多賀少年野球クラブに10人で挑んだ、上本博紀監督率いる「阪神タイガースジュニア2022」
■初めての得点
「阪神タイガースジュニア2022」の実戦2試合目の相手は、滋賀県の多賀少年野球クラブ。多賀に所属する石田修選手と井澤佑馬選手は自チームで出場し、なおかつこの日は諸事情で4人が欠席したため、タイガースジュニアは10人で試合に臨んだ。
多賀|000 000 2=2
阪神|000 000 2=2
(*七回はタイブレークで無死一、二塁から)
前試合を0-0で終えたタイガースジュニアにとって、実戦2戦目で待望の初得点が入った。
0-0で六回を終わり、タイブレークに入ってまず初失点。しかしその裏、同点に追いついた。引き分けには終わったが、初めて得点を刻むことができ、次戦に向けて弾みがついた。
■初打点を挙げたのは原田侑季
七回のタイブレーク、1死一、二塁となったところで打席に入ったのは原田侑季選手だ。外角の球を技ありでレフト頭上に運んで初タイムリーとした。その後、相手のエラーが続き、四球で出塁した駒勇佑選手も還ってきて同点となった。
「ストライクだけに絞って、甘い球がきたので打った。外がきたので、体は流れたけどうまく拾えた。けっこう芯でとらえてたんで、(外野を)越えるかなと思った」と、チーム初打点を挙げられたことに昂揚した表情を見せた原田選手は、「嬉しいです」と声を弾ませた。
今後に向けて訊くと、「これからもバッティングでもピッチングでも…あ、ピッチングじゃない(笑)、守備でもチームに貢献できるいいプレーをしたい」と言い間違えるところに、興奮ぶりが伝わってきた。
■奮闘した投手陣
この日も投手陣は踏ん張った。先発・浅居煌星選手はいきなり先頭の石田選手に長打を許すも、併殺などで無失点にしのいだ。その後もランナーは許しながらも、前試合と同じく牽制で刺すなど、要所をしっかり抑えて4回を52球で0封した。バックも堅守で盛り立てた。
上本博紀監督も「初回から飛ばしていって、結果的にゼロで抑えたから、先発として役割は十分に果たしてくれた。あとは細かいところの課題」と及第点を与え、更なる上積みを期待していた。
讃えたのは2番手・新開柚葉選手のピッチングだ。ストライク先行でグイグイ押し、安定したピッチングで五回の1イニングを11球でピシャリ!
「すごくよかった。元々ああいう強気っていうか、そういうところがいいと思って(セレクションで)獲った。だんだん雰囲気にも慣れてきて、自分が出せるようになった。今日もそういうところが見えたので、やっぱりいいなと思った」。
その目に狂いはなかった。本来の姿を見せた新開選手に目を細めた。
亀井壮佑選手にとってはジュニアでの初マウンドだった。「投げると思ってなくて、朝、急に投げるって言われてビックリしたけど、抑えられてよかった」と振り返る。
六回、ぽんぽんと2つのアウトを取ったあと、2者連続で四球を出し、「ランナーが出て力が入った」そうだが、相手の4番打者を一ゴロに仕留めて無失点。
そしてタイブレークに入り、「1人目、2球で追い込んで、抑えようと思いすぎて甘い球がいっちゃって打たれた」と2点を失ったが、最後はしっかり空振り三振で斬って締めた。
「キャッチャーのおかげ。内外に投げ分けられたし、駒くんのサインを信じて投げたら抑えられた」と、女房役を立てることも忘れなかった。
上本監督も「最後のタイブレークは予定になかったんで、申し訳なかった。でも、その中で2点で抑えてくれたんで、よく頑張って粘り強く投げてくれたと思う」と、納得の表情で振り返っていた。
■課題の走塁練習に取り組む
試合後は、実戦で見つかった課題に取り組む時間だ。「課題は走塁」と、一塁ベース付近に選手を集め、上本監督自らが身振り手振りでレクチャーした。
「僕らの(子どもの)ときを思い返しても、走塁ってほぼ習ったことないから。でも、これから中学校、高校になっていく上で絶対に必要なんで、少しでも早いうちにできたほうがいいから。ちょっとずつ勉強してくれればと思う。できなくて当然だと思うけど、レベルが高い中でやるから、そういうところは課題であり、この期間にちょっとずつ吸収してくれればいいかなと思う」。
リードのとり方、アウトカウントを確認すること、状況によって何が一番ダメなのか…など、やることや考えることはさまざまあるという。しかし、その中でも「積極性は忘れないようにしてほしい」と求める。
「リードの大きさも正解は一応あるけど、一番大事なのは自分が何を考えてやるかということ。自分で考えることが一番、成長に繋がるから。そういう意味ではみんな、ちょっとずつ自分で考えるようになってきているから、いいなと思っている」。
真剣に聞く選手たちの表情から、手応えを感じているようだった。
この試合も前回と同じくノーサインだった。「今の課題はほんと声を繋ぐこと。急造チームだから、チームプレーとして、初歩的だけど絶対に一番大事なことなんで。そういう課題を今日もやったけど、前回よりは声を繋ぐことができてきているんで、オッケーです!」と、うなずいた上本監督。
少しずつ選手間の距離が縮まり、活気が出てきたことに満足げな表情を見せていた。
■対戦相手から見たジュニアは・・・?
この日は“敵”としてジュニアチームと対峙した石田選手と井澤選手は、客観的にジュニアたちを見てどのように感じたのだろうか。
石田選手が「オーラがすごくて、楽しそうやった」と言うと、井澤選手は「4番の選手(殿垣内大祐選手)がデカくてオーラがあって、自分がショートを守ってるときも打ちそうな雰囲気があって怖かった」との感想を述べた。
多賀も随所でいいプレーを見せた。「7-6-2」の中継プレーでジュニアのランナーをホームで刺すシーンが2度あったが、保護者によると「多賀の選手もタイガースジュニアと試合ができるということでテンションが上がっていた。いつにも増して集中力が高まって、ああいうプレーが出た」とのことだった。白熱した中で出た素晴らしい好プレーだった。
■多賀少年野球クラブ・辻正人監督
2019年以来のジュニアとの対戦だったという多賀少年野球クラブの辻正人監督はこう話す。
「(タイガースジュニアは)やはり運動能力が長けている。チームの(メンバーの)選び方も、大会の上位の中からではなく、フリーで個人で選ばれている。自チームが弱くても、タイガースジュニアに選ばれる可能性がある。チームとしては日の目を見なくても、個人の目標が持てる。みんなが目指している、みんなの憧れているところ。ジュニアにはそういう使命がある」。
多賀からジュニアのセレクションを受けた選手も4人が最終選考まで残り、合格したのが石田選手と井澤選手だった。
「ピッチャーも野手もできる万能な子たち。早くから野球を始めているので、プレーそのものもいいけど、野球知識が高い。高い野球脳を持っている。ウチはノーサインでやっている。自分たちで考えるようにと。タイガースジュニアでもそれを共有して、自分たちの野球をどんどん伝えてほしい」。
考え方を教え、自分で考えられるように育てているという。それを学んでいる2人が、タイガースジュニアでもいい影響を与えてくれることを望んで送り出した辻監督。
帰り際、「ぜひ優勝してほしいです!」と力強いエールを送ってくれた。
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