米下院、大麻合法化法案を採決へ
米議会下院が9月中にも、大麻合法化法案を採決する見通しとなった。大麻合法化法案の採決は米議会史上初という。仮に可決しても、上院が同様の法案を否決すると見られているため合法化の可能性は今のところ低いが、米国内の大麻合法化の流れを象徴する動きとなっている。
犯罪歴も抹消
通称「モア・アクト」法と呼ぶこの法案は、昨年11月に下院司法委員会を24対10の賛成多数で通過していた。8月末、下院の院内幹事を務める民主党のクライバーン議員が、9月中に採決する予定であることを、メールで関係者に伝えた。
同法案は、薬物を規制する「規制物質法」から大麻を除外し、それによって大麻を合法とみなすという内容。過去に大麻関連で逮捕され有罪となった人の犯罪歴を記録から抹消する内容も含んでいる。
ハリス副大統領候補も支持
下院は、大麻合法化を支持する議員が多い民主党が多数を占めるため、採決すれば可決の可能性が高いと見られている。ただ、上院は大麻合法化に消極的な議員が多い共和党が多数のため、否決する見通しとメディアは伝えている。
また、下院のモア・アクトに対応する上院の法案は、民主党の副大統領候補であるハリス上院議員が法案の提出者に名前を連ねており、可決は敵に塩を送ることになるため、共和党議員は可決阻止に動くだろうとも伝えられている。
11州ですでに合法
米国では、国レベルでは大麻は非合法だが、州レベルでは合法化の動きが急速に広がっている。大麻を嗜好品として合法化している州は、現在、全米50州中、カリフォルニアやオレゴン、マサチューセッツなど11州に上っている。医療用に合法化している州はさらに多い。
11月の大統領選挙と同時に各州が実施する州民投票では、ニュージャージーやアリゾナなど複数の州が大麻合法化の是非を有権者に直接問う予定で、結果次第では、合法州が一段と増えそうだ。
黒人差別の象徴
大麻合法化の背景の1つは、「白人も大麻を吸っているのに、逮捕されるのは圧倒的に黒人」という黒人社会の強い不満だ。民主党支持層に大麻容認論者が比較的多いのも、大麻を取り締まる法律が黒人差別の象徴と映っているからだ。
また、米社会には、大麻は若者文化の1つと見る考え方が昔からあり、大麻の使用には比較的寛容だ。2016年には、当時のオバマ大統領の18歳になる長女が、ロック・フェスティバルの会場で友人と大麻らしきものを吸っている動画が拡散されたが、話題にはなったものの、ほとんど問題視されなかった。