頼らず、副キャプテンとしてもしっかりチームを引っ張っていきたいと思います。
みんなでチームを支えるという気持ちがたいせつだと思います」。
井澤佑馬 副キャプテン
「タイガース初優勝を目標に、チームの雰囲気を盛り上げ、キャプテンを全力で支えることが副キャプテンの仕事です。キャプテンが困っているときに助けてあげたい。そして、上本監督を胴上げします!」
練習試合を重ねるごとに声がよく出て、結束力が高まってきている「阪神タイガースジュニア2022」。
本大会まで約1ヶ月。今週末には憧れの甲子園球場での練習を控えている。
ここからさらにチーム力を上げていく。
(表記のない写真の撮影は阪神タイガースジュニア2022保護者)
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