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ハリケーン・ミルトン、フロリダ州に上陸 竜巻も大発生

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
上陸直前のミルトンの衛星画像とレーダー(出典: 左からNOAA、NWS)

ハリケーン・ミルトンが、9日夜、フロリダ中西部のシエスタキー周辺に上陸しました。上陸直前の中心付近の気圧は954hPa、最大風速は57メートルで、「カテゴリー3」でした。

竜巻アウトブレイク

ミルトンの被害が大変心配ですが、上陸前から奇妙な現象を引き起こしています。それは竜巻の大発生です。

フロリダ州では、ミルトンの外側の発達した雲によって、上陸前に20個以上の竜巻が報告されました。

ハリケーンが竜巻を発生させること自体は珍しいことではありません。実際、メキシコ湾岸に上陸したハリケーンの8割以上で竜巻が観測されているようです。過去に最も多くの竜巻をもたらしたハリケーンは、2004年のアイヴァンで、この時はなんと約120個もの竜巻が発生しました。

しかし多くの場合、ハリケーンによって発生する竜巻は、ハリケーンが上陸した際や、急に弱まる際に発生することが多いというデータがあります。

つまり、ミルトンのように接近前から多数、しかも強い竜巻を発生させるハリケーンは非常に珍しいと言えます。

発生した竜巻

竜巻の映像が次々にSNSに投稿されています。

↑この黒い竜巻は高さよりも幅が広く、ウェッジトルネードと呼ばれます。

記録破りのミルトン

ミルトンは一時「カテゴリー5」のハリケーンに発達し、その後一時弱まったものの、翌日には再び元の強さに戻りました。

このようなハリケーンは非常に珍しく、メキシコ湾で発生したハリケーンでは過去に数例しかありません。

海水温の上昇で、こうした猛烈な強さの嵐が発生するリスクが高まっています。

カテゴリー6の創設

そこで問題が生じます。ハリケーンのカテゴリー分けです。

そもそもハリケーンのスケールは1から5の5段階で、風速によって分類されます。最強の「カテゴリー5」は秒速70メートル以上で、風速の上限は設定されていません。

これまでは、それで十分とされてきました。しかし、これからはそれだけでは不十分だという声が上がっています。

ローレンス・バークレー国立研究所のマイケル・ウェナー氏ら2人の研究者は、次のような論文を発表しています。

気候変動の影響がさらに強まると、風速85メートルを超える嵐を表すために、ハリケーンのカテゴリーに「6」を追加せざるを得なくなる可能性があります。

1970年代に導入された今のハリケーンのスケールでは、もはや対応しきれなくなっているようです。気候変動が進む現在、新しい基準を設けることが必要になっています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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