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氷河融解で新しい島が発見される ロシア

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
北極圏のイメージ画像(写真:アフロ)

氷河の融解による海面上昇で、「沈みゆく島」が注目される昨今ですが、反対に姿を現す島もあるようです。今月ロシア海軍が、氷に閉ざされていた5つの島を発見したと発表しました。

発見された島

新たに出現した島は、ロシア北部の北極海に浮かぶノバヤゼムリャ列島で見つかりました。ノバヤゼムリャ列島は、旧ソ連時代から核実験場として利用されてきた島で、北半分は氷河に覆われています。

5つの島の面積は、小さいものでは900平方メートル、大きなものでは54,500平方メートルということです。例えるならば、小さいものは小学校のプール2.5個分、大きいものは東京ドーム1個分強といったところでしょうか。ロシアは過去5年で、これらの他にも複数の島を発見しているようです。

発見者は女子学生

意外なことに、今回の最初の発見者は、ロシアの海事大学で学んでいた、一人の女子学生でした。2016年にマリーナ=ミグノヴァさんが、自身の研究のために衛星画像を解析していたところ発見したのだといいます。これまでこれらの島は厚い氷河に閉ざされていたため、見つかりませんでした。マリーナさんは功績を評価されて、現在はロシア海軍で海洋学者として勤務しているそうです。

こうして2016年に島の存在が衛星から見つけられていたものの、実際目視に至るまでには、数年の時を要しました。それまでに幾度となく調査団が派遣されたようですが、時にセイウチの襲撃に遭うなど、探索は困難を極めたそうです。しかしようやく今年8~9月の調査で、その存在が確認されたのです。

北方艦隊のモイセーエフ海軍中将は記者会見で「氷河の融解、崩壊、気温変化が島々の発見につながった」と語っています。

解ける氷河

北極圏の気温上昇のペースは、他の地域に比べて2倍も早く進行しており、それに伴って急速に氷河の融解が進んでいます。

例えば今年8月グリーンランドでは、一日の融解量としては観測史上最大となる125億トンの氷が解けたほか、9月には北極海の海氷面積が観測史上2番目に小さくなりました。

海だけでなく陸上の氷河もかつてないペースで融解が進んで、つい先日はスイスアルプスの氷河が5年間のうちに1割減少したという報告が発表されたばかりです。おまけに山頂の氷河が解けたことで、スウェーデン最高峰の峰の標高が低くなって2位に転落するといったニュースや、カナダの島で氷に閉ざされていた大地が40,000年ぶりに姿を現したという出来事もありました。

氷河の融解で、北極海航路や新たな資源の開拓につながることが期待され、ロシア、カナダ、アメリカといった国々が北極圏での開発を加速させているようです。

今まで不毛の地とされ見向きもされなかった極寒の地が、今や宝の山となりつつあります。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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