労働組合はどうやって問題を解決しているのか? 「ストライキ」は一手段
私の記事では、さまざまな労働問題について紹介しているが、最近では自販機、図書館、、私立学校、港湾などでストライキが相次ぐなど、労働組合が絡むケースが増えている。
職場のトラブルに対して「労働組合(ユニオン)」での労使交渉によって問題を解決することは、ますます一般的になりつつある。
しかし、労働組合はストライキなど会社に対する闘争的な面ばかりが報道されるので、相談しにくいという人も多いのではないかと思う。
そこで今回は、労働組合の活動内容と、相談した場合に解決までどのような手順で進んでいくのかを紹介したい。
実は、労働組合ならではの「利点」が法律上たくさんある。このことは是非多くの読者に知っておいてもらいたいところだ。
労働組合とは何か
まず、法律上の「労働組合」がどのように定義されているのかを確認しておこう。
「労働組合」の定義は、労働組合法の第2条に書かれている。
これによれば、「労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」だ。
このように、組織の形や人数は法律で決められておらず、労働者であれば、一人でも加入でき、職場単位で結成する必要もない。
この定義のもう一つのポイントは、「労働者が自主的に」と書かれている部分。ここが、労働問題の解決方法にも関わってくる。
労働者が労働組合に加入してその一員になると、行政機関や弁護士と違って、組合に解決を「委任」するのではなく、一緒に問題を解決することになる。
こう書くと、弁護士に依頼するよりも大変なに思われるかもしれないが、決して一人で会社と交渉するわけではない。
専門家のスタッフや、すでに労使交渉による問題解決を経験した労働者が協力してくれる。
権利行使には勇気がいる。誰しも最初はたじろぐものだ。その不安をよく知っている仲間だからこそ、あなたの悩みを親身になって最後まで支えてくれる。
その代わり、もし余裕ができたなら、組合に加入した労働者は、今度は他の人を助ける。その人が組合に残れば、また自分の問題に協力してもらう。
こうして、労働組合に加入した人たちのつながりと経験値が組合の交渉力を高めていくのである。
また、労働組合による交渉には、「どのように交渉するのか」という点について、労働者自身が主体的に関与できる。
「パワハラをした上司に直接問題を質したい」といったことや、「社内改革について提案したい」といったことも可能になるのが労組の良いところだ。
裁判や行政の処罰の場合、会社の問題を質したり、社内改革を促すことはかなり難しいのが実情だ。
尚、労働組合というと、よく社内労組を想起されがちだが、社内労組は「労働組合の一つ」。会社と癒着してしまっていて、労働問題の解決に役立たないことも多い。
これに対し、最近「ユニオン」と呼ばれているものは、社内労組ではなく、企業の外で活動する労働組合を指していることが多い。
相談から組合加盟までの流れ
労働組合に相談すると、経験豊かで労働法の専門知識を有した組合員がまず話を聞いてくれるだろう。
労働者の相談を親身になって聴き、そこから組合として何ができるのか、これから何をなすべきかについてわかりやすく説明してくれるはずだ。
労働組合の法的な権利についても説明がある。相談は無料で、秘密は守ってくれる。加盟を強要されることもない。
面談の説明に納得できるなら労働組合に加入することになる。持ち帰って検討するというケースも多々ある。
加入の際には加入費が必要で、毎月組合費の支払いが求められるが、その額は組合によって異なり、数千円程度で、生活困窮者の場合には免除制度あることが多い。
例えば、「総合サポートユニオン」の場合、入会金が1000円で、月の会費は年収で異なる(1000~3000円)が、実際の組合員のほとんどは1000円である。
労働組合の基本は話し合い(団体交渉)
冒頭で述べたように、最近はストライキや抗議活動など、「闘争」する姿がよく報道されているが、それは労働組合の一面に過ぎない。
労働組合の活動の基本は、団体交渉、つまり使用者との「話し合い」だ。団体交渉は使用者と労働者が労働条件について話し合う交渉のことだ。
ただし、「話し合い」といっても、使用者には法律によって、労働組合との団体交渉に誠実に応じる義務が課せられている。
正当な理由なく交渉を拒否することはできないし、その内容も誠実でなければ違法となる。
もし一人で会社と交渉しようとしても、無視されるか、適当にかわされてしまうことがほとんどだ。
しかし、労働組合の場合には、法律の強制力があるので強い交渉力がある。
使用者に改善を迫る団体行動
さらに、労働組合が持つ法的な権利は、会社側に交渉を強制するだけにとどまらない。話し合いが決裂した時には、労働組合は「争議権」を行使することができる。
争議行為は、労働条件の改善を使用者に認めさせるための圧力行為だ。その最たる例がストライキ。それ以外にも、会社の違法行為を社会に広く訴えるなど、様々な手段がある。
ストライキのやり方も様々だ。全面的に仕事をしない、というものばかりでなく、残業を拒否したり、一部の業務を拒否したり、時間や人を限って仕事を止めることもできる。
例えば、保育園の書類業務だけを拒否したり、私立学校の朝礼だけを拒否することで、利用者に大きな影響を与えずに会社に圧力をかけるといったことも可能だ。
ストライキや争議行為への参加を理由に解雇などの報復措置をとることも法的に許されない。
これらの行動は、必ず参加する組合員本人の意思にそって進められる。組合が勝手に争議を決めることはない。
不安があれば経験豊かな組合員に相談すればよい。納得できる方向性を提示してくれるはずだから、安心して行動に臨めるはずだ。
ストライキを行うと、求人業者もハローワークの求人も止められるので、離職率が高いブラック企業に対しては強い圧力になる。
これまでに、私立学校の教員たちの「朝礼」ストや、自動販売機大手企業でのストライキを通じて労働条件の改善が実現した事例がある。
参考:「傘連判状」・ストライキで、非正規教員の「無期転換」を合意へ
参考:GW10連休中に各所でストライキか!? 自販機や港で相次ぐ背景とは
法律以上の水準でも実現できる労働組合
こうして交渉と行動を繰り返しながら、最後は話し合いで労使がお互いに納得できる線で合意がなされ、紛争の解決となる。
紛争解決後も労使関係が保たれるなら、労働条件は必ず良くなるだろう。
この労使間の話し合いの内容は自由なので、労働組合は法律以上の水準でも合意もできることになる。
これが行政機関や裁判では決してできない利点だ。
例えば、賃上げ。最低賃金を上回ってさえいれば、賃上げをしなければならない法的義務は使用者にはない。
しかし、労働組合であれば、「生活できる賃金にしてほしい」とか「他社と同じ水準にしてほしい」、「技術に見合った賃金にしてほしい」といったことを交渉することができる。
あるいは、育休や産休を法律以上の水準で可能にした例もある(エステ・ユニオンの「ママパパ安心協約」)。
参考:エステティック大手TBCが、「ホワイト求人労働協約」を締結
さらに、労働組合は企業との間で「労働協約」を締結することができる。これは、交渉結果についての「約束」だが、この「約束」も法律によって保護される。
上に書いた「ママパパ安心協約」も、育休や産休について労働組合と会社の間で結んだ約束であり、法律によっても保護されているということになる。
「迅速さ」というメリット
本記事でみてきたように、労働組合には労働問題を迅速に解決するさまざまな法律上の権利が与えられている。
もし裁判で争えば、何年もかかってしまうような事件でも、労組の交渉ですぐに解決するということは多い。
ただし、どうしても交渉で解決ができないブラック企業の場合には、交渉が決裂し、裁判に移行することになる。
このように、労働組合は裁判の前段階として、「最初の交渉」の入り口として考えることもできるのだ。
このように、さまざまな法律上のメリットを持つ労働組合を、問題解決の「選択肢」の一つとしてぜひ考えてみてほしいと思う。
(尚、下記に、これまでに多くの労問題を解決した実績のある労働組合を挙げておいた)。
無料労働相談窓口
03-6699-9359
soudan@npoposse.jp
*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。
03-6804-7650
info@sougou-u.jp
*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。
03-6804-7650
soudan@bku.jp
*ブラック企業の相談に対応しているユニオンです。自動販売機運営会社のストライキなどを扱っています。
0120-333-774
info@esthe-union.com
*エステ業界の労働者の問題に対応し、企業と労使交渉をおこなっています。これまでに多数の大手企業と交渉し、労働協約を締結しています。
022-796-3894(平日17時~21時 土日祝13時~17時 水曜日定休)
sendai@sougou-u.jp
*仙台圏の労働問題に取り組んでいる個人加盟労働組合です。