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ヨーロッパで、深刻な洪水のおそれ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
砂袋を積んで、洪水に備えるお店 (14日、ポーランド)(写真:ロイター/アフロ)

2002年8月、ヨーロッパ中部は壊滅的な洪水に見舞われました。

ドイツやオーストリアなどで計230人以上が亡くなり、水に浸かったプラハ動物園ではゾウが溺れ命を落としました。

その洪水に匹敵するかもしれない記録的な洪水が、来週にかけてヨーロッパ中部で予想されています。

降水の予想

下の動画は今後の降水の予想です。

イギリス気象庁は、「週末にかけて、中央ヨーロッパおよび南ヨーロッパでは極端な降雨が予測されており、200〜300mmの降水が予想されています(9月の平均の2倍)。一部の河川では100年に一度の規模の洪水が発生する可能性があります」と発表しました。

スイスの気象機関は、「現在の予報図は、2002年の壊滅的な洪水を思い起こさせます」と記しています。

記録的大雪も

すでにルーマニアなどでは死者が出るほどの洪水が発生しており、アルプス山脈では、この時期としては記録的な低温かつ、前例のない大雪が降っています。

原因は「ボリス」と地中海

大雨の原因は何でしょうか。

上空に寒気を伴う低気圧「ボリス(Boris)」です。現在バルカン半島付近に中心を持ち、渦を巻いています。問題はボリスが停滞することです。

このために、南からは地中海からの湿気が流入し雨が降り続き、北からは寒気が引きずりおろされて、雪が長時間にわたって降り続けます。

ボリスに加え、地中海の異常な高温も影響を及ぼしていると考えられます。一部の海域では、海水温が平年よりも約6度も高くなっています。その結果、大気中にはより多くの水蒸気が供給されています。

なお、世界の海水温の平均は、5年連続で過去1位の記録を更新し続け、それが大雨をもたらす一因となっています。

世界の大雨

台風11号により洪水が起きたベトナム・ハノイで、タライに乗って救助される幼子 (11日)
台風11号により洪水が起きたベトナム・ハノイで、タライに乗って救助される幼子 (11日)写真:ロイター/アフロ

今年は、いや、今年もというべきでしょう。世界中では驚くほどの大雨が降っています。大雨の影響は、いろいろな地域で深刻な被害をもたらしています。直近では、ベトナムに台風11号が上陸して、230人以上が命を落としました。

大雨のリスクが増える一方で、今日の天気予報は、特に直近の予報などは、非常に高い精度を誇っています。しかし、どれほど正確な予報があったとしても、それだけでは命を守ることはできません。

その予報を基に、人々がどのように行動するかが重要です。空振りを恐れずに避難することや、日ごろから防災意識を高めておくことが、今後ますます大切になってきます。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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